暗部の一夏君   作:猫林13世

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注目されるのは仕方ない……


見学者多数

 箒が帰ってから少ししてから、一夏も整備室を後にし部屋に戻る事にした。その間、ずっと闇鴉は人の姿をしていたが、部屋に到着したのと同時に、待機状態へと戻った。

 

「お疲れ様です、一夏さん」

 

「美紀か……先に寝てて構わないと言っておいたはずだが」

 

「寝ろとは言われてませんので。それで、篠ノ之さんの様子はどうだったんですか?」

 

「大人しいものだった。ISに対しても申し訳ない気持ちと、動かしてみたいという気持ちしか感じられなかったからな。あれならすぐに使えるレベルまでになるだろう」

 

「政府にはそのように報告するのですか?」

 

「そもそも、政府にとやかく言われる筋合いは無いんだがな。篠ノ之を撃退したのも、更生させようとしてるのも更識なわけだから、処分を決定するのも更識であるべきだと思うんだが」

 

 

 一夏が言うように、全てを更識に押し付けておきながら、復帰の手続きなどは政府にしなければならないのは、一夏としては面倒でならないのだ。向こうがこちらに来て手続きをしろと言うならまだしも、わざわざ出向かなければならないのが、更に面倒だと感じさせているのだった。

 

「突っぱねる事は出来ないのですか?」

 

「出来ない事もないが、余計に面倒な事になりかねないからな。一日で済むならそれでいいさ」

 

「ですが、せっかくの休みだというのに……ただでさえ一夏さんは休むべきですのに、政府の勝手で一夏さんの休みを奪うなんて」

 

「構わないさ。とりあえず、今日はもう休むとしようか」

 

 

 自分の為に憤慨してくれる美紀に感謝を示して、一夏は寝ることにした。

 

「そう言えば一夏さん」

 

「何だ?」

 

「刀奈お姉ちゃんとの賭けは、私たちの勝ちですからね」

 

「あぁ……そう言えばそんなことを言ってたな……今度な」

 

「約束ですからね」

 

 

 一夏が髪を洗った翌日、全員が普段より髪の調子がいいと実感したので、賭けは一夏が負けとなったのだ。一夏としては、勝ち負けの判断が曖昧すぎるのではないかとも思ったのだが、これだけ期待してもらったなら仕方ないと大人しく罰ゲームを受ける事にしたのだ。

 

「そう言えば、何を作ればいいんだ?」

 

「一夏さんの料理なら、みんな嬉しいと思いますよ」

 

「そんなものか?」

 

「そんなものですよ」

 

 

 一夏は自分の料理がそこまで価値のあるものだとは思っていないので、何でここまで喜ばれるのかがイマイチ理解出来ていない。だが、喜んでもらえるのは素直に嬉しいので、一夏も彼女たちに料理を作るのは嫌いではなかった。

 

「明日は篠ノ之さんがISを動かす日ですね」

 

「問題なく動けばいいがな……」

 

 

 その場にいる事が出来ない一夏は、万が一問題があった時は簪に任せると伝えてあるが、それでも不安はぬぐえていない様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏と碧が日本政府に箒の国籍復帰と正式にIS学園に復帰するための手続きをしに行った日、IS学園第一アリーナにはかなりの人が押し寄せていた。

 

「見世物じゃないんだけどな……」

 

「仕方ありませんよ。お嬢様と簪お嬢様、美紀さんは国家代表なんですから。その訓練が見られるとなれば、これだけの人であふれ返ってもしょうがないです」

 

「虚さんだって、更識企業の企業代表なわけだし、注目されるのも仕方ない」

 

「ですが、一夏さんがいないってだけで、何人かは帰っていきましたけどね」

 

「目当ては一夏君だったのね、危ない危ない」

 

 

 いくら最近は大丈夫になって来てるとはいえ、一夏は基本的に人混みを嫌う。人間恐怖症で女性恐怖症であるのだから仕方ないのかもしれないが、それでも一夏がこの場にいなくて良かったと、刀奈たちはそろって安堵の息を吐いたのだった。

 

「それに、箒ちゃんがISを動かすって事も知られちゃってるみたいだしね」

 

「黛先輩、何処で聞いてたんだろうね……」

 

「後で問い詰めますので問題ありません」

 

 

 一夏なら気づいていただろうが、薫子が今日の事を学園中に言い触らした結果が、この溢れかえりなのだと全員がすぐに理解した。ちなみに、箒の周りには本音だけでは不安だという事で、急遽マドカとマナカも控える事になったのだ。

 

「とりあえず、訓練を始めましょうか。時間は有限なんだし」

 

「お嬢様からそのような言葉が出るとは思ってませんでしたが、確かにゆっくりとしてる場合ではなさそうですね」

 

「あらら、織斑姉妹が鎮座してるわね」

 

「何かあってもあの二人が対処してくれるんでしょうね」

 

 

 箒が暴走する可能性は、殆どゼロとはいえ、完全に安心する事は出来ない。なので万が一の時は自分たちが止めに入るつもりだったのだが、織斑姉妹がいればその役割は彼女たちに任せた方が良いのだ。

 

「それじゃあ、私たちは後輩たちにお勉強してもらいましょうか」

 

「私たちは一年なんだけど?」

 

「ISの歴では簪ちゃんたちの方が長いし、実績も十分なんだから、細かい事は気にしないの」

 

「細かくは無いと思いますが……それでは、お嬢様と私のペアでよろしいですね?」

 

「そうですね。私と簪ちゃんがペアの代表ですから、そこを弄るのは良くないでしょうしね」

 

 

 ペアが決まり、それぞれがピットへと移動するなか、アリーナは異様な空気に包まれていたのだった。




箒だけでも注目されそうですけどね

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