暗部の一夏君   作:猫林13世

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天才が努力したら誰も敵わない……


束の努力

 軍事システムに忍び込もうとあちこちサーバーをクラックしてみたが、どうも上手く行かないと束は一息入れる為に一夏が用意してくれた料理に手を伸ばす。

 

「さすがいっくん。くーちゃんには無い愛情を感じるよ~」

 

 

 クロエが用意してくれる料理も、束は問題なく食すが、やはり一夏の料理は格別美味しいと彼女は感じるのだ。

 

「こんな料理を用意してくれたいっくんの為にも、何とかしてアメリカの軍事システムをクラックダウンさせなきゃいけないね……乗っ取りは難しそうだし、クラックダウンさせるだけでも大分楽になるだろうし」

 

 

 過去の杜撰な管理の状態だったから、束はアメリカだけではなく世界中の軍事システムを乗っ取り、日本に向けてミサイルを放つことが出来たのだ。そのせいで各国のシステム管理はより強固のものへと進化を遂げ、大天災と言われる束ですらこのようにハッキングするのに苦労しているのだ。

 

「自分で蒔いた種とはいえ、これほど面倒になるなんて思ってなかったよ」

 

 

 泣き言を言ったところでシステムに侵入できるわけではないので、束は別のアプローチをかけてみる事にした。

 

「いっそのこと真正面から挑んでみるかな~。案外簡単に侵入できたりして」

 

 

 システムの穴を狙ったハッキングには警戒してても、堂々と真正面から挑めば行けるのではないかと考え、束は堂々とアメリカの軍事システムに攻撃を仕掛けてみた。

 

「どれどれ……まぁ、当然だね」

 

 

 結果は失敗。束もこれが上手く行くとは当然思っていないので結果を見てすぐに次の手を考えようとして、違和感に気付く。

 

「なにこれ? カウンターシステムが作動してない?」

 

 

 正面から仕掛けたのに、向こう側からの攻撃がない事に違和感を覚え、束はもう少し調べてみる事にした。

 

「さっきまであれほど束さんの情報を盗もうと作動してたシステムが一切作動しないなんて……何かがおかしいのは確かだよね」

 

 

 その疑問を解決するために、束は正面と側面の両方からハッキングを仕掛けてみる事にした。すると、正面からの攻撃に対しても、側面の攻撃に対してもカウンターシステムが作動しないことが分かった。

 

「これなら、忍び込むのも簡単かな……でも、ここで油断させておいて、なんてお決まりの事は避けなきゃね」

 

 

 最大限の警戒心を持って、束はシステムに侵入していく。そして、ようやく要となる場所に忍び込むことに成功した束は、急ぎそのシステムを乗っ取ることにした。

 

「まだこちらの動きには気づいていないようだし、今の内にアメリカのシステムを束さんの手中に……」

 

 

 これが上手く行けば、とりあえずアメリカはミサイルといった遠距離兵器を使えなくなる。それだけでも大分一夏は楽になるだろうし、日本の安全にもつながるのだ。

 

「他の連中なんて興味ないけど、いっくんが守ろうとしてるものは束さんも全力で守るよ」

 

 

 ハッキングが完了したのを確認して、束は急ぎそのシステムから逃げ出す。追跡されないように外国のサイトを経由した所為で時間がかかったが、これで第一関門は突破したことになる。

 

「この束さんがここまで苦戦を強いられるだなんて……やっぱり束さん特性の攻撃ウィルスを仕込ませて……いや、それで誤作動でミサイルが飛んで来たらいっくんやちーちゃん、なっちゃんに殺されちゃうだろうし……」

 

 

 何処に飛ぼうが怒られる未来しか見えないので、束は今回このように面倒な手順を踏んでいるのだった。そうでもなければ既に終わらせているだろうし、クロエを一夏に預けるなどという事もしなかっただろう。

 

「次は、アメリカの命令系統を麻痺させるためのハッキングをしなきゃね。いっくんたちのように命令系統を一つにまとめていないと、こういったところで問題が起こるんだよ」

 

 

 こちらは乗っ取りではなく暫く機能しなくすればいいので、束は特性のウィルスを忍び込ませ、遅延発動のプログラムを打ち込みすぐさま逃げ出す。これだけでアメリカの判断は相当鈍くなるため、攻撃を仕掛けようとしてもなかなか許可が下りなくなる。もちろん、アメリカが攻め込んでくるという情報があれば、一夏たちが撃退に向かう事は問題が無くなり、国際問題にも発展しなくなる。

 

「本当は、アメリカがしようとしてる事を表に暴露すればそれで終わるんだろうけど、逆恨みで攻め込まれても面倒だしね」

 

 

 アメリカが既に亡国機業や箒に罪を擦り付けようとしている時点で、暴露すればどうなるか想像するのは難しくないと束も分かっている。だからこうして回りくどい事をしてでも一夏を助けようとしているのだ。

 

「とりあえず、残りもぱっぱと終わらせて娘を迎えに行かなきゃね~。いっくんが作ってくれた料理、くーちゃんにも食べさせてあげたいし」

 

 

 口調こそいつも通りだが、今の束はかなり急いでいるのだ。一夏分もさることながら、束には必須成分が増えてしまっているのだ。

 

「あぁ、愛しの娘が側にいないなんて、これは耐えられないかもしれない……こんな時は、監視衛星をハッキングしてくーちゃんの姿を覗き見するしかないよね」

 

 

 一夏分に続きクロエ分という必須成分を欲するようになった身体に、束は苦笑いを浮かべながら衛星をハッキングし、一夏とクロエの両方を覗き見するのだった。




案外真正面の警戒が一番薄い事があるんですよね……ゲーム内ですが

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