暗部の一夏君   作:猫林13世

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まぁ、みんな衝撃的でしょうね


衝撃の目覚め

 何時もと違う雰囲気を感じ取り、マナカは夜中に目を覚ました。

 

「どこ、ここ……」

 

 

 辺りを見回し、ここが一夏と美紀の部屋であることを理解したマナカは、自分が寝ていたベッドに視線を向け、隣のベッドで美紀と簪が寝ている事を確認してベッドに倒れ込んだ。

 

「お兄ちゃんのベッドだぁ……? そう言えばお兄ちゃんは何処に行ったんだろう?」

 

 

 自分が寝ているベッドが一夏のものであるなら、その一夏は何処に行ったのかと疑問に思ったマナカだったが、睡魔と一夏の匂いに負けて再び丸くなって寝ようとした。

 

「? 誰かいる……マドカか」

 

 

 一夏かとも思ったが、自分と体格も見た目もそっくりな双子の姉だと認識し、マナカはもう一度眠りの世界へと旅立っていった。

 そのマナカと入れ替わるように、今度はマドカが目を覚まし、マナカと同じように辺りを見回した。

 

「ここは……兄さまと美紀さんの部屋? お祝いの後そのまま寝てしまったようですね……」

 

 

 部屋を見渡して冷静に分析したマドカではあったが、自分が何処に寝ていたのかを理解したら冷静ではいられなくなってしまった。

 

「このベッド……兄さまの!? 今まで私は兄さまのベッドで寝ていたという事ですか!?」

 

 

 周りの人が寝ていると理解してるので、驚きも小声だったが、マドカは明らかに動揺している。

 

「兄さまのベッドで寝ていたというのに、私は普通の夢しか見る事が出来なかったなんて……どうせなら思いっきり兄さまに甘える夢でも見られれば良かったのに……」

 

 

 この辺りが千冬や千夏と違い常識の範囲内で一夏の事が好きなマドカの良いところであり、夢の中でも高望みはしないのだ。

 

「よく見ればマナカも一緒ですか……まぁ、兄さまが一緒に寝てくださるわけないですしね……ところで、その兄さまは何処に?」

 

 

 まさか美紀のベッドに寝ているのかと一瞬考えたが、美紀のベッドにいるのは美紀と簪、床には本音が寝ているだけで一夏の姿は部屋の何処にもなかった。

 

「兄さまはどちらに? 白式、闇鴉の気配は?」

 

『闇鴉の気配は、一夏お兄ちゃんが良く使ってる整備室にあるよ。たぶんそこに簡易ベッドがあるんだと思うけど、動き回ってるのを見るに、一夏お兄ちゃんは起きてるんだろうね』

 

「こんな時間に、ですか?」

 

『一夏お兄ちゃんは良くこの時間まで起きてたり、この時間に起きて作業をしたりしてるから、別に不思議ではないと思うんだけど』

 

「そんなこと初耳です……」

 

 

 ISの中では結構有名な話なので、てっきりマドカも知っているものだと思っていた白式は、マドカの反応に意外感を示した。

 

『とにかく、マドカが心配する必要は無いから、今は寝たら? 明日――というか今日も授業はあるわけなんだし』

 

「そうですね……なんだか眠くなってきました」

 

 

 マナカ同様再び一夏のベッドに倒れ込み、そのまま丸くなって眠りに就くマドカ。持ち主が寝たのを確認してから、白式も再び眠りに就いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、一夏のベッドにマドカとマナカが寝ているのをみた簪が二人を叩き起こした。

 

「二人とも、起きて」

 

「むにゃ……後五分だけ、お兄ちゃん」

 

「私は一夏じゃない!」

 

「うーん……おはようございます、簪さん」

 

「マドカ、これはどういう事?」

 

 

 すぐに目を覚ましたマドカに詰め寄りながら、簪はマドカに質問した。

 

「どういう事とは?」

 

「何で貴女たちが一夏のベッドで寝てるのかって聞いてるの」

 

「そんなこと言われましても……パーティーの後そのまま寝てしまったんだと思います。それで、簪さんは美紀さんの、私とマナカは兄さまのベッドに寝かされたのだと思いますが」

 

「それで、その一夏は?」

 

「白式の話では、兄さまは整備室にいるとの事です」

 

「整備室? そう言えば仮眠をとるスペースがあったような気もするけど……」

 

「簪さんが何を考えたのかは聞きませんが、私たちは兄さまと一緒に寝てはいませんので」

 

 

 マドカに指摘され、簪は顔を真っ赤にして逃げ出そうとして、床で寝ていた本音に躓いた。

 

「うにゅ!? うーん……むにゃむや」

 

「ほ、本音も寝てたんだ……」

 

 

 簪に押しつぶされたが、この程度で本音が起きるわけもなく、再び規則正しい寝息をたて始めた。

 

「誰がベッドに運んでくれたんだろう」

 

「兄さまだと思いますよ? あのメンバーでなら兄さまが運ぶはずですから」

 

「でも、一夏が私たちを運ぶとお姉ちゃんや虚さんが嫉妬するから、私たちは碧さんが運んでくれたのかもしれない」

 

 

 簪の考えに、マドカも同意する。確かに一夏が簪や美紀を運べば、刀奈や虚が嫉妬し、自分たちもとねだる光景が容易に想像出来るのだ。

 

「おはようございます」

 

「おはよう、美紀。どうも私たちは途中で寝ちゃったみたいね」

 

「そうだね……一夏さんたちにご迷惑をかけてしまったみたいね」

 

「その一夏は整備室で寝たみたいだから、後で謝らないとね」

 

「恐らく刀奈お姉ちゃんや虚さん、碧さんにも迷惑を掛けちゃっただろうし、全員で謝りに行かないとね」

 

 

 簪とマドカは美紀の考えに同意し頷いたが、未だに起きないマナカと本音を見て、三人は苦笑いを浮かべたのだった。

 

「マナカは兎も角、本音はどうやって起こす?」

 

「最悪引き摺って行けば大丈夫だよ」

 

「簪さん、過激です……」

 

 

 本音の扱いを不憫に思いながらも、マドカは特に代案を出すことは無かったのだった。




本音を起こすのは大変ですからね……

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