暗部の一夏君   作:猫林13世

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彼女は恋愛感情を無視すれば一番仲が良いでしょうしね


一夏との関係

 二学期のすべての日程が終了し、一夏たち生徒会役員は終業式の為壇上に上がっていた。

 

「今日で二学期も終わりで、三年生はいよいよ後数ヶ月で卒業になります。この冬休みはのんびりできる最後の時間だと思いますので、思いっきり楽しんでください。あっ、でも学園に迷惑がかかることは止めてくださいね」

 

 

 刀奈の挨拶に、体育館は笑いに包まれたが、壇上では一夏と虚が頭を押さえる仕草をしていた。

 

「それじゃあ、各自教室に戻って、今学期の成績を受け取ってください」

 

 

 解散の合図とともに、学生たちはゆっくりと体育館から各教室へと戻っていった。それを見送ってから、一夏と虚は刀奈に軽く注意をして、自分たちも教室に戻る事にした。

 

「お嬢様、あまりふざけると織斑姉妹から注意されますので」

 

「ふざけてないわよ? だって、虚ちゃんだって年が明ければ忙しくなるでしょ? だからこの冬休みはゆっくりできる最後のチャンスじゃない? だから他の人もそんな感じなんだろうなって思ったから」

 

「言っている事は正しいですが、言い方が間違ってましたね。少しフレンドリー過ぎた気もしますので、もう少し体裁を保ってください。仮にも生徒会長なんですから」

 

「仮って酷くない!? これでも二年間生徒会長を務めてるんだから!」

 

「昨年は私に、今年は私と一夏さんに仕事を任せまくってる生徒会長ですけどね」

 

「来年から頑張ります……」

 

 

 しょんぼりとしてしまった刀奈の頭を軽く撫でながら、一夏は一年の教室へと繋がる廊下で二人と別れた。

 

「一夏君、私の事をどう思ってるのかな?」

 

「どうしたのですか、いきなり」

 

「だって、当然のように頭を撫でて行ったから……なんだかマドカちゃんやマナカちゃんを相手にしてる時みたいな感じがして」

 

「実際お嬢様の事は妹みたいだと、簪お嬢様に言ったことがあるようですので、あながち間違いではないかもしれませんね」

 

「お姉さんとしての威厳が……ないか、そんなの」

 

 

 一夏の前では虚ですら年上では無いような感じがするのだから、自分じゃもっとないかと開き直った刀奈は、虚と別れて教室へ向かった。

 

「見てたわよ、かっちゃん。どっちが年上だか分からない光景ね、これ」

 

 

 教室に着く前に薫子が見せてきた映像を見て、刀奈は妹扱いでもいいかなと思い始めたのだった。

 

「薫子ちゃん、このデータは消しておいてね」

 

「せっかくだから現像してあげようか? 新聞に載せようとしても、更識君と布仏先輩に怒られるだけだろうから、かっちゃんにあげるわ」

 

「うーん……どうせならもうちょっと仲良しだって分かる写真の方がいいから、別にいらないわ」

 

 

 そういって、刀奈は自分の席に着き、薫子がデータを消したかどうかを確認せずにこの話題を打ち切ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一年一組でも成績表が配られ、一喜一憂する生徒が続出していた。二学期の殆どを亡国機業で過ごしていた箒は当然成績つかず、成績表もない。

 

「相変わらず一夏君の成績表は凄いわね」

 

「いきなり現れてなんだ静寐……」

 

「どうやったらそんな成績が取れるのか不思議でさ」

 

「静寐だって、さほど変わらないだろ?」

 

「変わるわよ。私は全部同じ数字じゃないもの」

 

 

 十段階評価で全て十の一夏に、静寐はちょっとばかり嫉妬したが、嫉妬するのもバカらしい成果を上げているのだから、当然と言えば当然の結果である。

 

「妹さんふたりと本音は、赤点すれすれだったみたいだけどね」

 

「マドカとマナカは兎も角、何で義務教育を受けてきた本音がギリギリなんだか……」

 

「とりあえずこれで二学期も終了ね。一夏君は年末年始、何か予定があるのかしら?」

 

「刀奈さん主催で家族で温泉旅行だそうだ」

 

「へー、珍しくゆっくり出来そうね」

 

「本気でそう思ってるのか?」

 

 

 一夏の問いかけに、静寐は笑いながら視線を逸らした。つまりは、静寐も本気でゆっくり出来そうとは思っていないのである。

 

「一夏、大晦日寮でカウントダウンするから、食堂の使用許可を頂戴」

 

「何だいきなり……カウントダウン? 食堂でするのか?」

 

「思いの外参加者が多くてね。部屋でやるのは難しいから、食堂を借りたいなと思って」

 

「そう言う事か。だが何で俺に? 普通は職員室に持っていくんだが」

 

「職員室に持っていくより一夏に持って行った方が確実でしょ。それで、使ってもいいの?」

 

「騒ぎすぎなければ大丈夫だと思うぞ。織斑姉妹にはこっちから話を通しておくから」

 

 

 鈴の申し出を簡単に受け入れ、一夏は織斑姉妹にメールを送った。

 

「大丈夫だ、許可は下りた」

 

 

 返信されてきたメールを鈴に見せて、一夏はため息を吐きながら携帯をしまった。

 

「ところで、鈴は弾や数馬と遊ぶのか?」

 

「アンタの予定次第って事になってるわよ。年明け、期待してるから」

 

「分かった。予定が分かり次第メールしよう」

 

 

 用事が済んだので、鈴は自分の教室へと戻っていき、再び静寐が一夏に話しかけてきた。

 

「鈴さんは相変わらずね」

 

「昔からあんなだからな」

 

「ちょっと羨ましいけど」

 

「あのガサツさがか?」

 

「ううん、一夏君と自然に遊ぶ約束が出来るっていうのが」

 

 

 静寐の言葉に首を傾げた一夏ではあったが、それ以上は追及することなく会話を打ち切ったのだった。




一夏の成績はないわ……

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