暗部の一夏君   作:猫林13世

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精神的な大人組……


一夏と碧

 年明けまで騒ぎ倒した刀奈たちは、寝る場所を決めずにそのまま寝てしまった。

 

「限界まではしゃぐなんて、刀奈ちゃんもまだまだ子供ですね」

 

「今日は虚さんも寝てしまってるので、子供ってだけじゃないと思いますけどね」

 

 

 普段から疲れを溜め込んでいる所為もあるのだろうと、一夏は寝てしまった刀奈や虚のフォローをしたが、本心は碧と同じで子供っぽいと思っているのだった。

 

「今日くらいは仲良く寝てもらいましょうか」

 

「一夏さんとしては、静かに寝られるから嬉しいんじゃないですか?」

 

「一日のんびりしてたから、あんまり眠くないんですけどね」

 

 

 人数分の布団を敷きながら、一夏は苦笑いを浮かべながら碧の問いかけに答えていく。

 

「碧さんこそ、今日くらいはゆっくりしたらどうですか? ずっと護衛として気を張ってるんですから」

 

「これくらいは当然ですよ。本音ちゃんも美紀ちゃんも学生ですから、こんな時間まで護衛を任せるわけにはいきませんからね」

 

「本音はどんな時間だろうと働いてないですけどね」

 

 

 当然の如く寝ている本音を運びながら、一夏と碧は顔を見合わせて苦笑いを浮かべる。

 

「精神的支柱とはいえ、もう少し働いてもらわないと困りますけどね」

 

「まぁ、本音ちゃんが笑っててくれれば、何とかなると思えますけどね。本音ちゃんが笑う余裕がないくらい追い込まれたら大変だと思いますけどね」

 

「追い込まれてても、こいつは笑ってそうですけどね」

 

 

 だらしなく口を開けて寝ている本音に、一夏は呆れた視線を向けながらも、しっかりと布団を掛けて風邪をひかないように寝かせる。

 

「やっぱり一夏さんはお兄さんっぽいですね」

 

「まぁ、実妹がここに二人いますからね」

 

 

 本音を運び終えた後、マドカとマナカを布団に寝かせながら優しい目を向ける。

 

「去年で妹が二人増えましたし、簪も義妹ですからね」

 

「刀奈ちゃんや本音ちゃんも、一夏さんの妹っぽいですし、クラスメイトの子たちもそんな感じですものね」

 

「本音やクラスメイトは兎も角、刀奈さんは俺より年上なんですけどね」

 

「お姉ちゃんっぽく振る舞ってても、やっぱり一夏さんの方が年上っぽい雰囲気がありますからね」

 

「大人の中で生きてきましたから、それは仕方ないのかもしれませんね」

 

「天下の更識企業のご当主様ですものね」

 

「碧さんだってその企業の中の人ですからね。あんまり凄さが分からないんですけど」

 

「まぁ、私たちの思ってる以上に更識の名は強力ですからね」

 

 

 一夏がだいたいお願いすれば、国のトップですら逆らう事が出来ない。それくらい更識の名に威力があり、一夏たちが思ってる以上に効果があり脅しだと取られてしまうのだ。

 

「IS学園の子たちも、何とかして更識の関連企業に就職しようと頑張ってますしね」

 

「IS学園に通ってない人たちも狙ってますしね。そんなに魅力的なんですかね?」

 

「まぁ、世界一のIS関連企業ですし、ISに憧れを持っている人が就職を望むのも当然だと思いますよ」

 

「営業ならISの知識が無くても大丈夫ですしね。就職してから勉強しても間に合いますし」

 

「そもそも更識製のIS関連の製品なら、営業力が無くても買ってもらえますからね」

 

 

 そもそも一夏が用意する営業用のマニュアルのお陰で、個人の営業力はあまり必要ではないのだ。まぁそのせいで営業成績に差があまりないので、出世とかに関係してこないのだが。

 

「シャルロットさんも社長としてのノウハウを吸収してきてますし、一夏さんも少しは楽できてるんじゃないですかね?」

 

「フランスの方は落ち着きましたが、他の国はまだまだですからね」

 

「そういえば、アメリカの方は落ち着いたんですか?」

 

「まだ細かな事は文句を言って来てるようですが、いい加減日本政府に任せました。暴動でも起こらない限り、更識に連絡は来ないでしょうね」

 

「それでいいんですか? 日本政府に任せてたら、更識に都合の悪い事をするかもしれませんよ?」

 

「そうなったら、日本代表の刀奈さん、簪、美紀を別の国の代表にすると言えばいいだけですから。そうすれば大人しくなると思いますよ」

 

「……大人しくなるどころか、平身低頭の姿勢になりますよ」

 

 

 ただでさえ更識に恩がある日本政府なのだから、碧が言うようにとにかく謝って一夏の考えを改めさせるように努めるだろう。

 

「一夏さんは自分で忙しくなってるような気がするんですが、落ちつこうとは思わないんですか?」

 

「今でも十分落ち着いてるつもりなんですけど、周りから見ると忙しそうなんでしょうね」

 

「あれで落ち着いてると思ってる時点で、一夏さんはズレているんですよ」

 

「そうなんですかね……」

 

「ですから、もう少し周りに仕事を任せてみては如何でしょうか?」

 

「……考えておきます」

 

 

 全員を布団へ運び終え、一夏は自分の仕事量を思い浮かべ、碧の提案を本格的に考える事にしたのだった。

 

「お願いしますよ?」

 

「まぁ、虚さんが卒業すれば、時間も出来るでしょうし、お願い出来る事も増えるでしょうしね」

 

「私や美紀さんだって、一夏さんの為なら時間作りますから、もっと頼ってくださいね」

 

「前向きに検討します」

 

 

 逆らっても意味がないので、一夏は本気で考える事にするのだった。




碧は実際大人ですけどね……

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