暗部の一夏君   作:猫林13世

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使えるものは何でも使う


無人機の使い道

 IS学園に戻ってきた一夏たちを出迎えたのは、虚とナターシャだった。虚の顔を見て逃げ出そうとした刀奈だったが、簪と美紀に先回りされており、大人しく虚に連行されて行ったのだった。

 

「ただいま戻りました、ナターシャさん。何か変わった事はありましたか?」

 

「いえ、一夏さんにご報告しなければいけない事は特にありませんでした。連絡をいただいてすぐに、亡国機業の四名を監禁する為の部屋を用意しましたので、まずはそちらに向かいましょう」

 

「監禁と言っても、篠ノ之が前に使っていた寮長室の隣の部屋ですよね? フォルテ先輩とダリル先輩は反省文とそれなりの罰を受けたら復学するんですから、二人一部屋で生活させればいいんですし」

 

 

 二年生と三年生ではあるが、この二人なら同部屋で文句が上がるはずもないと理解している一夏は、部屋の調整を済ませて既に二人の部屋を確保していたのだった。

 

「とりあえず、復学の手続きが完了するまでは寮長室の側の部屋で我慢してくださいね」

 

「一年の寮長って織斑姉妹でしょ? そんな部屋に入れられるってSHは余程問題児だったのね」

 

「知らなかったんですか? 篠ノ之さんは一夏に迫る、殴り掛かる、周りに危害を加える事に躊躇わないなど、問題行動が多かったんですから」

 

「そういう生徒がいるって噂には聞いてたのだけど、それが篠ノ之箒さんだとは知らなかったわ」

 

 

 ダリルとフォルテが驚きの表情を浮かべる中、スコールとオータムはIS学園の外装を見て感心していた。

 

「じっくりと見る機会が無かったから気づかなかったけど、随分と立派な建物よね」

 

「これだけ頑丈な造りなら、多少オレが暴れても建物が崩れなかったわけが分かるぜ」

 

「あれで多少だと言えるのは、貴女の基準がおかしいからですよ。修理予算を捻出するの大変だったんですから」

 

「あ? そういうのは理事長がするんじゃねぇのか?」

 

「……理事長、そう言う事今は全部生徒会に一任してるから」

 

 

 一夏と簪の表情が沈んだのを受け、どれだけ大変だったのかを理解したオータムは、形だけの謝罪をして話題を変えた。

 

「訓練場やVTSも充実してるのに、どうしてまともな操縦者が育ってないんだ?」

 

「生徒全員分あるわけじゃないですし、VTSはあくまでも架空世界での訓練ですから。生身を相手にするのとでは若干の違いがありますからね」

 

「そんなもんか……まぁいいや。早く部屋に案内してくれ」

 

「随分とデカい態度だな。貴様らは捕虜だぞ」

 

 

 オータムの背後に立った千冬が高圧的に告げると、さすがのオータムも一歩引いた。気配を感じなかったからか、それとも純粋に恐怖を覚えたのかは定かではないが、間違いなく驚いていたのだった。

 

「では一夏、後はわたしたちが引き受けるから、お前は部屋に戻れ」

 

「いえ、まだやる事があるので部屋には戻りませんが、後はお願いします」

 

 

 千冬と千夏に一礼して、一夏は作業の為に整備室へと向かう。護衛としてマドカと美紀が随行する形だが、それ以外は部屋へと戻っていった。

 

「随分と信頼されてるのね、一夏は」

 

「当然だな。アイツ程信頼されている人間はこの学園にいないからな」

 

「貴女たちは信頼されてないようだけどね」

 

 

 スコールの言葉に、千冬と千夏は反論しようとしたが、言葉が見つからずにそのまま黙って四人を連行していったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 整備室で束からの解析結果を開き、該当するデータ無しという事を確認し、一夏は一つため息を吐いた。

 

「束さんの方でもデータ無しという結果と言う事は、マナカが独自開発してると考えるのが普通だな」

 

「一夏さん、何故篠ノ之博士の方でもという表現をしたんですか?」

 

「向こうはハッキングし放題だからな。こちらでは入手出来ないデータも持ち合わせているから、もしかしたらと思ってたんだが……やはり無かったみたいだ」

 

「しれっと言ってますが、そんなデータがあるとすれば、最早国家機密レベルですよね? 犯罪ですよ!?」

 

「今更だな、そんなの。何せあの人は全世界の核ミサイルを同時に遠隔操作して、日本に向けて放った人だぞ。罪の意識など持ち合わせてるわけがない」

 

 

 白騎士事件の事を思い出し、美紀はあれもそうだったのかと納得の表情を浮かべた。

 

「とりあえず、何処かの国が協力してるのかもと思ったが、亡国機業の独自開発だと断定して良いだろう。後はこの無人機たちをこちら側で動かせるように調整を加えれば、警備面の強化が出来るな」

 

「それは簪ちゃんや虚さんと相談して進めてください。私やマドカちゃんではお力になれませんので」

 

「申し訳ありません、兄さま」

 

「いや、気にする必要は無い。改造が済むまで、美紀とマドカには引き続き護衛を頼むと思うし、改造が済んでも、完全に無人機だけに頼るわけではないからな」

 

 

 元々亡国機業のモノなので、完全に信用するわけではないと一夏が考えているのかと思った二人だったが、どうやら違うらしいと次の言葉で理解した。

 

「無人機たちだって休ませる必要があるからな。無人と有人でローテーションを組んで警備にあたるようにした方が良いだろう」

 

「そうですね。その点は刀奈お姉ちゃんを踏まえて話し合いましょう」

 

「そうだな。だが、今日はもう休んだ方が良いだろう。美紀、マドカ、お疲れさま」

 

 

 そろそろ日が暮れると言う事で、一夏は今日の作業はこれで切り上げると宣言する。美紀もマドカもその言葉に従い、部屋まで戻る事にしたのだった。




無人機だけに頼らないという考えが、ISに好かれる要因の一つ

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