暗部の一夏君   作:猫林13世

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箒問題も一段落しましたしね……


平和な日常?

 柳韻が箒を引き取り、改心させると意気込んでいったのを見送り、一夏と美紀は、ホッと一息ついたのだった。

 

「これで問題解決になればいいですね」

 

「そうだな。抱えていた問題の大半は、篠ノ之の事だったし、これが片付けば平凡とはいかなくとも、学園生活を送ることが出来るだろう」

 

「一夏さん、入学してから今日まで、まともな学園生活を送ってませんからね」

 

「そうだったか?」

 

 

 そもそもまともな学園生活とはどんなものなのか、一夏には見当がつかない。記憶を失ってからは、しばらく箒に付きまとわれ、中学に入学したころには、ISの研究などに時間を当てていたので、友達と遊んだりは最小限しか経験したことがない。そしてIS学園に入学してからは、怒涛の展開に振り回され、その解決に奔走していたら、今日まで経っていたという感じなのだ。

 

「刀奈お姉ちゃんの事ですから、何か計画してるかもしれませんよ」

 

「直近のイベントだと、もうクリスマスになるのか?」

 

「ハロウィンは間に合いませんしね」

 

「いや、あの人の事だから、既に用意してるかもしれん」

 

 

 そもそもは盛り上がるイベントではないのだが、刀奈なら何でもありだろうと言う事は、二人の中で共通の認識なのだ。

 

「一夏さんがコスプレしたら、またマナカさんや篠ノ之博士に盗撮されちゃいますね」

 

「何で隠れる必要があるのか、さっぱりわからんのだが……写真を撮りたいなら、普通に撮ればいいものを」

 

 

 昔ならともかく、束もマナカも気軽に一夏に話しかけられる状態にはあるのだから、写真くらい普通に撮ればいいというのが、一夏の考えだった。

 

「あの二人は盗撮する事に意味がある、とか言ってましたけどね」

 

「マナカもやっぱり織斑の系譜なんだな……マドカがいい子に育ってくれていて助かった」

 

「織斑と言えば、千冬先生と千夏先生のお給料はどうするんですか?」

 

「当分は二十パーセントカットでいいだろ。下手に金を渡すと、すぐに酒盛りするからな」

 

「そうですね。もう散らかされても掃除する人がいませんものね」

 

 

 前はダリルやフォルテに掃除させることが出来たが、次はその手が使えない。かといって本人たちに掃除させようとしても、余計に散らかる未来しか見えないのだった。

 

「こんな事で久延毘古の能力を使いたくなかったがな……」

 

「一夏さんも、多少てこずりながらも未来視を使えるようになりましたからな」

 

「かなり疲れるけどな……」

 

 

 香澄のデータを元に、一夏も未来視が使える武装を積み込んだのだが、やはり処理する情報が多すぎて疲労がたまりやすいのだ。

 

「いたいた、一夏君。来月なんだけど、中止になった文化祭をやってほしいって学長が」

 

「中止になったのは模擬戦だけだったような気がしますが……」

 

「だから、全校生徒に参加者を募って、トーナメント戦をやりたいんだってさ。現状の戦力を把握するのにもちょうどいいだろうからって」

 

「敵対勢力はもういないっていうのに、何で戦力を把握する必要があるんですか……」

 

「IS学園卒の国家代表が増えれば、入学者増が見込めるからって、経営的な問題らしいわよ」

 

「運営はこっちに丸投げなのに、ちゃっかりしてる」

 

 

 すぐさま頭の中で計画が可能かどうかを精査し、一夏は簪に電話を掛ける。

 

「参加者募集のポスター、すぐに作れるか? こういうのは本音が得意だったから、本音に構図は任せれば良いから。そうだな……十枚ほどあれば足りるだろうし、貼る場所とかは黛先輩に頼めば、良い場所を教えてくれるだろうから」

 

 

 手配を済ませた一夏は、細かなルールを決めるために刀奈を連れて虚の部屋へとやってきた。

 

「学長も急ですね……ハンディとかはどうするのでしょうか?」

 

「全校生徒参加可能だと言う事は、専用機持ちだろうが関係なく組み込むと言う事でしょうからね……一般の部と専用機持ちの部に分けた方が良いでしょうね」

 

「でもそれだと、アリーナを全部使っても一日で終わるかどうか……」

 

「参加人数が多い場合は、一試合を四人で戦わせればいいんですよ。そうすれば試合数も減りますし、ISを犯罪に使う集団が、これから先現れないとも分かりませんからね。多人数での戦闘にも慣れておく必要があるでしょう」

 

「今回は一夏君たちが事前に潰したからよかったけど、次も一夏君が現場にいるとも限らないもんね」

 

「亡国機業の一件で、更識は各国に傘下の企業を持つ事になりましたからね。代表である一夏さんが各国を飛び回る必要も出て来るでしょう」

 

 

 具体的な話し合いをしているところに、碧から連絡が入った。

 

「何か問題でも起こりましたか?」

 

『オータムが模擬戦に乱入してきたんですが、止めた方が良いでしょうか?』

 

「行き過ぎない限りは、自由にさせて構いません。もちろん、怪我を負わせるような事をすれば、叩き潰して構いませんので」

 

『承知しました。それと、スコールも参加したげなのですが』

 

「手が空いてる人と戦わせて構いませんよ。実力者を相手に訓練すれば、自然と成長するでしょうし」

 

 

 更識所属以外の候補生たちも、日に日に実力を伸ばしていると報告を受けているので、スコールとオータムを相手にしても、手酷くやられると言う事はないだろうと一夏は思っている。

 

「とりあえず後は参加者がどれくらいかによりますね」

 

「じゃあ、募集期間が終わったらまた話し合う感じで」

 

「お嬢様、生徒会の業務がまだ残っていますので、逃げ出そうとしないでくださいね」

 

「はい、分かってます……」

 

「俺も手伝いますよ」

 

 

 久しぶりに生徒会の業務を手伝えると、一夏は苦笑いを浮かべながら、刀奈を引きずる虚の隣を歩き、生徒会室に向かったのだった。




それでも?が付いてしまうのが、一夏の不運なのでしょうね……

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