暗部の一夏君   作:猫林13世

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世間のイメージと実際はかけ離れている事が多い……


世間からの評価

 何やら食堂が騒がしくなったのを、千冬と千夏は首を傾げながら眺めていた。

 

「いったいなんだと言うのだ……」

 

「なにかのパーティーだという事はわかるが、いったい何の……」

 

「年越しパーティーだと聞いていますが」

 

「ナターシャか……誰から聞いた?」

 

 

 二人の背後から声を掛けてきたナターシャに、千冬が詰め寄るように問いかけた。

 

「普通に一夏さんから連絡を貰いました。凰さんが企画して、結構な人数が参加するらしいので、食堂を使用する事になったと。お二方にも連絡はいっているはずなのですが」

 

「……そう言えばそんな報告も来てたな。そうか、今日は大晦日だったのか」

 

「日付くらい確認してくださいよ。とにかく、そう言う事なので少し騒がしくても大目に見てあげてくださいね」

 

「なにかを壊さない限り、わたしたちだって温かい目で見守るさ」

 

 

 千夏の言葉に疑いを持ったナターシャではあったが、彼女たちに逆らっても勝ち目がない事はわかっているので黙ってこの場を去ったのだった。

 

「あっという間に一年が過ぎていたという事か」

 

「ちーちゃんもなっちゃんも、なんだか年寄りくさいね~」

 

「束っ!? 貴様、何時の間に現れたんだ!」

 

 

 ナターシャの代わりに現れた束に、千夏が手刀を放つが、簡単に避けられてしまった。

 

「いきなりご挨拶だね~、なっちゃん。束さんはただ遊びに来ただけなのに」

 

「お前の言い分など本気に出来るわけないだろ。それで、今日はどんな厄介ごとを持ってきたんだ」

 

「せっかく美味しいお酒が手に入ったからちーちゃんとなっちゃんにも分けてあげようと思ったのに、そんなことを言うんだ」

 

「さすが束だな。ささ、部屋にくるんだ」

 

「わたしたちの秘蔵の酒も出そうではないか」

 

「あっさりと手のひらを返したね~」

 

 

 千冬と千夏の態度に笑みを浮かべながら、束は案内されるがままに寮長室へとやってきた。

 

「相変わらず散らかってるね」

 

「貴様の研究所も大概だろ」

 

「束さんには、愛しい愛しい娘のクーちゃんがいるから大丈夫だもんね~」

 

 

 それでも束のラボは散らかっているのだが、千冬と千夏には調べようがないので堂々と嘘を吐く。その後、三人で昼から酒盛りをはじめ、箒の監視はナターシャが肩代わりしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 のんびりとお風呂に入り、その後まったりと部屋で過ごしていた刀奈たちではあったが、時間が進むにつれてテンションが上がっていた。

 

「このメンバーで年越しを過ごすのって、何時ぶりかしら?」

 

「全員そろってとなると、三年前くらいじゃないですかね」

 

「去年も一昨年も、みんな忙しそうだったからね」

 

「私は暇だったけどね~」

 

「お前は毎年寝てただろ」

 

 

 珍しく遅い時間まで起きている本音に、一夏は呆れたような目を向けながらツッコミを入れた。本来であれば本音にも仕事があったのだが、早々に寝てしまいその代わりを一夏や美紀が務めていたのだ。

 

「そう言えば一夏君、来年は一夏君のお友達の妹さんが受験するのよね?」

 

「そんなことを言ってましたが、結局はどうなったのかは知りません。せっかく名門の学校に通ってるんですから、そのままエスカレート式で高校に通うのかもしれませんし」

 

「でも、簡易適性検査でA判定だったんでしょ? 一夏としてはそんな人材をみすみす手放すのは良いの?」

 

「良いも悪いも、蘭の人生だからな。ISの道に進むのであれば、知り合いとして教えたりもするが、普通の道に進むのであれば、無理強いは出来ないだろ」

 

「その子も一夏君の事が好きなんでしょ? だったらISの道を進むと思うわよ」

 

「好意云々は置いておくとしても、こっちに来るのなら歓迎しますけどね」

 

 

 弾にメールでもすれば、蘭の進路がどうなったかなどすぐに分かるのだが、別にそこまでして知りたいとも思っていないので確認はしていない。だが文化祭の時に会った感じでは、恐らくはIS学園を受験し、問題なく合格するだろうと一夏は思っていた。

 

「IS学園に来るのなら、先輩として歓迎してあげなきゃね」

 

「お嬢様、余計な事はしないでくださいよ?」

 

「余計な事って何よ!?」

 

「特定の新入生に肩入れするのは避けてくださいと言っているのです。いくら一夏さんの知り合いとはいえ、お嬢様が特別扱いする事を善とされるわけではありませんので。ましてやお嬢様は国家代表であり生徒会長なのですから、そんな人が特別扱いするような人物なのかと、余計な詮索が入る可能性が出てきますので」

 

「詮索が入ったとしても、一夏君が何とかしてくれるでしょ?」

 

「面倒なので、詮索されない方向でお願いします」

 

 

 国の詮索に横槍を入れて妨害するのは簡単だが、面倒であることには違いないので、一夏は虚の忠告を全面的に支持するのだった。

 

「とにかくお嬢様、入学してすぐ声を掛けるとか、そう言ったことは控えてくださいね」

 

「分かったわよ……でも、向こうから近づいて来たら仕方ないわよね?」

 

「その時は仕方ないですが、蘭が刀奈さんに近づくとは思えませんね。世間では刀奈さんは織斑姉妹や碧さんと同じくカリスマ扱いですし」

 

「碧さんは兎も角、織斑姉妹やお姉ちゃんがカリスマね……」

 

「ちょっと!?」

 

 

 簪が呆れているのを視線で感じ取った刀奈は、ショックを受けたような声で簪に抱きつき、余計に呆れられたのだった。




カリスマっていったい何なのでしょうね……織斑姉妹がそれだと考えると、ますます分からない……

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