暗部の一夏君   作:猫林13世

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こっちもこっちでカオスだな……


第二グループの戦力

 専用機持ちの部の第一試合は、辛うじて美紀が勝利し決勝進出を勝ち取った。普段から簪相手には分が悪かった美紀にとって、この勝利は自信につながるものになるだろう。

 

「非専用機持ち解説席の一夏くーん! 美紀ちゃんと簪ちゃんの専用機調整の為、急ぎ整備室に向かってください。代わりは虚ちゃんがやってくれるそうなので」

 

「放送を私用に使わないでください……」

 

 

 専用機持ちの部は、参加人数が少ないので今は休憩時間となっているので、虚が一夏の代わりに非専用機持ちの部の解説を務める事が出来る。その間、刀奈はのんびりと過ごすつもりだったのだが、虚に首根っこを掴まれて一緒に解説を務める事になってしまった。

 

「それじゃあ虚さん、刀奈さん、よろしくお願いします」

 

「まぁ、簪ちゃんや美紀ちゃんの専用機の調整は一夏君しか出来ないもんね。こっちはお姉さんに任せて、休憩時間の間に終わらせちゃってちょうだい」

 

「本当は虚さんにも手伝ってもらいたかったのですが、刀奈さんの監視じゃ仕方ありませんよね」

 

「別に監視なんていなくてもちゃんとやるのにー」

 

「普段の行いがちゃんとしてないから、信用されないんですよ」

 

 

 虚の辛辣な言葉に、刀奈は泣いたふりをして一夏に抱き着いた。

 

「一夏君、虚ちゃんが苛める!」

 

「まぁ、虚さんの言い分も分かるので何とも言えませんが、刀奈さんはもう少し仕事に真剣になってもらいたいですね」

 

「私だって頑張ってるんだよ? でも、一夏君や虚ちゃんと比べられるとどうしても見劣りしちゃうのは仕方ないと思うんだけどな?」

 

「それだけ期待されてるという事なんですから、もう少しサボるのを止めてくれれば俺はそれで十分だと思いますがね」

 

「分かった……もうちょっと真面目にやる」

 

「はい、頑張ってくださいね」

 

 

 刀奈の頭を撫でながら、一夏は虚にアイコンタクトを送り納得させた。

 

「では刀奈さん、俺は整備がありますので、解説お願いしますね」

 

「うん、一夏君も頑張ってね」

 

 

 一夏分を吸収した刀奈は、先ほどより血色の良い感じがすると虚は思ったが、ここで自分もと一夏に甘えれば一夏の作業時間を奪ってしまうと思い我慢する事にした。

 

「では、お願いします」

 

 

 虚にも一言掛けて一夏は簪と美紀と一緒に何時もの整備室へと向かっていく。その背中を見送ってから、虚と刀奈はマナカが待つ解説席へと向かった。

 

「虚ちゃんも一夏君に撫でてもらいたかったの?」

 

「当然ですけど、あそこで甘えると簪お嬢様や美紀さんも一夏さんに甘えだしたでしょうし、それは一夏さんの時間を奪ってしまう事になるので自重しました」

 

「良く我慢出来るわよね。私だったら絶対我慢出来ないと思うのに」

 

「お嬢様はもう少し我慢を覚えた方が良いと思いますが、本音よりは我慢してると思いますから今はこれ以上言わないでおきます」

 

「本音と比べられても嬉しくないけどね」

 

 

 普段だらけてる本音の姿を思い浮かべ、刀奈は苦笑いを浮かべた。あそこと比べられるほど自分はだらけてないと思っているのだが、更識所属では本音の次にだらけてると自覚している刀奈は、もう少し気を引き締めようと決心したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 整備室に到着した一夏は、急ぎSEの補給と簡易メンテナンスを始めた。互いに実力者だけあって、派手に破損する事は無くとも、的確にダメージを与えるために脆い部分を狙う為、一試合ごとに破損がないかチェックするのも一夏の仕事なのだ。

 

「簪は近距離武器があるからまだ分かるが、美紀も良くこんなところ狙えるよな」

 

「一夏がISの弱点部分を教えてくれたんでしょ? そこを的確に狙えるように訓練させられたんだから、出来て当然」

 

「本音でも出来ますし、最初から更識にいた人間なら全員出来ると思いますよ」

 

「まぁ、まさか身内同士で戦う時に発揮されるとは思ってなかったがな。他の相手はそこまでガード堅くないし、急所を狙わなくてもいけるしな」

 

 

 更識レベルで考えて堅くないなので、他の人間が聞けばツッコミを入れたかもしれないが、簪も美紀もそれが普通だと思っているのでツッコミは入れなかった。

 

「しかし、よく考えたら参加しなかった方が忙しいっておかしくないか?」

 

「更識の専用機を整備科の人にお願いするわけにはいかないし、任せたとしても出来ないと思うよ」

 

「一夏さんが組み立て、メンテナンスまでしてるわけですからね。普通の整備士には調整なんて出来っこないですよ」

 

「この後、本音と静寐と香澄とエイミィも参加するんだろ? どっちにしろ整備が大変そうだ」

 

「鈴が文句言ってたけどね」

 

「何で」

 

「更識所属相手に勝てるわけないじゃないの! って」

 

 

 社会的地位を考えれば、鈴とエイミィは同じ扱いだが、鈴以外の四人は、更識所属という全世界のIS操縦者が憧れる身分なのだ。例え候補生と言えども、鈴は自分が優位だとは一切思えない人を相手にしなければならないのだから、文句の一つや二つ言っても不思議はない。

 

「あくまでコンピューターがランダムに組んだグループだから、鈴はくじ運が無かったという事だな」

 

「とにかく、鈴が文句を言いたい気持ちも分からなくはないけど、決まった事に何を言っても無駄だよね」

 

「とにかく、美紀は決勝に向けて休んでおくといい。多分本音だと思うが」

 

「香澄さんや静寐さんも手ごわそうですけどね」

 

 

 第二回戦の顔ぶれから、勝ちあがるとしたらこの三人の誰かだろうと、一夏も美紀も簪も疑わなかった。エイミィも鈴も実力者だが、本音が頭一つ抜き出ているのはデータを見れば明らかであり、他の四人も認めている事なので仕方ないだろう。




実力者が多い学校だことで……

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