暗部の一夏君   作:猫林13世

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いろいろと大変ですからね……体調不良にくらいなるかと


体調不良の原因

 生徒会室で最終調整を終えて、部屋に戻る途中で一夏は自分の身体がふらついている事に気付いた。

 

「一夏君、どうかしたの?」

 

「いや、微妙にふらついている気がしまして……少し根を詰め過ぎましたかね」

 

「大丈夫? 碧さん呼ぼうか?」

 

「いえ……大丈夫です」

 

 

 部屋に戻る分かれ道に差し掛かり、刀奈と虚を見送ってから一夏はふらつく足で部屋まで戻る事にした。

 

「無理しちゃ駄目ですよ。刀奈さんたちは何とか誤魔化したみたいですけど、専用機である私の事は誤魔化せませんからね」

 

「別に大したことじゃないんだし、下手に心配をかけるのも悪いだろ。それに、根を詰め過ぎたと言ってあるし、それも嘘ではないんだから」

 

「分かってますけど、一番の原因は篠ノ之さんに会ったことですからね。変わっていたとはいえ、一夏さんは本能的にあの人を怖がっていますから」

 

「ここまで耐えられたんだから、次はもう少し大丈夫だと思う」

 

「耐えてる時点で問題だと思いますけどね……まぁ、復帰しても一夏さんの側には来られないでしょうし、あからさまに距離を取った事で碧さんにはバレているでしょうしね」

 

「そこまであからさまじゃなかっただろ」

 

 

 闇鴉に肩を借りながら抗議する一夏だったが、その抗議に何時もの鋭さは無かった。

 

「篠ノ之さんの方もですが、一夏さんも本気で人間不信と女性恐怖症を治さないと大変ですよ」

 

「分かってるし、少しはマシになって来てるんだがな……篠ノ之とオータムだけは本能的に避けたいと思ってしまってるんだから仕方ないだろ」

 

「まぁ、一夏さんが努力してないわけじゃないことは私が一番知っているつもりですけどね」

 

 

 部屋の前に到着し、闇鴉は待機状態へと戻る。美紀に余計ない心配を掛けない為なのだが、それを一夏が強く願ったからでもある。

 

「お疲れ様です、一夏さん。お父さんから連絡がありました」

 

「何かあったのか?」

 

「アメリカが篠ノ之さんの社会復帰に異論を唱えているようです」

 

「アメリカが? 今はコアもなく、世界的地位を失っているあの国が何の理由で」

 

「どうもアメリカは篠ノ之箒に脅されていたとか、全ての元凶は彼女だとか、訳の分からない事を言っているだけのようです。何処の先進国も相手にしていませんし、更識の方で黙らせたとの事です」

 

「異を唱えたくなる気持ちは分かるが、篠ノ之はアメリカと何の関係もないだろ……イギリスが文句を言ってくるのならまだ分かるが、サイレント・ゼフィルスはアメリカの物ではないし、アメリカに関して篠ノ之は何もしてないはずだろ」

 

「ですから、自分たちの地位を復活させるためのパフォーマンスだろうと」

 

 

 報告を受けた一夏は、すぐさまネットで今回の事件を調べ始める。調べ始めてすぐ、アメリカが作ったホームページを発見し、その内容を読んでため息を吐いた。

 

「何が書いてあるのですか?」

 

「ざっくり言えば妄言だな。篠ノ之が襲ったと言い張っている店の写真や、襲われたと言い張っている人の写真が載っているが、この日は確か学園が襲われた日だ。篠ノ之もその場所にいたのはこの学園の人間なら大抵知っている。時差を考えたとしても、あっさりと追い返された腹いせにアメリカの施設を襲うのは非効率だ」

 

「そもそも、篠ノ之さんはアメリカなんて興味なさそうでしたからね」

 

「拠点はアジア圏内だったし、アメリカの技術者と通じている感じもしなかった。そもそも亡国機業の本拠地だってアメリカではないんだ。破壊工作を行うにしてもアメリカを襲う理由はない」

 

 

 すぐにサイトを閉鎖させ、一夏はPCの電源を切る。尊からの報告書に目を通し、取り合う必要は無いと判断して尊に処理を一任することにした。

 

「まったく、余計な仕事を増やそうとするとはな……本当にアメリカを襲って黙らせるか?」

 

「一夏さん、冗談に聞こえないんですけど」

 

「半分くらい本気だからな。織斑姉妹と束さんに頼めば、世界地図からアメリカが消えるのも時間の問題だと思うし」

 

「……さすがにやり過ぎだと思いますけど」

 

「だから、半分は冗談だって言ってるだろ。やったとしても二度と再起出来ないくらい叩き潰すくらいだ。世界地図から消そうだなんて思ってない」

 

「ならいいですけど……」

 

 

 一夏の真意が何処にあるか分からなかった美紀は、まだ少し不安そうな表情で一夏を見つめた。

 

「大丈夫だって言ってるだろ」

 

「いえ、そっちはもういいんですが……体調悪いんですか?」

 

「……何だいきなり」

 

「いえ、一夏さんが冗談を言うなんて滅多になかったので、もしかしたら体調が悪いのかなと思っただけです」

 

「俺だって人並みに冗談は言ってきたつもりだが」

 

「いえ、一夏さんはあまり冗談を言うタイプではありませんでしたし、言ったとしてももう少しマイルドな感じでした」

 

「はぁ……よく見てるな、俺の事」

 

 

 一夏の言葉に、美紀は一瞬赤面したが、その言葉に含まれた意味を瞬時に理解して表情を改めた。

 

「何があったのですか?」

 

「いや、篠ノ之に会ったから調子が優れないだけだ。一晩休めば大丈夫だろう」

 

「なら、前みたいに抱きしめてあげますよ?」

 

「いや……あとが面倒になりそうだから大丈夫だ」

 

 

 美紀と一緒に寝たことがバレたら、刀奈や簪が押し寄せてくるだろうからと断り、一夏は自分のベッドへと倒れ込んだのだった。




脅し方に磨きがかかってきたな……

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