暗部の一夏君   作:猫林13世

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色々と使えそうですね


スコールとオータムの使い道

 大人しく反省していたオータムだったが、日が経つにつれてイライラを募らせていた。トイレに行くにも許可が必要な現状で、ストレスを発散する事も出来ず、ただただ裡に溜め込むしか無かったので仕方は無いのだが、そろそろ限界だとスコールは感じていた。

 

「オータム? 分かってるとは思うけど、暴れちゃ駄目だからね」

 

「分かってるっての……でもよ、大人しくしてるなんてオレに向いてねぇんだよ」

 

「まだ三日目よ? もう少し辛抱出来ないのかしら」

 

「これでも十分辛抱してるぜ? 以前だったらこの部屋吹き飛ばしてるくらいだ」

 

「SHと組んでた事で、忍耐力が身に着いたのかしら? それでも、三日が限界のようね」

 

 

 箒とオータムを組ませたのは、他に扱える相手がいなかったのもあるが、オータムに忍耐力をつけさせる意図も含まれていたのだった。それでも、三日我慢して限界を迎えてしまうくらい、彼女は短気だったのだ。

 

『更識一夏と護衛一名、入ってもいいか?』

 

「どうぞ」

 

 

 オータムがイライラしているところに、一夏が部屋を訪ねてきた。一人だとトラウマが発動するかもしれないので、最低でも護衛は一人つけているが、基本的に二人の話し相手は一夏が務めているのだ。

 

「おい一夏! いい加減動きたいんだが」

 

「まぁそうだろうな……ポータブルタイプのVTSじゃ満足出来ないだろうとは思ってたから」

 

「なら暴れさせろ! 少しでも身体を動かさないと部屋を破壊しそうなんだが」

 

「……暴れるという表現はいただけないが、更識所属を相手に模擬戦なら認めよう」

 

「本当か!?」

 

 

 外に出られるという事で、オータムは一気に表情を晴れやかにした。

 

「二人の専用機はこちらで弄らせてもらったので、少しばかり動きにくいと感じるかもしれないが、当分は我慢してくれ。安全だと判断した時には元に戻すから」

 

「それでも構わないぜ! 漸くこの退屈な空間から抜け出せるぜ」

 

「まずは刀奈さんや虚さんの相手をして、お前たちが敵対の意思なしと判断してから、他の更識所属の相手、いずれは普通の生徒の訓練相手などを務めてもらう予定だ」

 

「つまり、私たちは実戦の相手としてIS学園に組み込まれると言う事かしら?」

 

「これで罪が清算出来る訳じゃないぞ? 退屈だと暴れられたら面倒だから仕方なく、だからな」

 

「分かってるっての! さっそくやろうぜ!」

 

 

 勢い勇んで部屋から出て行こうとするオータムに、スコールと一夏は呆れた視線を向ける。

 

「やる気になってるところ悪いが、まだ昼休みで授業はまだ残ってるんだよ。だからもう少し我慢してくれ」

 

「っち、学生は面倒だな……あと二時間くらいか? 仕方ねぇな」

 

「とりあえず専用機は返しておく。間違っても逃げ出そうとか考えるなよ」

 

 

 釘を刺して、一夏は部屋から去っていく。久しぶりに専用機を手にしたオータムは、早く動かしたいとそわそわしていた。

 

「あー早く餓鬼共をぶちのめしたいぜ!」

 

「あくまでも訓練よ。本気で叩きのめしたらダメだからね」

 

「分かってるっての」

 

 

 スコールからも釘を刺され、オータムは自分はそこまで餓鬼じゃないと不貞腐れベッドに倒れ込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後になり、刀奈と虚がスコールとオータムの二人と模擬戦をしてるのを、一夏は美紀と簪を引き連れてモニタールームで観戦していた。

 

「一夏が付けた枷、上手く機能してるみたいだね」

 

「それでも二人と互角なんだから、やはりレベルが高いんだろうな」

 

「普通にどこかの国の代表でもおかしくないですからね」

 

「一応亡国機業の幹部だからな。それなりに強いのは知っていたが、刀奈さんや虚さんと互角とはな……碧さんや織斑姉妹がいなかったら危なかったかもな」

 

 

 何度か襲われた時、碧や織斑姉妹がいたから撃退出来たと、一夏は改めて実感していた。もしその三人がいなかったら、そう考えると己の未熟さが情けなくさえ思えたのだった。

 

「俺ももう少しくらい戦えるようにならないとな……」

 

「一夏さんの事は私たちがお守りします。ですから、安心してください」

 

「何時までも守られるだけじゃ情けないからな。少しくらいカッコつけさせてくれ」

 

「一夏は十分カッコいいよ」

 

「そう言う事じゃないんだが……まぁ、ありがとな」

 

 

 簪の言葉に恥ずかしそうに頭を掻いて、一夏はモニターに視線を戻した。上手く枷が機能しているので、スコールもオータムも若干精彩を欠いているように見えるが、それでも十分模擬戦の相手を務めている。

 

「これは思わぬ拾い物をしたかもしれないな」

 

「戦力アップもですが、底上げも出来そうですね」

 

「織斑姉妹に頼むと、どうしてもあの二人が暴れる未来しか見えないからな……この二人なら他のメンバーでも太刀打ち出来る」

 

「実戦経験の少ない静寐や香澄、エイミィなんかでも相手出来そうだしね」

 

「そもそもISの実戦は禁止されてるんだけどね。競技としての経験も浅いし、他の人も実戦に近い感覚で模擬戦を出来るし、そういう意味では簪ちゃんの言う通りだね」

 

「ナターシャさんにも手伝ってもらえるだろうし、後はアリーナの使用時間を確保出来れば、十分戦力の底上げが出来るな」

 

「あっ、お姉ちゃんたちが勝った」

 

「模擬戦終了。各自ピットに戻ってください」

 

 

 一夏のアナウンスで、四人はピットへと戻っていく。模擬戦が終わったので、一夏たちもモニタールームからピットへと移動するのだった。




実力者ですし、戦力の底上げに利用できます

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