暗部の一夏君   作:猫林13世

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会長も優秀なんですけどね……


優秀な生徒会役員

 織斑姉妹との、言葉にするのも恐ろしい昼食を済ませたマナカは、机に突っ伏していた。

 

「何があったの?」

 

「同じ血を引いてるとは思えない所業の連続だった……」

 

「まぁ、姉さまたちのスキンシップは過激極まりないから」

 

「過激で済まないでしょ、あんなの! お兄ちゃんも鬼畜だったんだ……」

 

「それくらいじゃなきゃ貴女のしてきたことへの罰にならないって言ってましたが」

 

 

 マドカの言葉を聞き、マナカはさらにガックリとしたようにマドカには見えた。何分机に突っ伏しているため、これ以上下がれないくらい肩は下がっているので、雰囲気で察するしか方法がないので、断言は出来ないのだ。

 

「兄さまの罰は貴女にも強烈なダメージを与えるものだったのですね」

 

「たぶん、お兄ちゃんが想像していた以上のダメージを負った気がする……」

 

「……私も悪い事をすれば、同じような目に遭うのでしょうか」

 

「てか、アンタも元亡国機業でしょ! 何で私だけあんな目に……」

 

「私は早々に捕まりましたし、束様の相手をするという罰を喰らいましたから……」

 

「そっちもそっちで嫌ね……」

 

 

 まだ一人相手だからマシかとも思ったが、束のぶっ飛んだ行動はマナカも知っているので、結局は疲れると言う事だけは理解出来たのだった。

 

「それで、そのお兄ちゃんは?」

 

「来月のトーナメントの細部を話し合うとかで、生徒会室へ向かいました」

 

「そう言えばお兄ちゃん、生徒会副会長なんだっけ」

 

「実質会長みたいなものですが、兄さまはあくまでも副会長だと言い張るでしょうね」

 

「IS学園の生徒会長って、学生最強の証なんでしょ? 奪い取ろうとすれば出来るんじゃないの?」

 

「刀奈さんから会長の立場を取ってしまうと、サボりに拍車がかかるそうなので」

 

「いっそのことクビにしたらどうなの……」

 

 

 マナカの率直な感想に、マドカも一度は思った事があると告げ、それでもクビになっていないという事実を伝えた。

 

「それだけ刀奈さんの能力が高いと言う事なのでしょうが、実際に作業している大半が兄さまと虚さんなので、刀奈さんの能力を正確に把握している生徒は多くないでしょうね」

 

「それでも文句が出ないって事は、相当な実力を有しているんでしょうね」

 

「刀奈様はやれば出来る人だからね~」

 

「本音……いつの間に」

 

 

 机に突っ伏していたから気づかなかったのか、マナカは本音が会話に割って入ってきた事に結構本気で驚いている。

 

「まぁ、細かい事は兎も角としても、刀奈様が本気を出せばIS学園に来る仕事の半分はすぐ片付くくらいだよ」

 

「では、何故常にだらけた雰囲気なのでしょうか」

 

「えっとね~、それ以上におね~ちゃんやいっちーが優秀だから?」

 

「何故疑問形……」

 

 

 本音の答えに、マナカもマドカもイマイチ納得できなかったが、一夏が優秀であると称されて悪い気はしないのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室でそんな事を言われているとは露知らず、一夏たちはトーナメントのルールを詰めていた。

 

「思いの外専用機を持たない人の参加希望者も多そうですね」

 

「まだ初日ですし、これから増えると仮定すれば、やはり専用機持ちとは別のグループで開催するべきでしょう」

 

「まさか半日でこれほど集まるとはね~。特に目ぼしい景品があるわけでもないのに」

 

「三年生にとっては、卒業前最後になるかもしれない大行事ですからね。思い出作りも兼ねているのかもしれません」

 

「そんなこと言っても、大半がIS関連業者に就職したりするんだし、それほど大きなイベントにするつもりもなかったのにな~」

 

「刀奈さんはただサボりたいだけでしょ」

 

 

 一夏に本音を見透かされ、刀奈はだらしなく座っていた椅子から落ちそうになった。

 

「虚さんは参加しないのですか?」

 

「私は別に、思い出作りは裏方でも十分出来ますし、更識企業の企業代表としてちょくちょく学園にも顔を出すことになるでしょうしね。企業代表から引退したら、教師として来ないかともお誘いを貰っていますし」

 

「いつの間に……まぁ、虚さんなら教師として十分やっていけるでしょうが、更識企業としては、優秀な人材を手放したくないんですがね」

 

「てか、虚ちゃんの進路は一夏君のお嫁さんで決まりじゃないの?」

 

「お嬢様!」

 

 

 刀奈の冷やかしに、虚は本気で照れたようで、顔を真っ赤にして刀奈を追いかける。追いかけられるのが分かっていた刀奈は、すぐに部屋中を走り回り、最終的に一夏の背後に隠れる事になったのだった。

 

「刀奈さんも、代表を引退した後の事は考えているんですか?」

 

「んー……私も一夏君のお嫁さんで決まってるけど、専業主婦は暇そうよね……てか、うちはお手伝いさんとかいっぱいいるから、家事の殆どはやってくれるでしょうしね……」

 

「なら、どこかの企業の社長でもやりますか? 全部俺が兼任でもいいんですが、優秀な人材を遊ばせておけるほど、IS業界は人材が豊富ではありませんので」

 

「なら虚ちゃんだっていいんじゃない?」

 

「虚さんは既に誘いがあるようですので、そちらを優先してもらった方が優秀な人材を育ててくれるでしょうし」

 

「まぁ、今は将来の話より来月のトーナメントの事を決めちゃいましょうよ」

 

「脱線の原因を作っておいて、刀奈さんがそれを言いますか……」

 

「まぁ、お嬢様ですし……」

 

 

 一夏と虚に呆れられたのを受けて、刀奈はもう少し真面目に取り組もうとする姿勢を見せたのだが、結局は一夏と虚が話し合いルールを決定したのだった。




一夏と虚と比べれば、誰だって優秀じゃなくなる……

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