暗部の一夏君   作:猫林13世

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ごたごたで延期になってました


一日遅れのお祝い

 試験後という事もあり、午前中で授業は終わり、一夏たち更識所属の面々は簪と美紀の代表内定のお祝いをすることになった。本来であれば昨日の内にするはずだったのだが、いろいろとあって今日になったのだ。

 

「それじゃあ、簪ちゃんと美紀ちゃんの代表昇格内定を祝して、乾杯!」

 

 

 刀奈の音頭で乾杯をし、簪と美紀は少し恥ずかしそうに前にでてお辞儀をした。

 

「料理は昨日用意したんだが、結局パーティーは出来なかったからな」

 

「日持ちする物を作ってもらって正解だったわね」

 

「ケーキはすぐクリスマスだから止めておいたもんね」

 

「食べたかったけどな~」

 

 

 一夏の料理を食べながら、簪と美紀はようやく自分たちが代表になったんだという事を実感し始めていた。

 

「姉さまたちの後ですが、お二人なら立派に出来ると思います」

 

「私はそれほど付き合いが無いけど、とりあえずおめでとう」

 

 

 マドカとマナカにも祝われ、二人は照れくさそうにお互いの顔を見合ったのだった。

 

「ところでいっちー、シノノンはこれからどうなるの?」

 

「とりあえずは二学期の終わりまで監視して、冬休みはISに慣れる事から始める感じだろうな」

 

「でも一夏君、箒ちゃんに反応するISってあるの?」

 

 

 刀奈の質問に、一夏でなくいきなり人の姿になった闇鴉が答えた。

 

「とりあえずは私が呼びかけたお陰で、更識製の訓練機の子たちは篠ノ之さんを乗せる事を承諾してくださいました。まぁ、何かあればすぐに投げ出して構わないという許可を出したからですけどね」

 

「確かにその通りなのだが、またいきなり人の姿になって……」

 

「じゃあ私も!」

 

「白式まで……」

 

 

 闇鴉に続き白式も人の姿になり、甘えるように一夏の膝の上に座った。

 

「「あぁ!」」

 

「一夏お兄ちゃんの膝の上~」

 

 

 実妹であるマドカとマナカの悲鳴をものともせず、白式は一夏の膝の腕で気持ちよさそうに目を細めてお茶を飲んでいる。

 

「別に良いんだが、それは俺のお茶なんだが」

 

「一夏君、私にもそのお茶ちょうだい!」

 

「お茶なら急須に――」

 

「一夏さん、そう言う事じゃないですよ」

 

「それくらい分かってる」

 

 

 闇鴉のツッコミに、一夏は疲れたような声で応え、そしてそのまま白式を膝の上から下ろして立ち上がった。

 

「追加の料理を作ってくるから、皆はこのまま楽しんでてくれ」

 

「あっ、手伝いますよ」

 

「美紀は主役なんだから、大人しく祝われてろ。簪もな」

 

 

 手伝おうと立ち上がった美紀と簪を手で宥めて、一夏はそのまま調理室へと向かおうとした。

 

「一夏君、私が手伝うわよ」

 

「じゃあお願いします」

 

 

 すれ違いざまに刀奈に声を掛けられ、一夏は刀奈に手伝いを頼んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調理室へ向かう途中で、一夏はなんとなく嫌な気配を感じ取り、刀奈との距離を詰めた。

 

「ん、どうかしたの?」

 

「いえ、調理室から嫌な気配が……」

 

「誰かいるのかしら?」

 

 

 そう言って刀奈は調理室の中を覗き込むと、そこにはスコールとオータムがいた。

 

「何してるの?」

 

「あ? あぁ、更識の小娘か。見ての通り飯を作ってるんだよ」

 

「貴女たちに調理室の使用を許可した覚えはないんだけど?」

 

「だからこっそり使ってたんだけど、バレちゃったわね」

 

「そもそもご飯ならちゃんと用意してるじゃない。それで満足してないってこと?」

 

「いや、暴れたら腹減ってな。それで何かねぇかと思っただけだ」

 

「だったらそう言ってください。こちらで用意しますので、お二人は大人しく部屋に戻ってください。ただでさえ箒ちゃんが復帰して貴女たちの部屋を用意するのに苦労したっていうのに、これ以上問題を起こさないでください」

 

「別に何もしてねぇだろ?」

 

「いるだけで怖がる子がいるのよ」

 

 

 いくら更識が安全を保障したからといっても、亡国機業の人間相手に簡単に心を許せるわけがない。専用機持ちは割とすぐ打ち解けたが、それ以外の生徒は今でも警戒心を持っている人の方が多い。

 

「用意するって言っても、貴女が作るのかしら?」

 

「いや、刀奈さんは手伝いだ。俺が作る」

 

「てめぇが? 料理出来るのかよ」

 

「一夏君の料理はそこらへんのお店より美味しいのよ? それを作ってもらえるんだから、ありがたく思って部屋で大人しくしててくれますか」

 

「そうね。一夏が作ってくれるなら私も満足出来そうね。オータム、とりあえず部屋で待ってましょう」

 

「しかたねぇな……その代わり、うめぇもん持ってこなかったら容赦しねぇからな」

 

「暴れたら織斑姉妹が貴女を潰しに行くから、そのつもりで」

 

 

 一夏に脅しをかけたオータムに刀奈が脅しをかけると、大人しくオータムは調理室から去っていった。

 

「それじゃあ一夏君、追加の料理とあの二人のご飯を用意しちゃいましょう」

 

「そうですね……」

 

「よしよし、怖かったね」

 

 

 少し怯えている一夏の頭を精一杯背伸びして撫でる刀奈。普段は自分が甘えている分、こういう時くらいはしっかりとお姉ちゃんをしようと心に決めているのだ。

 

「少しこのままでいよっか。落ち着いてからやらないと危ないもんね」

 

「すみません……」

 

 

 椅子に腰を下ろし落ち着くまで刀奈に頭を撫でられた一夏は、普段以上にしっかりと調理をして、オータムに文句を言われないように頑張ったのだった。




原因は当然箒と織斑姉妹……

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