暗部の一夏君   作:猫林13世

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やはり彼女たちも戦闘狂……


追加の対戦相手

 スコールとオータムが模擬戦をしていると聞きつけ、ダリルとフォルテは一夏の部屋を訪ねる事にした。

 

「何処へ行くのかしら?」

 

「ちょっと更識君に話があるので、部屋を訪ねようと思いまして」

 

「一夏さんに用事、ですか? 連絡しますのでちょっと待ってて」

 

 

 二人の監視を担当している碧が、一夏に電話を掛け確認すると、すぐにOKが出たのか碧が二人を部屋まで連れて行くことになった。

 

「一夏さん、碧です。二人を連れてきました」

 

『開いてますので、入って来てください』

 

 

 一夏の返事を待ってから、碧は二人を部屋に引き入れる。何の用事なのかは分からないが、一夏に危害を加えるかもしれない二人をこんなに簡単に部屋に招き入れる行為は、碧からしてみれば警戒心が薄いのではないかと心配になる行動だった。

 もちろん、一夏が何も考えていないわけはないし、何かあれば護衛の自分たちが何とかすると信頼してくれているからこそ一夏は二人を招き入れたのだろうと理解しているが、それでも少し警戒心が薄いように碧には感じられたのだった。

 

「そんなに心配しなくても、二人は大丈夫ですよ」

 

「そうだと良いのですが……特にダリルさんは、爆発物を学園内に持ち込んだ前科がありますし」

 

「もう持ってないわよ。そもそもあれだって、オータムが用意してくれなかったら出来なかったんだから」

 

「分かりました。警戒のレベルは下げます」

 

 

 碧から発せられていた殺気が薄まり、フォルテは漸く安心したような表情に変わった。

 

「それで、何の御用でしょうか?」

 

「スコールとオータムが模擬戦をしたと聞いてね。私たちも少しくらいストレスの発散がしたいと思って、お願いにきたのよ。ゴミ拾いもしっかりやるけど、それだけじゃストレスが溜まっちゃうもの」

 

「まだ三日目ですよ? 大変なのは理解出来ますが、それほどストレスが溜まるとは思えないのですが」

 

「普通に掃除してる分には、確かにストレスは溜まらないわよ。でもね、更識君。一日中監視されながら掃除してれば、通常の三倍以上ストレスが溜まるの。それでいてスコールとオータムが模擬戦をしたのに、私たちはせっせと掃除をしなければいけないと思うと、更にストレスが溜まっちゃうのよ」

 

「そうですか……では、放課後はお二人も模擬戦の相手を務めてもらいましょうか。元代表候補生二人が相手となれば、対戦したい人も多いはずですし」

 

「でも一夏、更識所属でこの二人と戦わせるとなると、かなり大変じゃない?」

 

「まずは静寐や香澄といった経験の浅い人たちからだな。その後、エイミィや本音たちも徐々に加えていけばいいだろ。スコールやオータムもいるんだし、その辺りはローテーションで」

 

 

 既に計画に組み込まれていたと知り、ダリルは素直に脱帽した。一夏はただの学生ではないと理解していたが、これほどまでに人を使うことに慣れているとは思っていなかったのだ。

 

「更識君って本当に凄いわね。私たちが文句を言いに来ると分かってたみたいだし、それを上手く利用して自分たちの戦力増強に繋げてる」

 

「一応その人の人生を預かってる身としては、少しでもいい結果に繋がるように常に考えているんですよ。先輩たちだって、戦ってストレス発散出来るなら文句ないですもんね」

 

「それじゃあ、明日からは私たちも模擬戦に加わるって事で。それじゃあ、私たちは大人しく部屋で休んでるわね」

 

「そうですか。碧さん、お願いします」

 

 

 まだ二人を全面的に信用出来ない生徒が多いので、二人が移動する際には必ず碧が同行する事になっている。碧が同行出来ない時は、無人機が二人を監視しているので、とりあえずはIS学園内に安心感が漂っているのだった。

 

「それじゃあね、更識君」

 

「お邪魔しました」

 

 

 ダリルとフォルテが会釈をして部屋から去っていくと、部屋で話していた美紀と簪が一夏の隣に腰を下ろした。

 

「一夏、ダリル先輩の事苦手でしょ?」

 

「まぁな。なんとなく雰囲気がオータムに似てるから、少し身構える」

 

「ダリル先輩もなんとなく分かってるみたいですし、必要以上に一夏さんに近づこうとはしてませんしね」

 

「でも、あの人もSっぽいから、一夏が怖がってるのを面白がってもっと近づいてくるかもしれない。油断は出来ない」

 

「俺に必要以上近づけば、簪や美紀が黙ってないだろ? だから俺も必要以上に身構える事無く会話出来てるんだが」

 

 

 自分一人で会話しようものなら、数分で幼児退行してもおかしくないくらいだと、一夏は自己分析していた。だからわざわざ簪を部屋に呼び、それから二人を迎え入れたのだった。

 

「一夏から部屋に来るように言われた時は何事かと思ったけど、本音じゃ役に立たないもんね」

 

「碧さんから電話を受けて、すぐ美紀に連絡を頼んで正解だった。やっぱりあの人の雰囲気は苦手だ」

 

「でも、一夏さんのトラウマもだいぶ薄れてきたのではありませんか? 一学期のように私のベッドに潜り込んでくる回数もかなり減りましたし」

 

「あの時の原因は殆ど篠ノ之だったからな……アイツがこの場にいたら、たぶん今でも夜な夜な美紀の世話になっていたと思う」

 

「美紀、ズルい……一夏、今度一緒に寝ようね」

 

「だんだん刀奈さんに似てきたな、簪も……」

 

 

 苦笑いを浮かべながら、一夏は簪に礼を言い消灯時間まで三人でまったり過ごしたのだった。




姉妹だから、似るんでしょうね……

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