暗部の一夏君   作:猫林13世

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煽りに煽って……


盛り上がる大会

 一夏とマナカが非専用機持ちの方を解説しているのをモニターで眺めながらー刀奈と虚は専用機持ちのグループの解説をしていた。

 

「第一グループは、簪ちゃん、美紀ちゃん、マドカちゃん、ラウラちゃん、そしてセシリアちゃんの五人ね」

 

「気を抜くとあっという間にやられてしまいそうなグループですね」

 

「ここで注目なのは、やっぱり簪ちゃんかしらね」

 

「病み上がりでどこまで体力が回復しているかも注目ですが、簪お嬢様と美紀さんはペアの候補生ですから、ソロでどれだけ動けるかも注目です」

 

「その点だと、マドカちゃんが有利かしらね?」

 

「マドカさんも実力は十分ですが、篠ノ之博士が造った白式はかなりピーキーな設定になっていますからね。遠距武器の無い状況で簪お嬢様に勝てるでしょうか」

 

「ラウラちゃんやセシリアちゃんも、入学当初から比べると大分成長してるし、上手く動けば勝ち抜ける可能性は十分ありそうね」

 

「誰を最初に脱落させるか、それが鍵でしょうね」

 

「一番最悪なのは、簪ちゃんと美紀ちゃんが徒党を組んで、他三人を脱落させるってパターンかしらね」

 

「手を組んだと見せかけて、簪お嬢様が後ろから美紀さんを撃ち落とすという事も可能ですし、簡単に手を組むとは思えませんがね」

 

 

 二人の解説を聞きながら、参加しなかった生徒たちはアリーナで盛り上がっていく。まだ始まっていないが、解説だけで盛り上がれるのも、IS学園の良いところなのかもしれないと刀奈は思っていた。

 

「とにかく、始まってすぐの動きに注目ね」

 

「若干非社交的なマドカさんがどう動くかも注目したいところですが、それ以上に心配なのはラウラさんですね。あまり人を疑わない様子ですし、言葉巧みに騙され上手く使われる可能性も」

 

「そんな腹黒い事を考える子、このグループにはいないわよ?」

 

「暗部所属が二人いるんですから、そう言う事も考え無くはないでしょうに」

 

「そうかしら? まぁ、とりあえず選手の入場です」

 

 

 開始前から散々盛り上げ、ようやく選手が入場してくると、会場は異常な盛り上がりを見せた。

 

「あっ、あんまり騒ぎすぎると他の子たちに迷惑がかかるかもしれないから、ほどほどに盛り上がってね」

 

「どんな注意事項ですか……基本的には盛り上がるのは自由ですが、あまり行き過ぎると教師陣から注意が入りますのでお気を付けください」

 

「それから、インターバル中は選手同士の接触は自由だけど、闇討ちとかは禁止だからね」

 

「それも今更な注意事項ですが、勝ちたいという気持ちが強すぎるとありそうですからね。もちろん、不正が発覚したらそれ相応の罰を課せられますのでお忘れなく」

 

 

 そんなことは無いだろうと理解してはいるが、参加者にダリルがいるので一応の注意事項を済ませ、ようやく専用機持ちの部も開始となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レベルの高い戦いを見せられ、モニター室ではため息があちこちで漏れている。静寐や香澄もまた、簪と美紀の連携に魅入られ、そして力の差を見せつけられため息を漏らしていた。

 

「更識先輩が言ってた通りの展開になって来てるわね」

 

「簪さんが後方から美紀さんを援護し、動きが鈍ったところに美紀さんが一撃を喰らわせ、トドメに簪さんがミサイルを撃ち込む……国家代表に一番近いと噂されているだけあって、やはりレベルが違いますね」

 

「セシリアやラウラも頑張ってたんだけどね……後はマドカだけね」

 

「織斑一族というだけあって、マドカさんも予想外な動きをしてますけどね」

 

「戦闘においては姉二人には敵わないって言ってたけど、私たちから見れば十分強いのよね、マドカも」

 

 

 頭脳においては兄や妹に敵わないとも言っているが、マドカは何方も平均以上の才能を持っている。だが、勉強に関しては誰にも似ず酷い結果なのだが……

 

「姉妹機ってだけあって、金九尾と光白狐の連携は完璧に近いわよね」

 

「白式も並の専用機から見れば凄いですが、やはり更識製の方が一枚上手のようですね」

 

「まぁ、篠ノ之博士が造った白式も十分凄いんだけど、あの二人を見るとやっぱりそう思うわよね……」

 

 

 操縦者のレベルも当然あるのだが、どうしても更識製の専用機の方が優れているように思えてしまうのだ。それは他の観戦者も同じ考えのようで、鈴やエイミィもため息を吐きながら二人の動きを観察していた。

 

「てか、こっちは一夏君しかメンテナンス出来ない機体が多いから、次のグループが終わったらしばらくお休みなのよね」

 

「サラ先輩はギリシャの方で用事があるようなので不参加、ダリル先輩の専用機は使用申請が下りなかったので訓練機での参加ですからね。残ってるのは私と静寐さん、鈴さんにエイミィさん、後は無理矢理参加させられた本音さんの五人ですから」

 

 

 一夏とマナカは体調面で、刀奈と虚は戦力面で参加を見送り、シャルも自分が出ても勝てないからと辞退を表明した。その結果専用機持ちの部は少数ながらも実力者が揃い、非常に見ごたえがあると騒がれているのだ。

 

「簪や美紀と比べられると、私たちなんて何枚落ちるのかしらね」

 

「この二人が決勝に揃わなかっただけでも盛り上がるのでしょうが、こっちには本音がいますからね……」

 

「意外と実力者なのよね」

 

 

 普段のほほんとしているので忘れられがちなのだが、本音は更識所属の中でも上位に数えられる実力者で、今戦っている簪と美紀の訓練相手を務められるくらいの実力は有している。つまり、次のグループは本音が実力的に一つ抜け出しているので、上手く徒党を組んで本音を最初に脱落させられるかが鍵になると、静寐はモニターと本音を同時に見ながらそのように考えていたのだった。




専用機持ちの部がカオスに……

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