暗部の一夏君   作:猫林13世

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現実世界でのいい方法ありませんかね……


ストレス発散

 模擬戦を終えた刀奈たちは、ピットから更衣室へと移動し総括をしていた。

 

「やっぱり私も虚ちゃんもペア戦には慣れてないから、若干の連携ミスがあったわね」

 

「でもよ、正式なペアじゃねぇのにあれだけ動ければ十分だと思うがな」

 

「そうでしょうか? そちらのISに制限が掛けられているから勝てましたが、本来の動きをされていたら私たちが負けていた可能性の方が大きいと思います」

 

「そりゃ、私とオータムは長年ペアを組んで動いていたから、主従関係とはいえペアを組んでなかった貴女たちに連携で負けはしないわ。でも、貴女たちはIS操縦者として高い技術を持っているから、多少連携にミスがあっても、それがイコールで隙に繋がらないのよね。それってかなりの強みだと思うわよ」

 

 

 スコールに褒められ、刀奈と虚はまんざらでもなさそうな表情を浮かべた。

 

「刀奈さんも虚さんも、個人での技能は他の追随を許さないくらい高いものを持っていますからね」

 

「あら一夏。一応ここは女子更衣室なんだけど?」

 

「この学園の施設に、男子用があるとは思わないんだが。精々トイレくらいだろ」

 

「一夏君しか男の子がいないものね」

 

「そもそもISを動かせる野郎がお前だけだもんな」

 

 

 オータムの言葉に、他のメンバーも頷く。

 

「枷をつけた程度じゃお前たちの戦闘力を大幅に削る事は出来ないな」

 

「これでも大分キツイんだけどね。それを感じさせないように頑張ったから、一夏がそう感じたんだと思うわよ」

 

「てか、オレたちが本気なら、二対二で負けるはずもねぇからな」

 

「なら枷を外して織斑姉妹とやるか? あの二人なら喜んで相手してくれると思うぞ」

 

 

 一夏の提案に、オータムは全力で拒否を叩きつけた。さすがのオータムでも、織斑姉妹とはやり合いたくないらしい。

 

「刀奈さんと虚さんから見て、二人はどうでしたか?」

 

「そうですね……簪お嬢様や美紀さんなら十分に渡り合えるとは思いますが、他の方ですと少し厳しいですね」

 

「特に、本音やマドカちゃんだとかなり苦戦すると思うわよ。マドカちゃんはそれ以外にも問題はあるけど」

 

「元同僚ですものね。マドカの方にも精神的なしこりはあるでしょうし、対戦させるのはもう少し時間をおいてからの方が良いでしょう」

 

「なぁ一夏。オレたちもVTSを使いたいんだが、お前が調整してるんだろ? 何とかしてくれよ」

 

 

 オータムのお願いに、一夏は少し腕を組んで考えてから返答する。

 

「学園内を自由に動かれるのはまだ早いからな……VTSに関しては当分の間ポータブル版で我慢してくれ」

 

「あれだと訓練って言うよりゲームって感覚になるんだよな」

 

「贅沢言わないの。本当だったら私も貴女も国際裁判にかけられて向こう数十年は自由に行動する事が出来なくなっててもおかしくないんだから」

 

「でもよ、何時までも部屋でジッとしてるなんて、オレには向かないってスコールだって分かってるだろ」

 

「なら、別の運動でもしましょうか?」

 

 

 スコールの提案に、オータムは恥ずかしそうに視線を逸らした。その反応を見て、一夏は二人が何をしようとしてるのか理解し、呆れたのを隠そうともしない態度で釘を刺した。

 

「原則何をしようが構わないが、一応学園内であることを忘れるなよ? 生徒の情操教育上よろしくないと判断されたら、織斑姉妹の制裁が入るかもしれないからな」

 

「愛の形は人それぞれよ」

 

「だから、バレないようにやれと言っているんだ」

 

 

 そう言い残して、一夏は美紀と簪を連れて更衣室を後にした。刀奈と虚も二人に配慮したのか、一夏の後に続くように更衣室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室に戻ってきた刀奈たちは、席に座っている一夏に視線を向けた。

 

「なんです?」

 

「バレないようにって言っても、相手は織斑姉妹よ? すぐにバレるんじゃないかしら?」

 

「行き過ぎない限り、自由にさせるよう言ってありますので、バレたとしても問題は無いですよ」

 

「じゃあ何故バレないようにしろと言ったの? 最初からバレてるって分かってれば、あの二人もそれなりに対処すると思うんだけど」

 

 

 簪の質問に、一夏は興味なさげに真実を告げた。

 

「最初からバレてると教えると、あの二人は恐らく加減しないだろうからな。だからバレないようにしろと言う事で、少しは加減すると判断した」

 

「なるほど。でも一夏、同性愛を否定するわけじゃないけど、あまり過激だと困るんじゃない?」

 

「そうよ。ただでさえ簪ちゃんはそう言うことに興味津々なお年頃なんだから」

 

 

 刀奈の言葉に、簪は慌てて否定の言葉を重ねた。

 

「私は別に興味ないよ? でもさ、他に興味がある人がいるかもしれないじゃない? 例えば、ダリル先輩とフォルテ先輩だってそう言った関係なわけだし」

 

「簪、何でそんなに早口になってるんだ?」

 

「と、特に理由は無いよ」

 

「まぁ、深くは言及しないが」

 

 

 簪の趣味に口を挿むつもりは、一夏にも刀奈にも無い。だが簪が必要以上に反応したので、一応追及しただけなのだ。

 

「好き好んで寮長室の隣の部屋を訪ねるヤツもいないだろうし、ストレスを溜め込まれると面倒だからな」

 

「適度に発散させる程度なら、織斑姉妹も目を瞑ってくれるでしょうしね」

 

 

 これ以上簪が墓穴を掘らないように、一夏と刀奈がそうまとめてこの話題を終わらせたのだった。




溜まる一方で、発散する方法が中々……

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