暗部の一夏君   作:猫林13世

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指導者が良いのか、周りのレベルが高くて勝手に強くなってるのかは不明


成長した候補生たち

 試験勉強を早めにしておいた方が良いと一夏に言われたからと言って、本音が真面目に勉強するはずもなく、相変わらず仕事が無い時はだらだらと過ごしている。

 

「本音、一夏に言われたんだから、もうちょっと勉強したら?」

 

「いっちーが教えてくれるだろうから、もう少しだらだらしてても問題ないと思うよ~」

 

「何時までも一夏に甘えられると思ってたら、何時か痛い目を見るかもしれないんだし、もうちょっと自分で何とかする事を覚えた方が良いよ」

 

「いっちーが私たちを見捨てるとは思えないけどな~」

 

「アメリカが不穏な動きを見せてるんだから、私たちに時間を割いてる暇がないって事だよ」

 

「それはあり得そうで嫌だな~……さっさと終わらせてくれるか、ずっと大人しくしててくれないかな」

 

「こちらの思い通りに動いてくれるなら、一夏だって苦労しないって」

 

 

 あまりにも自分本位の考えに、簪は盛大にため息を吐く。簪も一夏の手伝いが出来ないのが歯がゆく思っているので、少しでも本音の考え方を矯正しようと思ったのに、自分では不可能だと思い知らされたのも、ため息を吐いた理由の一つだ。

 

「それじゃあ、私が少し見てあげるから、もうちょっと勉強しなさい」

 

「かんちゃん、おね~ちゃんみたいだよね~」

 

「虚さんほど真面目じゃないと思うけど、本音が真面目に勉強してくれたら、一夏だって負担が減るんだし、私だって一夏の手伝いが出来るんだから、ほらほら」

 

「押さないでよ~」

 

 

 ベッドの上でだらだらしていた本音の背中を押して、机に向かわせる。

 

「本音は一学期から振り返って勉強しなきゃいけないんだから、早すぎるって事は無いと思うしさ」

 

「かんちゃん、卒業したら先生になったら?」

 

「まだ二年残ってるんだから、今から卒業後の進路なんて考えてないよ」

 

 

 面倒見の良さは、虚と同じくらいだと思っているので、本音は簪も教師にむいているのではないかと思っている。だが、簪が言ったように、卒業まであと二年あるのだから、今から卒業後の進路を考えてはいないのだ。もちろん、一夏のように卒業後は更識のトップとして君臨し続けなければならないという事情でもない限り、卒業後どうするかなど考えている生徒の方が少ないのだ。

 

「ほら、さっそくミスしてる」

 

「ほえ~……かんちゃん、目が本気になってきたね……」

 

「一夏の為だって思えば、少しくらい厳しくしたって温いと思うけどね」

 

 

 本音の他にも、マドカとマナカやエイミィ、香澄や美紀といった勉強が苦手なメンバーもいるから、せめてこれくらいはと簪は一日本音の相手をすると決意したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ISに慣れる為に、箒はセシリアたちの訓練に参加する事にした。前までは見学だけだったが、訓練機が反応してくれたお陰で、箒も訓練の輪に参加できるようになったのだ。

 

「箒さん! 右後方からシャルロットさんが狙ってますわ!」

 

「分かっています! くっ!」

 

「悪いが、逃がしてやるわけにはいかないんだ!」

 

 

 シャルの攻撃から逃れようとした箒の前に、ラウラが現れる。ラウラも接近戦は得意としていないのだが、訓練機相手ならと言う事で囮を買って出たのだろう。

 

「何をしてる! さっさと振り解いて逃げろ!」

 

「そう言われましても……」

 

「だったら私が……っ!」

 

「マナカの動きは把握済み。貴女の相手は私」

 

「それが兄さまが香澄の為に造った久延毘古……動きを読まれるってのは面倒だ」

 

 

 箒のカバーに入ろうとしたマドカだったが、香澄に邪魔をされ苦戦を強いられている。

 

「お兄ちゃんが調整してくれた今の私に、訓練機の箒が敵うはずもないだろう」

 

「最初から勝てるとは思ってませんが、簡単に負けたくないんです!」

 

 

 シャルの射撃を強引に振るった剣で弾き飛ばし、ラウラから距離を取り篠ノ之流剣術の間合いを取る。

 

「それは、前にお兄ちゃんが見せてくれた構え?」

 

「一夏様は篠ノ之流を修めてはいませんが、一度見れば大抵は使えますからね」

 

 

 恐らくは織斑姉妹の構えを真似たのだろうが、あの時の箒にはそれに対抗出来るだけの冷静さが掛けていた。だが今は自分が使うということで、いつも以上に冷静な態度でラウラと対峙している。

 

「ISで剣術を再現できると思っているのか!」

 

「真似をするだけでも十分です。貴女をこの場に留まらせるのが私の役目ですからね」

 

「何だと!?」

 

 

 箒相手だから楽だと思って周りに注意を配っていなかったラウラが慌てて周りを確認すると、香澄もシャルも苦戦している様子だった。

 

「遊撃タイプの貴女を私が惹き付けておけば、後は他の方が何とかしてくれる。例え私がやられても、他の方が戦い終わっていれば貴女の方が不利ですから」

 

「そう言う事か……お兄ちゃんに調整してもらったから、慢心していたという事か……冷静さを欠いていた事は認めよう。だが、ここから先は完全に本気を出させてもらう!」

 

 

 完全に目が覚めてしまった雰囲気のラウラに、箒は身震いをする。仮にも軍人のラウラの殺気だ、並の学生ならそれだけで戦意喪失したかもしれない。だが箒は何とか堪え、ラウラの攻撃に備えるのだった。




とりあえず、みんな成長しています

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