暗部の一夏君   作:猫林13世

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すっかり忘れてたキャラが……


無人機の解析

 避難場所から移動する際に、静寐と香澄はエイミィと合流した。

 

「久しぶりね、どうしてたの?」

 

「イタリアの方で色々と問題があって、その都合でイタリアに行ってたのよ。私はあくまで更識所属のはずなのに、一応代表候補生だからって事で呼び出されてて、漸く帰ってこれたと思ったら修学旅行だったからね」

 

「亡国機業の事で、何かイタリアでも問題があったのですか?」

 

「ううん、そうじゃなくて、ギリシャ代表が代わっちゃったでしょ? それに合わせてイタリア代表の人も引退するかもって事で呼び出されたんだけど、結局は次の大会までって事になったんだ。だから行っただけ無駄だったんだよね~。すっかり忘れられてたかと思ったわよ」

 

 

 無邪気に笑うエイミィに、静寐と香澄は苦笑いで応える。その三人の所に、セシリアたち専用機持ちも合流した。

 

「あら、エイミィさんじゃないですか。お久しぶりですわ」

 

「うん、久しぶり~。みんなも避難してたんだね」

 

「お兄ちゃんの命令だからな。我々では足手纏いになりかねないから、今回は退避していた」

 

「一夏はなるべく犠牲を出したくないようだからね。仕方ないって言えばそれまでなんだけどさ」

 

「でも、鈴だって更識所属のメンバーの動きについて行くのは難しいって思ってるんでしょ?」

 

「そりゃ、現に更識所属の二人が――いや、三人か。とにかく更識製の専用機を持つ三人が避難してるのに、アタシたちが加わってもね。戦力どころかマイナスになりかねないもの」

 

 

 鈴の言い分に、セシリアやラウラも頷いて同意を示す。同学年の中ではかなり上に位置するくらいの実力は有しているが、そのくくりが更識所属に代わるだけで、そんな自信は意味をなさないと理解しているのだ。

 

「なんていっても、あの一夏が更識の中で最弱って言うんだから、張り合うだけ無駄だって思うわよね」

 

「そもそも私は、一学期に一夏さんに派手に負けていますもの」

 

「織斑教官たちすら畏怖の念を懐くお兄ちゃんに逆らおうなんて、馬鹿な事は考えない方が身のためだ」

 

「僕は普通に一夏に助けてもらったからね。逆らう気持ちすら起きてこないよ」

 

「シャルちゃんは今じゃ更識傘下の社長だもんね~」

 

「まだまだ見習いだけどね」

 

 

 謙遜するシャルに、他のメンバーはそんな必要ないと思っていた。実際更識傘下に入ってからの方が、デュノア社の業績は良くなっている。もちろん更識の名の効果もあるだろうが、シャルが頑張っているからだと認めているのだ。

 

「とりあえず、今は一夏君に詳しい事情を聞く必要があるわね。一応更識所属なんだし、貴女たちも代表候補生なんだし、何か指示があるかもしれないもの」

 

「その前に先生たちから説明があるかもね」

 

 

 鈴の言葉に、静寐は彼女の視線の先を追った。そこには織斑姉妹と碧が生徒たちを集め、全員いるかの確認をしていた。

 

「確かに、点呼だけなら山田先生でも良いはずだものね」

 

「でもそうじゃないって事は、まだ一波乱くらいあるのかもしれないわね」

 

 

 嫌な予感だが、鈴はある意味確信めいたものを感じていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ホテルのロビーで織斑姉妹や碧が点呼を取っているのと同時刻、一夏はホテルの地下室で回収した無人機の解析を進めていた。

 

「一夏、こっちのケーブルはここでいいの?」

 

「ああ、そこで構わない」

 

 

 さすがに一人では賄いきれないので、簪に手伝いを頼み、一夏はマナカが操っていた無人機の内の一機にケーブルを繋ぎ解析を開始した。

 

「俺や束さんが造ったコアじゃないし、何処の国の癖も検知出来ない……このISのコアは独自のコアネットワークを展開しているようで、闇鴉もアクセス出来ないらしいし……これは亡国機業内で造られたと考えるのが普通だな」

 

「でも一夏、篠ノ之博士と一夏以外に、これほど高度なISプログラムを組める人間なんているの?」

 

「さぁ、俺は知らないが……駄ウサギなら何か知ってるかもしれない。後で聞いておく」

 

 

 更に解析を進めていくと、コアに何か刻まれている事に気付いた。

 

「何だこれは? ……何かのマークか」

 

「何の意味があってこんなものを刻んだんだろう?」

 

「自己顕示欲の現れかもしれんが、特に意味は無さそうだな」

 

 

 他のISも調べたが、製造者にたどり着くようなものは発見出来ず、どのコアにも同じマークが刻まれている事だけが収穫だった。

 

「それにしても一夏、あの織斑マナカって子が亡国機業のトップなんでしょ?」

 

「マナカはそう言っていたし、嘘を吐いている様子も無かった」

 

「それにしても、まだ妹がいたんだね」

 

「いや、そんな目で見られても……記憶は無いし、あったとしても覚えてなかっただろうがな」

 

 

 生まれてすぐ両親が連れて行ったとマナカは言っていたので、一夏の記憶があろうが無かろうが知らなかっただろう。一夏の弁明を受け、簪も非難の目を向けるのを止めた。

 

「後はこの解析結果を更識に送って、少しでも照合するデータが無いか調べるだけか」

 

「尊さんはそう言った仕事早いし、明日には照合終わってるかもね」

 

「別に急がないし、敵の数が無人機を除けば二人だって分かったのが今回一番の収穫かもな」

 

「織斑マナカに篠ノ之箒……一夏の関係者ばっかだね」

 

「篠ノ之は関係者じゃないぞ」

 

 

 古なじみではあるが、という一夏の呟きを受け、簪は少し笑みをこぼしたのだった。




仕事の速さはさすがだなぁ……

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