暗部の一夏君   作:猫林13世

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わざとじゃないですしね……


今回の罰

 放課後になり、セシリアとシャルロット、ラウラの三名は織斑姉妹に呼ばれ職員室にやって来ていた。ちなみに、もう一人のメンバーである鈴は直接事故とは関係ないので呼ばれてはいない。

 

「さて、一夏たちが修理を手配してくれたお陰で、それほど大袈裟な事にはならなかったが、当然お咎め無しといわけにはいかない」

 

「罰として反省文三十枚とグラウンド二十周だ」

 

「反省文の期限は一週間後、その後でグラウンド二十周してもらう予定だ」

 

 

 織斑姉妹に罰を言い渡され、三人は職員室を出る時にしっかりと頭を下げてから廊下に出る。

 

「思いのほか軽い罰でしたわね」

 

「一週間で反省文三十枚はキツイと思うけど」

 

「教官たちの罰にしては軽すぎると私は思うが……」

 

「ら、ラウラさん? いきなり震えだしてどうなさいましたの?」

 

「ご、ゴメンなさい……」

 

「そういえば、ラウラもトラウマ持ちだったっけ」

 

 

 何を想像したのかは二人には分からなかったが、とりあえずラウラが織斑姉妹に怯えたのだという事は理解出来たので、そのままラウラを部屋まで連れて行くことにした。

 

「あら、一夏さんではありませんの」

 

「セシリアたちか。その様子だと織斑姉妹に罰を言い渡された帰りってところか」

 

「はい、お兄ちゃん」

 

「あっ、復帰した」

 

 

 一夏の声を聞いてすぐに現実復帰したラウラに、シャルロットは苦笑いを浮かべる。

 

「さほど問題にすることではないと言っておいたが、どんな罰を言い渡されたんだ」

 

「一週間で反省文三十枚と、その後でグラウンド二十周だって」

 

「少し厳しすぎるとも思えなくはないが、妥当だな。本来なら修繕費などを支払わせようかとも思ったが、学生に負担させるには少し重すぎるからな」

 

「一夏のお陰で、借金地獄に落ちなくて済んだよ……」

 

 

 一夏の雰囲気があまりにも本気に思えたので、シャルロットは身震いをしながら一夏に頭を下げた。

 

「なんてな。そこまで高額ではないから気にするな。修繕は更識が責任を持って担当するから、これに懲りたらあまり派手な戦闘は控えるように」

 

「申し訳ありませんでしたわ。一夏さんにまでご迷惑をお掛けする事になるとは」

 

「操縦者に怪我が無くて良かったというべきか……とりあえず週末には二人の機体のメンテナンスをするから、それまでは訓練機を使って授業に出ること。後は……そうだな。ISに対する恐怖心が無いかVTSで確認しておくこと」

 

「一夏、なんだか先生みたいだよ?」

 

「そうか? まぁ、とりあえずはそれくらいか。後はゆっくり休むんだな」

 

 

 そう言い残して一夏は職員室へと入っていった。

 

「一夏さんも大変そうですわね」

 

「仕方ないよ。更識のトップで実質的生徒会長だし」

 

「それに加えて今はアメリカの動きを警戒しているようだからな。何かあればドイツ軍もお兄ちゃんに手を貸すつもりだ」

 

「そこまで大げさに動いたら、別の国際問題が発生するのではないでしょうか?」

 

 

 セシリアの疑問に対して、ラウラは心配無用とでも言いたげな表情を浮かべた、何処からそのような自信が湧き出て来るのか疑問ではあったが、セシリアはとりあえず一夏に言われた通りにVTSでISに対する恐怖心が無いかどうかのチェックを行う事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セシリアたちと入れ替わりで職員室にやってきた一夏を、千冬と千夏は歓迎した。

 

「よく来たな、一夏」

 

「とりあえず、何かお菓子でも出そうではないか」

 

「遊びに来たわけではありませんので」

 

 

 浮かれている二人を無視して、一夏は報告書を提出する。

 

「今回チェックした結果、他にも修繕した方が良い箇所がちらほらと見受けられました。大掛かりな修繕ではないので、今回破損した箇所の修繕のついでにそちらも行っても宜しいでしょうか?」

 

「そうしてもらえると助かる。こちらとしても、アリーナの安全は第一に確保しておきたいからな」

 

「大掛かりな大会でもあるんですか?」

 

「三年の卒業前最後のトーナメントが行われることになった」

 

「……こんな世界情勢の中、そんなことをしてていいんでしょうか?」

 

「まだ就職先が見つかってないやつらへの最期のアピールの場だそうだ。文句は学長に言え」

 

「傘下の企業で良いなら紹介出来ますが、それじゃ不満なのでしょうね」

 

 

 大企業に的を絞らなければ、IS学園卒の肩書ならどこでも就職は出来るはずなのだが、未だに就職先が見つかっていないという事はそう言う事なのだろうと、一夏はため息を吐きながら千冬から手渡されたトーナメントの概要に目を通す。

 

「虚さんが参加する事が決定しているようですが、本人は承諾しているんですよね? 少なくとも、俺は聞いていませんが」

 

「これから交渉するそうだ。まぁ、断らないだろうがな」

 

「虚さんだって暇じゃないですし、更識の人間ですから、万が一の時はこちらが優先となりますのでお忘れなく」

 

「相変わらず堅苦しい話し方だな。もうちょっとフレンドリーに出来ないのか? 昔みたいに『お姉ちゃん大好き』と言ってくれても構わないんだぞ?」

 

「記憶が無いので何とも言えませんが、少なくともそのような事を言うつもりはありませんので。では、修繕の件はこちらに一任していただくという事で」

 

 

 早々に職員室を辞した一夏に、千冬と千夏は寂しそうに息を吐く。

 

「もうちょっと一夏が落ち着ける時間が必要かもしれないな」

 

「そうでなければ、何時まで経ってもわたしたちは顔見知りでしかないからな」

 

 

 あくまで自分たちの為に一夏が落ち着ける時間が必要だと考えている織斑姉妹は、一夏がおいていった報告書を机の上に投げ置いたのだった。




織斑姉妹より教師らしい一夏……

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