暗部の一夏君   作:猫林13世

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本音覚醒?


本音VS四人

 戦闘が始まってすぐ、鈴は本音に特攻を仕掛ける。もちろんこれで本音がビビるとは鈴自身も思っていないし、この攻撃が通りとも思っていない。

 

「凄いやる気だね~、リンリン」

 

「更識の中でも、一夏に近しい相手はこれくらいでも届かないのね、分かってたけど」

 

「結構危なかったけどね~」

 

 

 仕返しと言わんばかりに、本音は鈴目掛けて攻撃を仕掛けようとして、背後から来る気配に気づきそちらに攻撃を放つ。

 

「今度はカルカルか~。かなり危なかったよ」

 

「完全な不意打ちだったのに、これも止めるの!?」

 

「気配を隠しきれてなかったよ」

 

「アタシだっているわよ!」

 

「知ってるって。だから、少し大人しくしてて」

 

 

 鈴目掛けてエイミィを投げつけ二人を離脱させ、後方で隙を窺っていた静寐と香澄に視線を向ける。

 

「いくら待ってても隙は生まれないからね」

 

「そうみたいね……いつの間にか間延びもしなくなってるし、随分と本気みたいね」

 

「後でいっちーにもみられるんだし、あんまり情けない戦いをしたら護衛から外されちゃうもん」

 

「本音にとって、そっちの方が良いのでは?」

 

「いっちーの事は心配してるから、護衛から外されると寂しいんだよ。これでもかんちゃんの次くらいには気配察知が得意だし、戦闘だってマドマドには負けないんだからね」

 

「普段のほほんとしてるのは、自分の実力を隠すためってわけ?」

 

「そう言うわけでもないんだけどね」

 

 

 あれはあれで楽だからと、本音は笑顔で二人にそう告げる。呆気にとられた二人は、本音から見れば隙だらけでしかなかったが、あえて攻撃は仕掛けなかった。

 

「何で攻撃しなかったの?」

 

「だって、カスミンの久延毘古でバレてたんでしょ? 私が攻撃を仕掛けたらカウンターでシズシズが私に攻撃をするって作戦だったんでしょ」

 

「……これが一夏さんが言っていた、本音の野生の勘ですか」

 

「しかも今はやる気が満ちているから、私たち二人じゃ手に負えないわよ」

 

 

 鶺鴒と久延毘古でも、本音には敵わないと二人は自覚している。そもそもお情けで専用機を与えられた自分たちと、実力を認められて専用機を与えられた本音とではそもそもの地力が違うのだ。

 

「呆けてるんじゃないわよ!」

 

「もう一回!」

 

「ほえ、リンリンもカルカルも復活早いね。私ももう少し本気で行かないと!」

 

 

 エイミィの攻撃をいなし、鈴の砲撃を弾き返す。客席に飛ばされた砲撃は、織斑姉妹が目に見えぬ速さで撃ち落とした。

 

「あっちはもっと人外だね……まぁ、いっちーが客席の安全を考慮しての審判だし、当然なんだろうけどね」

 

「今のは撃ち取ったと思ったのに……」

 

「残念だったね、リンリン」

 

 

 まだまだ余裕だという表情を浮かべる本音に対して、既にいっぱいいっぱいの鈴はとりあえず本音の間合いから抜け出そうと後ろに移動する。

 

「いいの? リンリンが離脱したらカルカルが撃墜されるけど」

 

「私だって候補生としての意地くらいあるわよ!」

 

「それは、マドマドの零落白夜! さすがいっちー、面白いものを積んでるね」

 

 

 触れたらマズいと一瞬で判断した本音は、ギリギリのタイミングでエイミィの攻撃を躱し、背中に一撃を喰らわす。だがその隙を突かれ静寐の攻撃が掠ってしまった。

 

「あーあ、四人相手に完封出来ればいっちーも褒めてくれると思ってたのにな」

 

「そこまでナメられてるとは思ってなかったわ」

 

「ナメてないよ。出来るとは思ってなかったけど、狙わないと出来るかもしれないことも出来ないからね。まぁ、カスミンがいる時点で難しいのは分かってたし、シズシズも最近めっきり力をつけてるのも知ってたから」

 

 

 仕返しとばかりに、本音が静寐に攻撃を仕掛け、バランスを崩した静寐にそのまま体当たりを喰らわせた。

 

「四対一で厳しいなら、まず一人堕とせばいい」

 

「っ!」

 

 

 この四人の中で一番弱いと判定されたのは鈴。背筋が凍る思いをしながら、鈴は本気の本音相手に必死になって回避行動を試みたが、普段の本音からは考えられないくらいの速さで攻撃され、なすすべなく撃ち堕とされた。

 

「まずは一人」

 

「何だか人斬りみたいな雰囲気ね」

 

「次、エイミィさん!」

 

「予知しても意味ないもんね!」

 

 

 香澄がエイミィに危機を知らせるが、既に本音はエイミィに詰め寄っていた。

 

「更識製の専用機だから何があるか分からないけど、これなら!」

 

「残念! そう簡単に撃ち堕とされないわよ!」

 

「リンリンは簡単に喰らってくれたのに!」

 

 

 エイミィは回避ではなく攻撃を受け止め、その勢いをいなそうとしてきた。本音は受け止められた事に若干動揺したが、すぐに立て直し蹴りを放った。

 

「ぐっ! まさかISで蹴ってくるとは」

 

「距離を作るのに最適でしょ? そっちは蹴られた反動で下がり、こっちは蹴った反動で距離を作れる、いっちーが教えてくれたんだ」

 

「さすが一夏君ってところね。やれることは何でもやるなんて」

 

「おっと、シズシズもいい感じで邪魔だね」

 

「私もいます!」

 

「知ってるよ、カスミン!」

 

 

 個々で攻められたら勝ち目はないので、三人は乱戦に持ち込んで本音の集中力を削ぐ作戦に移行する。それでも本音の集中力はすさまじいもので、時間差で仕掛けた攻撃も完璧に躱され、それに対するカウンターをもろに受けてしまい、三人は一時態勢を立て直す事を強いられ、その隙に三人ともSEをゼロにされたのだった。

 

『はーい、そこまで! 勝者布仏本音』

 

『負傷させなかっただけまともになったのでしょうね』

 

 

 解説席で刀奈と虚が冷静に本音の実力を分析しているのを聞きながら、静寐と香澄はまだまだ実力不足だという事を知らしめられたのだった。




これでも暗部所属ですからね

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