暗部の一夏君   作:猫林13世

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ここまでくると、変態という言葉で片づけて良いのかどうか……


変態の実力

 マナカ対策を束に頼み、一夏は目の前で正座している織斑姉妹に視線を向けた。

 

「貴女たち姉妹の変態行為は遺伝なのですか?」

 

「知らん。だいたい、私たちはマナカほど酷くないだろ」

 

「そうだぞ、一夏! 私たちは精々お前が子供の頃の入浴シーンを録画し、繰り返し見ていたくらいだ」

 

「十分変態じゃないですか……」

 

 

 美紀が呆れたように告げると、二人は驚いた表情を浮かべた。

 

「この程度、可愛いものじゃないのか!?」

 

「束など、一夏の老廃物をコレクションしてたんだぞ!」

 

「そんなこと聞きたくなかったですよ……てか、何時からそんな変態行為をしてるんですか、貴女たちは」

 

「「そんなの、お前が生まれてからに決まっているだろう!」」

 

 

 何当たり前のことを聞くんだ、と言わんばかりのテンションに、一夏は頭を押さえ背後に隠れているマドカの頭を撫でた。

 

「兄さま?」

 

「マドカは良い子だなと思っただけど。もう少し撫でさせてくれ」

 

「はい……兄さまの気のすむまで」

 

 

 千冬、千夏、マナカと変態思考の姉妹の中で、唯一マドカだけがまともだと一夏は改めて感じていた。多少甘えん坊なところはあるが、離れて暮らしていた分、今甘えているのだろうと割り切る事が出来る。

 だが、千冬たちとマナカの行為は、一夏の中でどう変換しても変態行為としか思えないのだった。

 

「さて、とりあえずは後一時間は正座で反省しててくださいね」

 

「私たちは何を反省すればいいんだ? ゴミをちゃんと回収場所に出さなかった事か?」

 

「それとも、一夏を生まれた時から性的な目で見てた事か?」

 

「……とりあえずは、ゴミの件を反省してください。異常性癖の件については、全てが片付いた時にまとめて反省してもらいますから」

 

「姉さまたちも、異常性癖だと理解しているのでしたら、少しくらい反省出来るのではないでしょうか?」

 

「「いや、私(わたし)たちは異常だとは思っていないが、世間から見たらおかしいんだろうなというだけだ」」

 

「……ほんと、マドカが良い子に育ってくれて良かった」

 

 

 変態二人を部屋に放置して、一夏はマドカと美紀を連れて自室へ戻る事にした。

 

「兄さま、何時までこうしてるのです?」

 

「そうだな。マドカ、今日はもう休んでいいぞ」

 

「いえ、兄さまを部屋までお送りするまでは一緒にいます」

 

 

 しっかりと護衛の任を勤め上げる気概を見せるマドカを、一夏は慈愛顔で見つめる。多少妹に甘いところがある一夏も、やはり織斑の人間なのだろうと美紀は一歩下がった場所で眺めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏と美紀が部屋に戻ってくると、何故か刀奈と虚、そして簪が部屋で寛いでいた。

 

「なぁ、美紀……」

 

「何でしょうか、一夏さん」

 

「ここって俺たちの部屋だよな?」

 

「私たちの知らない間に部屋替えが行われていないのでしたら、間違いなく私たちの部屋ですね」

 

 

 あまりにも寛いでいる刀奈と簪を見て、一夏はてっきり部屋を間違えたのではないかと思い美紀に尋ねた。無論ここが自分たちの部屋であることは一夏も理解してるので、美紀の答えに特に驚いたリアクションはしなかった。

 

「お帰りなさい、一夏君。ごはんにします? お風呂にします? それとも、わ・た・し?」

 

「……ふざけてないで、何か用があったから来たんですよね?」

 

「もう、ノリが悪いわね~。まっ、そこが良いんだけど」

 

「お嬢様がふざけてるのは何時もの事ですので」

 

「そうでしたね」

 

 

 虚のコメントに一夏があっさり同意した事に、刀奈は不満の表情を浮かべたが、このまま続けると二人に怒られると理解しているのか、真面目な表情を浮かべた。

 

「さっき実家から連絡があったんだけど、亡国機業の穏健派が壊滅したらしいのよね」

 

「マナカ、ですかね……」

 

「調査した人の意見だけど、少なくとも無人機の仕業ではないそうよ。明らかに人の意識が介入した壊し方だって」

 

「穏健派は専用機を持ってなかったと聞いていたが、その辺りはどうなんだ?」

 

「現在調査中です。ですが、生存者無しの大量虐殺が行われたのを見ると、抵抗の手段が無かったのではないかと」

 

「少なくとも、ISに生身で立ち向かえるのはあの変態姉妹と駄ウサギくらいですからね」

 

 

 一夏のコメントに、刀奈たちも頷いて同意する。表現は兎も角として、ISに生身で立ち向かうなんて事が出来るのは、あの三人しかいないのだ。

 

「独立派の四人――いや、フォルテ先輩は知らないだろうから三人ですね。詳しい話を聞きたいので部屋に来てもらいましょう。碧さん、ダリル先輩をこの部屋に連れてきてください」

 

「かしこまりました、一夏様」

 

「……いつも通りで構いませんよ」

 

 

 当主の命に応えるべく、碧は呼び方を変えた。だが、一夏としては命じたわけではなくお願いしたわけなので、畏まられるとかえって一夏の方がしっくりこないのだった。

 

「簪と虚さんは、スコールとオータムを呼んできてください」

 

「了解」

 

「では、お嬢様をお願いします」

 

「別に何もしないわよ!」

 

 

 イマイチ信頼されていないと実感している刀奈は、不貞腐れたように虚の言葉に噛みつく。だが相手にされる事なく流されて不満だったのか、頬を膨らまして一夏に飛びつこうとしたのを、簪に叩き落とされ床に倒れ込んだのだった。




束なら本当にやりかねないと思えるのが怖い……

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