暗部の一夏君   作:猫林13世

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姉空間よりはよさそう……


妹空間

 第一アリーナで熱戦が繰り広げられているのと時を同じくして、第二アリーナではティナVS清香VSダリルVSさゆかの非専用機持ちの部の決勝が行われていた。

 

「兄さまは誰が勝つと思いますか?」

 

「普通に考えれば、専用機を持っているダリル先輩だろう」

 

「実力的にも実績的にもそうだろうね。でもお兄ちゃん的には、あの人以外に勝ってほしいんじゃないの?」

 

「まぁ、順当に決まってしまったら面白くないからな」

 

 

 前評判でも、ダリル有利と言われている大会なので、ダリルがこのまま優勝しても面白くない。一夏の思惑としては、ダリル以外の三人が優勝してくれた方が、大会は盛り上がるだろうと考えているのだった。

 

「私的には、ダリルさんに対抗出来る人はいないと思いますがね」

 

「私もそう思うけど、一夏お兄ちゃんが他の人を応援するなら、私も他の人を応援する」

 

「何だか随分久しぶりに人の姿になったな」

 

「出番なかったですし、闇鴉みたいにまだ好きな時に人の姿になれないんだもん」

 

 

 突如解説席に増えた二機に、マナカは驚きの表情を浮かべる。闇鴉が人の姿になるのは何時もの事だが、白式がこうして人の姿になるのを初めて見たのだから仕方ないだろう。

 

「一夏さんのオーラを吸収したのか、白式もある程度は自由に人の姿になれるようになったみたいですね」

 

「えへへ、これでまた一夏お兄ちゃんとお喋り出来るね」

 

「何でこいつはお兄ちゃんの事を『一夏お兄ちゃん』って呼ぶの! お兄ちゃんの妹は私とマドカの二人だけなんだから!」

 

「まぁまぁマナカ、白式の見た目と、兄さまに手を加えてもらった恩を踏まえて、白式は兄さんの事をそう呼んでいるんだから、少しは大目に見ないと」

 

「だけど!」

 

 

 妹ポジションが奪われるのではないかという心配から、マナカが過剰に反応を示したが、白式はマナカに敵対意識はない事を伝える。

 

「私は別に、一夏お兄ちゃんに妹として扱ってもらいたいわけじゃないよ?」

 

「じゃあ何でそんな呼び方をしてるんだ」

 

「うーん……にじみ出るお兄ちゃんオーラの所為かな?」

 

「あっ、なんとなく分かるかも」

 

 

 白式の言い分に納得してしまったマナカは、白式の呼び方を認めざるを得なくなってしまった。

 

「とにかく、これからは頻繁に人の姿になるかもだけど、よろしくね」

 

「これで一夏さんもISの擬人化研究が捗るかもしれませんね」

 

「闇鴉、スサノオ、白式と、これで三機が自由に人の姿になれるわけだからな……ISにも意識があるという事を視覚的に訴えるには便利だが、こうも自由に人の姿になられたら大変なんだが」

 

 

 慣れつつはあるが、いきなり人の姿になり話しかけられると、それなりに驚いたりする一夏は、闇鴉のようなのが増えるのは困るなと頭を悩ませていた。

 

「一夏さん、よそ見してる間に清香さんが追い詰められてますね」

 

「ダリル先輩にか?」

 

「いえ、あれはティナさんですね」

 

「同じアメリカ所属として手を組んだのか、それとも単純に倒せそうな相手から倒してるのかは分からないが、三人が手を組んでダリル先輩を攻め立てるという作戦には出なかったようだな」

 

「ティナさんは移籍問題がありますからね。三人で組んで負ける可能性を考えると、確実に潰せる相手から潰す作戦の方が良かったのかもしれませんね」

 

「兄さま、ティナさんの移籍に更識は力を貸すのですか?」

 

「専用機はさすがに用意しないが、それくらいなら問題ないだろ。何処も優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいだろうし、ティナさんなら申し分ないだろうし」

 

 

 ティナの入学時と現在の能力データを呼び出し、マドカとマナカに説明を始める一夏。既に解説の意味はなしていないが、最初から決勝に解説はいらないのではないかと思っていたので、やる気はあまりなかったのだ。

 

「鈴が転校してきてルームメートになってから、ティナさんもちょこちょこと鈴と特訓してたみたいだし、アメリカの問題が明るみに出てからは移籍先を探す為に実力に磨きをかけていたからな」

 

「近場で探すのでしょうか? 確かカナダが人材を欲しているとかの噂もありますし」

 

「亡国機業が色々とやってたからね。でも、アメリカには手を出してないけど」

 

「最近更識の傘下の企業が出来たインドも候補生を増やしたいという要望があったな。いい人材に心当たりがあったら紹介してほしいとも頼まれてるし、ティナさんがカナダとインドどっちを選ぶかによっては紹介出来なくはないな」

 

「繋がりが多すぎて兄さまの凄さがイマイチ把握出来ませんが、凄いですね兄さま」

 

「一夏お兄ちゃんなら、何処の国とでも繋がってそうだし、移籍先を探すにはもってこいだと思うけど」

 

「そんなに頻繁に移籍されたら国が困るんだがな……すでにエイミィがフランスに、サラ先輩がギリシャにと移籍してるわけだからな」

 

 

 サラの方は亡国機業が関係しての移籍なので、マナカも少しばかり罪悪感を覚えていた。

 

「お兄ちゃんに余計な手間を掛けさせてごめんなさい……」

 

「マナカが気にする事じゃないさ。そもそも独立派の人間だったからな、フォルテ先輩は」

 

 

 正確には独立派のダリルについて行っただけなのだが、犯罪組織に身を落とした人間を何時までも候補生にとどめておきたくはないという理由で候補生を外れ、フォルテを可愛がっていたギリシャ代表の人が責任を取って引退したためにサラはギリシャの代表になったのだ。マナカが属していた所謂過激派とはあまり関係はないのだ。

 

「そうこうしてる間に、さゆかさんがダリルさんに撃ち落されましたね」

 

「アメリカ所属の対決になったな」

 

 

 結果はなんとなく見えているので、一夏はモニターを操作して専用機の部の試合の様子を確認し、本音が善戦している事に驚いたのだった。




別の意味でつかれそうですがね

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