暗部の一夏君   作:猫林13世

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やっぱり忘れてた……


最強の師匠

 衛星と情報を駆使して、一夏はとある人物を探し、そしてようやく発見したのだった。本当なら織斑姉妹か束に任せたかったのだが、更識家当主としてお願いした方が良いと刀奈たちに言われ、護衛の美紀と、提案者の刀奈を連れてその人物を訪ねる事にしたのだった。

 

「ごめんください。どなたかいらっしゃいませんか?」

 

 

 目的の場所に到着し、一夏は建物の中に人の気配を感じていながらもしっかりと声を掛けて相手の反応を待った。

 

「こんな人里離れた場所に客人とは珍しい。しかも、随分と出来る人たちのようだ」

 

「何の連絡もなく、突然押しかけて申し訳ありません。私は、更識一夏と申します」

 

「更識?」

 

「なにか?」

 

 

 一夏の顔を覗き込むようにしてから、一夏の名乗った苗字に首を傾げる男性。一夏としては、自分の事を知られていても不思議ではない相手なので、特に気にした様子は見せなかった。

 

「いや、知り合いに『一夏』という子がいてね。懐かしい名前だったからついつい顔を覗き込んでしまった。まことに申し訳ない」

 

「いえ、貴方が私の事を知っていても不思議ではないと、姉たちから聞かされておりますので」

 

「姉?」

 

「私の旧姓は織斑一夏ですので」

 

「では、やはりあの」

 

「貴方の思っている通りだと思います、篠ノ之柳韻様」

 

「様は止してくれ。そうか、あの一夏君だったか」

 

 

 一夏が訪ねたのは、束と箒の父親にして、織斑姉妹の師匠である篠ノ之柳韻だった。

 

「それで、こんな所まで私を訪ねてきた理由はなんだい? 君の事だから、ただ昔話をしに来たというわけでもないのだろ?」

 

「では、さっそく本題に入らせていただきますが、貴方に娘の指導をお願いしたく参上仕った次第です」

 

「娘? 君は確か箒と同い年のはずだが、もう子供がいるのかい?」

 

「いえ、私の娘ではなく、貴方の娘さん――篠ノ之箒の指導をお願いしたくてここに参りました」

 

「箒の? あの子はIS学園で勉学に励んでいるのではないのかい?」

 

 

 近況は知らされていないようで、柳韻は一夏の申し出に首を傾げた。

 

「美紀」

 

「はい、一夏様。こちらでございます」

 

 

 普段は敬語など使わなくて良いと言っている一夏だが、この時だけは立場をはっきりとさせた方が良いと言う事で、美紀は敬語を使い様付けで一夏の事を呼んだのだった。

 

「篠ノ之柳韻殿、こちらに貴方の娘である篠ノ之箒が、ここ数ヶ月でした事を纏めてあります。映像データもございますので、ご確認を」

 

「随分と物々しい雰囲気だが、あの子は何をやらかしたんだ?」

 

 

 一夏から資料を受け取り、柳韻はその資料に目を通して行く。次第に眉間に皺が寄り、信じられないものを見るような表情に変わっていく。

 

「これは、何かの冗談とかではないのだね?」

 

「残念ながら、全て事実です。束さんの協力もあり、全ての所業の映像を手に入れる事が出来ましたが、ご覧になられますか?」

 

「いや、止めておこう。君たちの雰囲気を見れば、これが嘘ではなく事実であると言う事は十分わかった」

 

「では、お願いできますでしょうか?」

 

「それは構わないが、ここまでの事をしたんだ。私などに頼まず君たちが手を下しても文句は言えないと思うのだが」

 

「何分人手不足なものでして。貴方が矯正してくださるのでしたら、まだ使い道はあると思うのですよ」

 

「随分と黒い事をあっさり言う子になったね、君は……昔はもっと素直で優しい子だったと思うのだが」

 

「昔の記憶はありません。それに今は、暗部の頭領として――大企業のトップとして、黒さも必要なのですよ」

 

 

 一夏の見せた黒い笑みに、柳韻は一夏がどのような生活をしてきたかを理解し、そして頭を下げた。

 

「我が娘が多大なるご迷惑をお掛けしたようで、この通り謝罪申し上げる。箒はもちろん、束も君の人生を狂わせてしまったようで」

 

「その二人が全てではありませんけどね。血縁の姉二人も、私の人生を大きく狂わせてくれましたし」

 

「千冬ちゃんと千夏ちゃんか……確かにあの子たちは、君の事を常に一番に考えていたからね……何か行き過ぎたことをするのではないかと心配していたのだが」

 

「不肖の姉の所為で、貴方様を悩ませていたとは……こちらも謝罪申し上げます」

 

 

 一夏と柳韻、互いに頭を下げ合い、互いに気にしないでくれと両手を振って謝罪は不要だと伝える。

 

「それで、今箒は何処にいるんだい?」

 

「既に身柄は確保しておりますし、IS学園の地下施設で厳重に監視しておりますのでご安心を」

 

「監視の方も、織斑姉妹をはじめとする優秀な人材が行っておりますので、これ以上ご息女が罪を重ねる事はないと思われますのでご安心を」

 

 

 一夏の言葉に美紀が補足説明を行い、柳韻の心を落ち着かせた。

 

「では、君たちは先に戻っていてくれ。私は車で向かうとしよう」

 

「いえ、貴方には一刻も早くIS学園に来てもらわなければいけませんので、私がIS学園まで運ばせていただきます」

 

「運ぶ? ISを無断で展開するのは違法ではなかったかね?」

 

「既に各国首脳に許可はもらっておりますし、それだけ重要な案件なのです」

 

「やれやれ、我が娘ながら情けない……どれだけの人に迷惑を掛ければ気が済むのだか」

 

 

 一夏の影響力にも驚きはしたが、それ以上に箒が迷惑をかけている事に頭を悩ませた柳韻は、一夏が展開したISの肩に乗り、IS学園まで向かったのだった。




疲れてて予約忘れてました……すみません

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