暗部の一夏君   作:猫林13世

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ちょっとミスした……まぁ、気になる程度ではないですが


評価の原因

 じゃんけんの結果一夏の隣で寝るのは本音と刀奈に決まり、一夏はなんとなく疲れそうな予感がしていた。普段はすぐに寝てしまう本音も、一日中寝ていた所為で目は冴えており、こういう時に無駄にテンションが上がる刀奈は、当然の如くすぐに寝ようとはしなかった。

 

「一夏君、まだ起きてるわよね?」

 

「まぁ、普段もこんな時間には寝ませんから。それで、何か用ですか?」

 

「さっきの約束、忘れてないわよね?」

 

「約束? あぁ、あの賭け事の事ですか? ですが、よく他の人が承諾しましたね」

 

「一夏君の美味しいごはんが食べられるとなれば、全員が参加するに決まってるじゃない」

 

「そんなものですかね?」

 

 

 一夏自身としては、そこまで美味しいと思ってくれるのなら、賭け事とか関係なく作ることも吝かではないのだが、何分時間が無い為、こういう時くらいしか作ってあげられる機会は無いのだ。

 

「いっちーのご飯が食べられるなら、多少ごわついてても問題ないって言っちゃいそうだよね~」

 

「まっ、そんなことあり得ないでしょうけどね」

 

「うんうん、いっちーに洗ってもらったんだから、髪の毛が痛んでるなんてありえないですよね~」

 

 

 本音と刀奈が揃って笑うと、その向こうから虚がうるさいと言わんばかりの視線を向けてきた。

 

「ご、ゴメンね虚ちゃん……ちょっとうるさかったよね?」

 

「ちょっとどころではなく、だいぶうるさいです。一夏さんだって疲れているんですから、大人しくしてくださいね?」

 

「「はい……」」

 

 

 虚に怒られては素直に頷くしかないと、刀奈も本音も素直に虚の忠告を受け入れ、大人しく寝ようとする。だがもちろんその程度で眠気などやってくるはずもなく、怒られない程度の小声で会話を再開した。

 

「怒られちゃった……」

 

「他の人は寝ようとしてるんですから、あんな大声で笑ったら怒られるのも当然だと思いますが」

 

「一夏君までそんなこと言う……反省してるんだから」

 

「ところで、本音が随分と大人しくなったんですが」

 

「まさか?」

 

 

 確かに会話に加わってこないなとは思っていたが、刀奈はあれだけ昼寝をしておいて簡単に寝られるはずもないだろうと思っていたので、一夏が冗談を言っているのだろうと決めつけていた。だが実際に本音の様子を窺うと、規則正しい寝息が聞こえてきたのだった。

 

「あれだけ寝てたのに、何でこんな時間に寝られるのよ……」

 

「まぁ、本音だからという事にしておきましょう」

 

「そうね……本音だから仕方ないわよね……」

 

 

 特技・寝ること、と普通に答えるくらい、本音は寝るという事に苦労することは無いのだ。

 

「刀奈さんも寝たらどうです? 何もしていないようで色々としているんですから、刀奈さんだって疲れてるでしょうし」

 

「何もしていないようでってのは酷くないかしら? これでも色々と頑張ってるんだから」

 

「知ってますよ。ですが、周りから見たら刀奈さんは仕事をしない生徒会長だと思われても仕方ないんですから」

 

「優秀な虚ちゃんと、もっと優秀な一夏君がほとんど仕事を片付けてくれるからね」

 

「刀奈さんだって優秀なんですから、もう少し目に見える範囲で頑張ってくださいよ」

 

「これでも頑張ってるんだけどね。周りの平均が虚ちゃんとかいう事になっちゃってるから、私は駄目判定になってるだけだもん。周りにどんな風に思われようが、一夏君がちゃんと評価してくれればそれで満足だから」

 

「簪に馬鹿にされた目で見られるのは嫌だ、とか言ってませんでしたっけ?」

 

「そこが悩みどころなのよね……」

 

 

 簪も、刀奈が駄目なのではなく、虚と一夏が凄すぎるのだという事は理解しているのだが、この三人を纏めて見ると、どうしても刀奈が駄目なのではないかという錯覚に陥るのだ。

 

「てか、職員室や政府がもう少し自分たちの仕事をしてくれたら、私たちだってこれほどまでに忙しい思いをしなくてもいいんだから、ダメな人を見る目は私にじゃなく、織斑姉妹や政府の人間に向けてほしいわね」

 

「織斑姉妹にそんな目を向けたら、この世から消されてしまうかもしれませんからね、普通の人は」

 

「なら、私にそんな目を向けた人だって、お仕置き対象になると思うんだけど?」

 

「まぁ、サボり癖が治ってもなおそう言う目を向けて来る輩がいたら、お仕置きしますよ」

 

 

 だからサボるなと言外にいわれ、刀奈は肩を竦めてみせた。

 

「一夏君に守ってもらえるなら頑張ってみようかな」

 

「俺がどうこうの前に、刀奈さんの立場から考えれば頑張るのが普通ですよね? 生徒会長であると同時に、国家代表ですべてのIS乗りの手本となるべき人なんですから」

 

「だって、私の前の代表――碧さんは兎も角として織斑姉妹は手本となるような生活態度じゃないわよ?」

 

「あれは反面教師として役に立ってもらうので別に良いんです。いや、良くないけど……」

 

「どっちなのよ……まぁ、もう少し尊敬されるように頑張ってみるわね」

 

「そうしてください。ちなみに、俺は刀奈さんの事を尊敬してますから」

 

 

 サラリと嬉しい事を言った一夏に、刀奈はどう反応すればいいのかに悩み、結局笑顔を浮かべるだけで終わってしまったのだった。




指定しないで一回投稿してしまった……そのままでもよかったんですがね

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