暗部の一夏君   作:猫林13世

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それほど重くはない……のか?


四人への罰

 寮長室で説教されていた四人は、あまり正座に慣れていなかったのか、徐々に足の感覚がマヒしてきていた。

 

「何をそわそわしている」

 

「千冬さん、足がしびれてきたので崩していいですか?」

 

「学校では千冬先生と呼べ! だがそうか、貴様らは日本人じゃなかったな」

 

「アタシは日本長いですけど、正座の文化は取り入れてなかったですし」

 

「仕方ない、動けないように重しを乗せてやろう」

 

「鬼畜!?」

 

「冗談だ。後で一夏に怒られるからな」

 

 

 そう言って、千冬は四人に楽にしていいと告げ、珍しく自分で淹れたお茶を啜った。

 

「それで、何で一夏の部屋に忍び込もうとしたんだ。こうなることは分かっていただろ」

 

「アタシは普通に、お見舞いに行こうとしただけです」

 

「僕も、一夏に聞きたい事があったので。電話では分かりにくいかと思って、直接会おうと思ってました」

 

「私はお兄ちゃんが風邪気味だと聞いてお見舞いに行こうとしただけです」

 

「わ、私も一夏さんを見舞おうとしただけですわ」

 

「普通に見舞おうとして、何故忍び込もうとする。凰は一夏と付き合い長いのだから、忍び込もうとすればどうなるか分かっていたのではないのか?」

 

 

 千冬に名指しされ、鈴は少しびくつきながらもはっきりと答える。

 

「弱ってる一夏なら、忍び込むことが出来るんじゃないかという知的好奇心が働きまして……そのせいで千冬さんと千夏さんの存在を忘れてました」

 

「そもそも、お前如きの気配遮断で一夏を欺けると思うな、馬鹿者」

 

「うっ、酷い言われようだけど返す言葉が無いわ……」

 

「次にデュノア」

 

「は、はい!」

 

「お前の用事は急ぎのモノだったのか?」

 

「そこまで切羽詰まったものではないですけど、早いに越したことは無いですし」

 

「なら、正式に訪問する旨を伝え堂々と訪れればよかったものを、何故こっそりと近づいたりした」

 

「それは……」

 

 

 千冬に睨まれ萎縮したシャルは、これ以上千冬の視線に耐えられないと判断し正直に答えた。

 

「もしかしたら一夏の寝顔を見れるんじゃないかと思いまして……前に一度だけ見たことがあるんですが、もう一回見たいという気持ちがありました。申し訳ありませんでした!」

 

「正直に白状したのは良い事だが、一夏の寝顔を見たいなど万死に値する」

 

「ヒィ!?」

 

「次、ボーデヴィッヒだが」

 

「はい、千冬教官!」

 

「お前は普通に見舞おうと言っていたが、それなら堂々と部屋に入ればよかったのではないか? お前は一夏ともそうだが、その周辺の人間とも友好的だと思っていたが」

 

「こっそりと訪れて、お兄ちゃんを驚かしたかっただけです」

 

「そうかそうか……素直に育って嬉しい限りだが、お前はもう少し駆け引きを覚えた方が良いぞ」

 

「はっ! ご指導ありがとうございます」

 

「もういい……最後に、オルコット」

 

「は、はい」

 

 

 ラウラに対しては少し甘い面が見られたが、セシリアに視線を向けた時の千冬は、完全に獲物を狙う肉食獣のものであった。

 

「お前もボーデヴィッヒ同様、見舞いに行くつもりだったと言ったが、何故こっそりと近づいたりした」

 

「前の三人がこっそりと一夏さんの部屋に近づいていたので、それが普通なのかと勘違いしました……」

 

「貴様は入学当初、一夏を目の敵にしてた前科があるからな……弱っている一夏にとどめを刺そうとしたのではないのか?」

 

「そ、そんなつもりはありませんわ! ちゃんと一夏さんを見舞おうと、おかゆを作って持って行こうとしただけですわ!」

 

「セシリア、アンタ確か……壊滅的な料理下手じゃなかったっけ?」

 

「失礼な事言わないでくださらないかしら、鈴さん。私だって日々成長しているのですわ!」

 

「じゃあ、何でアンタの作ったおかゆを一口食べた千夏さんが気絶してるのよ……織斑姉妹の片割れを気絶させるなんて、大量破壊兵器より危険よ!」

 

「セシリア、その武器をぜひドイツ軍で使わせてくれないだろうか」

 

「し、失礼な事言わないでください! これは武器ではなくれっきとした料理ですわ!」

 

「オルコット、貴様は今後一切料理を作ろうなどと思うな」

 

「あっ、復活した」

 

 

 今にも吐きそうな表情で起き上がった千夏が、セシリアを睨みつける。軽く生死の狭間を彷徨ったからだろうか、千夏からは未だに生気が感じられなかった。

 

「とにかく、貴様ら四人は一夏の部屋に侵入しようとした罪で罰せられる事になる。そうだな……まとめて相手してやるから、放課後第三アリーナに来るように」

 

「えっと、千冬先生対僕たち四人って事ですか? 千夏先生は戦える状態じゃないですし」

 

「本来なら千夏も戦わせたいところだが、この状況を鑑みナターシャに手伝わせる」

 

「ナターシャさんって確か、布仏先輩と同等くらいに強いんでしたっけ?」

 

「最近はISを動かしてないから、せいぜい更識妹か布仏妹レベルだとは思うがな。貴様ら相手ならそれくらいの実力があれば十分だろう」

 

「てか、普通に勝てないわよ……千冬さんだけでも嫌なのに、簪か本音レベルがもう一人相手にいるんじゃ、ボロボロになるの確定ですよ」

 

「そうじゃなきゃ罰にならんだろうが」

 

 

 こっそりと忍び込もうとした結果が、千冬とナターシャを相手にしなければならなくなったことに、四人は深く後悔したのだった。




結果は分かりきってるのでやりませんけどね……

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