暗部の一夏君   作:猫林13世

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同年代なんですけどね……


大人と子供

 簪と美紀のお祝いの為と、スコールとオータムの空腹を満たすために、一夏と刀奈は調理を進めていた。その匂いにつられたわけではないのだろうが、調理室に一人の少女がやってきた。

 

「箒ちゃんじゃないの、どうかしたの?」

 

「いえ、何やら良い匂いがしていたので、何か手伝えないかと思いまして」

 

「それはありがたいんだけど、箒ちゃん一人? 今は真耶さんが見張りのはずなんだけど」

 

「私ならここにいますよ」

 

 

 廊下からひょっこりと顔を出した真耶に、刀奈はとりあえず安心したのだった。

 

「良かった。復帰そうそう箒ちゃんが独り歩きしてるのかと思っちゃったじゃない」

 

「手伝ってくれるなら、篠ノ之さんには洗い物をお願いします。さすがに調理は任せられませんので」

 

 

 万が一、箒が毒物を持っていて、それを混入されたら大変なので、一夏は洗い物を箒に任せる事にした。箒も、さすがに調理は手伝わせてくれないだろうと理解していたのか、素直に洗い物を始めた。

 

「山田先生も一緒にどうですか? 思いがけない人数分を作ることになったので、洗い物が多いんですよ」

 

「思いがけない人数? 更識君たちは誰の為に料理を作ってるんですか?」

 

「とりあえず代表昇格が決定した簪と美紀、そのお祝いに来てるメンバーと、スコールとオータムの分も作ることになりまして。余裕があるので、篠ノ之さんと山田先生にも賄いとして何かお作りしましょうか?」

 

「嬉しいです! 更識君の料理はめったに食べられないって千冬さんたちが言ってましたので」

 

「では、洗い物をお願いします」

 

 

 箒と真耶に洗い物を任せて、一夏と刀奈はどんどん料理を仕上げていく。その速度に、箒も真耶も目を奪われてしまっていた。

 

「更識君もですが、更識さんも早いですね……」

 

「IS関係以外でも就職出来そうですね」

 

「実家が更識だから、他の就職先も何もないけどな」

 

「そもそも一夏君はご当主様なんだから、就職も何も関係ないでしょ? 私も、代表を引退したら更識の幹部として働くことが決まってるみたいだし」

 

「刀奈さんは本当に実家なんですから当然です」

 

 

 最後の料理も完成させ、一夏と刀奈は料理を運ぶためにいったん調理室から姿を消した。その間も洗い物を進めていく箒と真耶は、二人の料理の腕を羨んでいた。

 

「篠ノ之さんは料理出来るんでしたっけ?」

 

「簡単なものなら、お父様と二人の時に作っていましたから。ですが、あそこまでのスピードは出せませんし、盛り付けなどもお二人とは比べ物になりませんよ」

 

「出来るだけ凄いですよ……私なんて冷凍物を電子レンジで解凍するくらいしか出来ませんから」

 

「山田先生もお忙しいでしょうし、家事が出来なくても仕方ないと思いますけど」

 

「あんまりフォローになってないですけど、ありがとうございます」

 

 

 二人の料理を見て自信を失くした二人ではあったが、妙な結束感が生まれ、洗い物を済ませたのだった。

 

「意外と早かったですね」

 

「二人だからかな? でも、真耶さんも箒ちゃんも助かりました」

 

 

 調理室に戻ってきた一夏と刀奈がお礼を言い、賄いとして作った料理を二人に渡し、部屋へと戻っていく。箒と真耶もとりあえず部屋に戻って食べようという事になり、一夏が作ってくれた料理を持って部屋へと戻ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティーも盛り上がり、疲れたのか簪と美紀が寝てしまい、それにつられるように本音やマドカ、マナカも寝てしまった。そんなメンバーを慈しむように眺める一夏を、虚と刀奈と碧は眺めていた。

 

「今日はこのままお泊りかしらね」

 

「織斑姉妹には事情を話しておきましたので、問題は無いと思います」

 

「一夏さんは何処で寝るのですか?」

 

「整備室に仮眠出来るようにスペースを作ってありますので、そこで寝れば問題ないでしょう」

 

「じゃあ、一夏君のベッドにマドカちゃんとマナカちゃんを寝かせて、美紀ちゃんのベッドに簪ちゃんを、本音は床でも気にしないからお布団を敷いて寝かせましょう」

 

「ベッドの割り振りに嫉妬が見られますが、それが一番でしょうね」

 

 

 刀奈の提案に虚が賛同し、碧もそれで納得したのだった。

 

「それじゃあ、俺がマドカとマナカをベッドに運びますので、そちらはお願いします。俺がやると嫉妬するでしょうし」

 

「さすが一夏君、分かってるわね」

 

 

 美紀と簪は碧が抱き上げベッドに運び、本音の布団の用意を虚がして、本音を布団に運ぶのは刀奈が担当する事になった。

 

「それにしても、簪ちゃんと美紀ちゃんが国家代表か……いよいよ姉妹で世界の頂点を取るという野望が近づいてきたわね」

 

「油断して負けないでくださいよ? 簪お嬢様も、お嬢様と一緒に頂点に立ちたいと思っているでしょうし」

 

「分かってるわよ。てか、一夏君たちが応援してくれるんだから、油断なんてしないってば」

 

「お嬢様はとんでもないミスを犯す時がありますからね……一応釘を刺しておかないと」

 

「だいたい、まだモンド・グロッソまでは一年くらいあるんだから、今から釘を刺さなくても良いじゃないの」

 

「お二人とも、皆さんが起きちゃいますよ」

 

 

 ヒートアップしかけていた二人に、碧が声を掛けクールダウンさせる。その間に一夏は妹たちをベッドに寝かせ、自分は整備室へと移動していったのだった。

 

「とりあえず、私たちは部屋に戻りましょうか」

 

「そうですね。ではお嬢様、おやすみなさいませ」

 

「お休み、虚ちゃん。碧さんも」

 

 

 部屋の前で別れ、それぞれ自分の部屋へと戻っていく。もし一夏がこの部屋に残っていたら、三人も泊まったかもしれないと、刀奈は部屋まで向かう間にそんなことを思っていたのだった。




はしゃぎすぎて疲れるなんて、子供ですね……高校生は子供か……

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