暗部の一夏君   作:猫林13世

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本来ならば教員がすべきことだが……


出迎えは生徒会

 IS学園に到着した箒を出迎えたのは、生徒会長の刀奈と従者の虚の二人だった。本来なら教師である織斑姉妹が出迎えをするべきなのだろうが、いきなりは刺激が強すぎるという一夏の配慮から、刀奈と虚の二人に決まったのだった。

 

「ご苦労様です、碧さん」

 

「いえ、篠ノ之箒さんをお連れする任、無事に完了した事を報告いたします」

 

 

 形だけの報告を済ませて、碧は木霊から箒を下ろした。

 

「お久しぶりね、篠ノ之箒ちゃん。いや、今の貴女は初めましてかしら? IS学園生徒会長兼日本代表の更識刀奈です」

 

「布仏虚です」

 

「篠ノ之箒と申します。以前の私が多大なるご迷惑をお掛けしたようで、深くお詫び申し上げます」

 

 

 深々と頭を下げる箒に、刀奈と虚は若干面食らった感じになったが、すぐにいつもの調子を取り戻した。

 

「貴女には一応監視がつきますが、基本的には自由に過ごしてくれて構いません。もちろん、常識の範囲内の自由ですので、行き過ぎだと判断した場合は即排除しますのでそのつもりでね」

 

「その判断は一夏様がなさるのでしょうか?」

 

「一夏様? あぁ、箒ちゃんも呼び方が変わったのね。そうね、一夏君が実質的決定権を持ってるから、最終判断は一夏君が下すと思うわ。でも、一夏君は優しいところがあるから、私たちも意見は言うと思うわよ」

 

「それで構いません。そもそも私は生きていられるだけで喜ばしい身なのですから、多少の監視くらいはなんともありませんし、これ以上罪を重ねるつもりもありません」

 

「本当に変わったわね、箒ちゃん……これならすぐにでもISに認めてもらえそうね」

 

「そればっかりは一夏さんの判断を仰がなければいけませんよ、お嬢様」

 

「分かってるわよ。ここにいるISは一夏君にとって子供同然ですもんね。箒ちゃんに使わせるかどうかは一夏君が判断しなきゃダメよね」

 

「以前の私は悉くISに嫌われていたと伺いましたが、今の私は認めてもらえるのでしょうか……」

 

 

 不安そうに尋ねる箒に、刀奈は少し首を傾げてから答える。

 

「私にはすべてのISの声は聞こえないけど、私の専用機の見立てでは大丈夫だと言ってるわ。もちろん、今のままだったらの話だけどね」

 

「私の専用機も、今の篠ノ之さんなら大丈夫だろうと言っています。このままゆっくりと成長して良ければ、後々は一夏さんのお力になれると思いますよ」

 

 

 虚の一言に、箒は嬉しそうに表情を綻ばせる。今の箒にとって、一夏の力になれる事が何よりも嬉しいのだろうと、刀奈と虚は思ったのだった。

 

「それでは部屋に案内しますが、当面は一人部屋です。そして部屋のすぐ隣には織斑姉妹が生活している寮長室がありますので、何かあればすぐ織斑姉妹が飛んでくると思ってください」

 

「その辺りは一夏さんが説明したから大丈夫よ、虚ちゃん。それに、今の篠ノ之さんはそれほど問題を起こしそうにもないし、すぐにルームメイトも出来るかもね」

 

「今一人で生活してるのって、マナカちゃんと香澄ちゃんの二人よね? どっちがいいかしら」

 

「その辺りは一夏さんと相談して部屋割りをした方が良いと思いますよ。元々一人の香澄さんはそのままにして、マナカさんをマドカさんと同部屋にして、静寐さんを篠ノ之さんのルームメイトにするのが一番だと一夏さんは言ってましたが」

 

 

 人の心の声が聞こえる香澄は、なるべく一人部屋のままがいいだろうと一夏は考えており、箒とマナカ、マドカのどちらかを同室にするのは危険すぎるので、静寐なら安心出来るというのが一夏の考えであり、それが一番現実的だと碧も思っている。

 

「確かに静寐ちゃんなら実力的にも人間的にも大丈夫そうね。まぁ、一夏君が何かしてあげれば喜んで引き受けてくれるとは思うけど」

 

「鷹月さんは前の篠ノ之さん相手でもある程度は平気でしたからね。委員長気質というのでしょうか、鷹月さんはしっかりとされていますからね」

 

「あの、その鷹月さんというのは?」

 

「そっか、記憶が無いんだっけ? 追々説明するけど、箒ちゃんのクラスメイトで、更識所属のIS操縦者よ」

 

 

 簡単な説明だけ済ませ、箒を部屋へと案内するために寮内へと入っていく。途中食堂やトイレの位置を説明しながら、元箒が使っていた部屋へと到着した。

 

「ここは基本的に関係者以外立ち入り禁止なんだけど、箒ちゃんは気にせず入っていいからね」

 

「何故このような場所に部屋を? 前の私が問題児だったからでしょうか?」

 

「そうなのよね……一夏君に真剣を向けてみたり、木刀で襲いかかったり、竹刀で殴り掛かったりと問題行動がまだったからこの部屋にされたのよ」

 

「記憶が無いとはいえ、一夏様にはもう一度しっかり謝らないといけませんね……」

 

 

 過去の自分がしてきた所業を聞かされ、箒はどんよりとした雰囲気を醸し出す。

 

「前の箒ちゃんからは考えられない言葉ね。今の貴女に謝ってもらっても仕方ないけど、一夏君なら許してくれると思うわよ。でも、万が一今の貴女が一夏君に仇なす存在になったら、一夏君の判断を仰がずに私たちが貴女を処分するからそのつもりでね」

 

「分かっています。一夏様が私の命を繋ぎとめてくださったのですから、一夏様に仇なす事などないとここに誓います。もしそういう存在になってしまった時は、容赦なくやってください」

 

 

 箒の覚悟を聞き入れた刀奈と虚は、力強く頷いて箒を部屋へ入れたのだった。




とりあえず一人部屋で

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