暗部の一夏君   作:猫林13世

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やはり織斑のDNAは……


マナカも同類

 一夏が自分たちの給料を減らそうとしてるなどと露知らず、千冬と千夏は専用機で移動しながら箒の行方を捜していた。

 

「やはり旧式のISのレーダーでは範囲が狭いな」

 

「しかし、一夏が大怪我を負った原因を造りだしたバカ箒を野放しにしておくわけにもいかないだろ。わたしはあちら側を探すから、千冬は向こう側を頼む」

 

「了解した」

 

 

 マドカのアジトからそう離れていない場所をくまなく探すが、もちろんそんなところに箒の姿など無い。いくら脳筋だからとはいえ、バレた可能性が高いアジトのすぐ傍に身を隠すようなことは箒でもしなかった。

 

「仕方ない、一度学園に戻って束に相談でもするか」

 

「一夏たちも、そろそろ意識を取り戻しているかもしれないしな」

 

 

 周辺の捜索を終え、二人はIS学園に帰還する事に決めた。索敵は得意だが、何時までも先行して動くのはお説教の対象になると考えたのだろうが、その考えは遅すぎたのだった。

 学園に戻り、一夏たちが搬送された医務室を覗き込むと、難しい顔をしている一夏と、その横顔に見とれているマドカとマナカの姿があり、千冬と千夏は一瞬にして身もだえたのだった。

 

「私たちの弟も妹も、こんなにかわいいとは」

 

「今すぐ抱きしめたい! スリスリしたい! ぺろぺろしたい!」

 

「……変態思考がダダ漏れていますが」

 

 

 千冬と千夏の背後に現れた碧が、呆れているのを隠そうともしない口調で声を掛け、二人を医務室内に連れ込んだ。

 

「一夏さん、やはり独立派が使っていたアジトにも、篠ノ之箒の姿はありませんでした」

 

「そうですか。スコールの話では、あの廃屋には電波が届かないそうですので、身を隠すだけで満足しないであろう篠ノ之が使う可能性は低かったですからね。ところで、貴女たちは何故ここに?」

 

 

 碧かの報告を受け、リストに線を引いてから一夏は織斑姉妹へと視線を向けた。

 

「一応私たちも報告にな。マナカが使っていたアジトの周辺、約五キロ四方に篠ノ之の気配は無かった」

 

「それから、マナカのアジトにあるとされていた秘蔵の一夏コレクションだが、篠ノ之が盗み出した可能性が高いな」

 

「そんな……データは持ち歩いてるから問題ないけど、現像した写真とかを盗まれたというの?」

 

「くまなく探したが、発見する事は出来なかった」

 

「何探してるんだよ……」

 

 

 独断専行ではあったが、四方五キロを探索したとなると、それはそれで役に立ったと思えるくらいの成果だったのだが、その後に余計な事をしていたと言う事も分かり、一夏は結局呆れたようにため息を吐いたのだった。

 

「姉さま、その兄さまのコレクションというのは?」

 

「マナカが幼少期から監視衛星をハッキングして隠し撮りした一夏の成長記録写真だ」

 

「束曰く、自分よりアングルの良い写真があるとの噂だ」

 

「何処で知ったのよ、そんなの」

 

「重要なのはそこではない! 一夏の成長記録をバカ箒が盗み出したと言う事はだ、一夏の大事な部分をバカ箒は視れると言う事なのだぞ」

 

「くっ、私しか見ないと油断して加工してなかった写真がいっぱいあるというのに……まぁ、そっちは別のパスワードだから、盗まれる心配は無いんだけど」

 

「マドカ、お前は聞かなくていいからな」

 

「あの、兄さま……何も聞こえないのですが」

 

 

 変態三姉妹に巻き込まれないよう、一夏は碧にアイコンタクトで指示を送りマドカの耳を塞いだ。

 

「聞き捨てならないことを言ったな。今、一夏の無修正の写真があると言ってなかったか?」

 

「当然あるに決まってるでしょ。私が持ち歩いている元データにだって、修正なんてかけてないんだから」

 

「そのデータを寄越せ!」

 

「誰がアンタなんかに……痛っ!」

 

「怪我人に襲いかかるな、馬鹿者が!」

 

 

 マナカが隠し持っているデータを探そうと、千冬と千夏はマナカに襲いかかり、そして一夏にカミナリを落とされたのだった。

 

「言い忘れていたが、あんたたち二人の仕事を肩代わりさせられた山田先生に、貴女たちに支払われるはずだった給料の一部を振り込みますので、そのつもりで」

 

「ま、待て! 私たちはバカ箒の捜索の為に出かけていたんだ」

 

「真耶にはわたしたちの代わりをお願いしたんだ。決して押し付けたわけではない」

 

「と本人たちは証言していますが、実際はどうだったんですか?」

 

 

 廊下に声を掛ける一夏に首を傾げた二人だったが、刀奈と虚が連れてきた人物に目を見開いた。

 

「真耶だと……気配など感じなかったぞ」

 

「そりゃ私がお兄ちゃんの為に、そこの女の気配を偽ったから。アンタたちに見破れなくて当然」

 

「それで、実際はお願いされたんですか? それとも、押し付けられたんですか?」

 

「えっと……」

 

 

 千冬と千夏に恐怖を覚えながらも、一夏がいるからと小さく頷いて、真耶は証言を始めたのだった。

 

「お二人はお願いしたつもりなのかもしれませんが、あれは半ば強制でした。しかも、常日頃から溜め込んだ仕事を、これ幸いと私に任せて、自分たちは更識君のその……写真を探すつもりだと喋ってたのを聞いたのです」

 

「と仰ってますが、何か弁明はありますか? あるなら、聞くだけ聞いてあげますが」

 

 

 目が笑っていない笑みを向けられた二人の姉は、その後こっ酷く怒られたのだが、その事を誰も証言する事は無かったのだった。




群を抜いて変態な気がする……

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