暗部の一夏君   作:猫林13世

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ほんとにもう、あの二人は……


ゴミの出所

 自分が不在の間に罰が決まっていた事に、刀奈は少し不満を抱いていた。生徒会長として、最終判断は自分が下すつもりだったのに、一夏がさっさと決めてしまったからだ。

 

「一夏君にとって、私ってなんなの? ただの飾り?」

 

「別にそんなつもりはありませんが……そんなに刀奈さんが仕事熱心だったとは思わなかったもので……次からはしっかりと仕事を残しておきますので」

 

「そう言う事じゃないわよ! てか、出来る事なら仕事はしたくないわよ」

 

 

 刀奈のぶっちゃけに、一夏と美紀が苦笑いを浮かべ、虚が頭を押さえる。

 

「そうじゃなくて! 危険人物に対する罰なんだから、生徒会長である私が決定した方が他の生徒を安心させられるでしょ?」

 

「書類上は刀奈さんが決定した事になってますので、不安を取り除く分には問題ないと思いますが」

 

「そうなの? でも、私は何も聞いてなかったんだけど?」

 

「ついさっき決めて、学長に許可を取り下した罰ですから、授業に出ていた刀奈さんが知らないのは当然です」

 

「学長も、何で一夏君からの電話で許可しちゃうのかしら……いっそのこと生徒会長の座を一夏君に明け渡しちゃダメかしら」

 

「俺は刀奈さんに勝てませんから」

 

 

 IS学園の生徒会長の座は、学園最強の証であり、戦闘面では一夏が刀奈に敵うはずもない。ましてや一夏は刀奈以上に忙しい身なので、生徒会長の座を受け入れるはずも無かった。

 

「とにかく、ダリル・ケイシーとフォルテ・サファイアへの罰則は一夏さんが決めてくださいましたので、お嬢様はこちらの仕事を終わらせてください」

 

「何でこれだけは残ってるのよ……こっちも終わらせてくれたって良かったじゃないの!」

 

「そちらの書類は、生徒会長の認印が必要なものですので、俺や美紀が終わらせることの出来ないものですから」

 

「認印の場所知ってるんだから、代わりにやってくれてもいいじゃないの~!」

 

「それじゃあ意味が無いでしょうが」

 

 

 一夏の言葉に、刀奈はガックリと肩を落とし書類に認印を押していく。その横では一夏の淹れた紅茶を美味しそうに飲む虚と美紀が刀奈の仕事を監視していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 罰則が決まり、さっそく清掃を始めたダリルとフォルテは、IS学園の広大な敷地を目の当たりにして決心が揺らいでいた。

 

「地図では確認してたけど、これほど広いとは思ってなかったわね」

 

「端が見えません……」

 

 

 とりあえず正門付近からと決め、いざ清掃を始めたはいいが、どれだけ掃いても、どれだけゴミを拾っても終わりが見えてこない。むしろ、まだ殆ど終わっていないという現状を受け入れるしかなかった。

 

「周りだけ清掃しても意味ないものね……中庭や裏庭なんかも掃除しなければいけないのだし」

 

「軽い罰だと思ってましたが、かなり重労働ですね……」

 

「おまけに監視までついてるから、サボるわけにもいかないからね……休憩を挟みつつ、ゆっくり進めてくしかないわね」

 

「業者がしっかり清掃してくれていれば、こんな罰ではなかったかもしれませんのに……」

 

「まぁ、織斑姉妹の相手、とかそういった罰じゃないだけマシなのでしょうけども。更識君の性格からするに、それくらいありえると思ってたから」

 

 

 反省を促すには、それくらいした方が早いと一夏も理解しているし、織斑姉妹もかなりやる気を見せていたので、清掃が無かったら恐らくはダリルの想像通りの罰になっていた事だろう。

 

「てか、誰がこんなに散らかしてるのかしら?」

 

「清掃業者の人間とは考えられませんかね? 掃除したはずなのに、これほど散らかってるのですから、可能性はあると思います」

 

「あまり無駄口叩いてると、一夏さんに報告しますよ?」

 

 

 全く気配を感じさせずに現れた第三者に、ダリルとフォルテは思わず戦闘態勢を取った。

 

「何だ、小鳥遊先生ですか」

 

「無人機だけに監視を任せるわけにはいかないもの。見回りを兼ねて見に来たらそんなことを言ってたから」

 

「ですが小鳥遊先生。業者が清掃してるにも関わらずこの散らかりよう、犯人を知りたいと思うのも当然だと思いますが」

 

「大半は鴉や野生動物たちが散らかしたものよ。空き缶とかは、織斑姉妹が捨てるのを怠って回収場所以外に置いたものを動物たちが散らかしたのだけどね」

 

「つまり、大半は織斑姉妹が原因だと言う事ですか?」

 

「犯人と呼べる人間を導き出すのなら、そういう事ね」

 

「……とりあえず片づけましょうか。文句を言うのは、全て回収した後更識君に付き添ってもらってからでも出来るんだし」

 

 

 ダリルの考えに、碧も頷いて同意する。

 

「確かに、一夏さんが同伴していれば、織斑姉妹も大人しく言う事を聞くでしょうし、証拠物件があるなら言い逃れも出来ないでしょうしね」

 

「というか、この無人機は映像をモニターに表示できるように改良されているんですから、小鳥遊先生がわざわざ見に来る必要は無かったのではないでしょうか?」

 

「いったでしょ? 無人機だけに押し付けるわけにはいかないって。周辺の警戒も兼ねての見回りだから、貴女たち二人が気にする事じゃないわよ。というか、私の事を気にしてる暇があるのなら、さっさとゴミ拾いを進めた方が良いと思うけど? これが終わらないと、自由になれないんでしょ?」

 

 

 碧の言葉に奮起したのか、ダリルとフォルテは物凄い速度でゴミ拾いと清掃を進め、一日で四方の一辺を終わらせたのだった。




きっちりと反省させなきゃダメですね、これは……

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