暗部の一夏君   作:猫林13世

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発想的には束に近いものが……


マナカの目的

 織斑マナカと名乗った少女を見て、織斑姉妹は気まずそうに視線を逸らす。もちろん、一夏がその程度で深追いを自重するわけも無く、彼女について知っているであろう二人に問いかける。

 

「お二人と彼女の御関係は、どのようなものなのでしょうか? 名前から察するに、マドカの双子の姉か妹だとは思うのですが」

 

「……事実、その通りだ。奴は織斑家の末っ子だ」

 

「だが、マドカ同様に屑親たちが生まれてすぐに連れ去ったんだ。マドカは見つかったがマナカの消息は掴めなかったので、てっきりもういないのかと思っていたが……」

 

「何をブツブツ言ってるのか知らないけど、あんたたちには興味ないわよ。私が興味あるのはただ一人だもん」

 

 

 そう言ってマナカは、ゆっくりと一夏に近づいてくる。手を伸ばせば触れられる距離まで近づいたところで、スコールが二人の間に割って入る。

 

「貴女、確か独立派の」

 

「まさか過激派と呼ばれていたのがこんな小娘だったとはね。私たちは何に怯えてたのかしら」

 

「小娘? 出来そこないのマドカと一緒にしないでもらいたいわね」

 

 

 そう言ってマナカは、何かのスイッチを押した。

 

「っ! 一夏さん、周辺にISの気配を確認! その数五十!」

 

「何処からそんなにISを確保したのよ! 私たちだってギリギリしか確保してないっていうのに」

 

 

 数の多さに不平を漏らすスコール。だがマナカは冷静に、見ようによってはスコールに取り合う気が無いかのように答えた。

 

「造っただけよ、こんなの」

 

「いっちー! あのIS、人が乗ってないよ!?」

 

「無人機か……」

 

「その通りだよ、お兄ちゃん。あのISは私がコントロールしてるだけの無人機。だからパイロットの育成なんて面倒な事は気にしなくていいし、大量生産出来るから機体の心配もしなくていいんだよ」

 

 

 そう言いながらマナカは、無人機を操作して独立派の面々や、更識所属の面々に向けて突撃させる。

 

「刀奈さん、指揮は任せます」

 

「了解! 簪ちゃんと美紀ちゃんは広く浅く攻撃して! 私と本音で分散した敵を叩き、撃ち漏らしはマドカちゃんが仕留めて」

 

 

 刀奈の指揮を受け、更識所属の面々が無人機退治に向かう。一夏も少し視線を向けたりはしたが、刀奈を信頼して意識をマナカの方へ完全に向けた。

 

「悪いが、俺には君の記憶は無い。まぁ、例え昔の記憶があったとしても、君の事は知らなかっただろうがね」

 

「それはそうだよね。私たちが生まれてすぐ、あの屑たちは私とマドカを連れてあの家から去ったんだから。私たちと一つしか違わないお兄ちゃんが、私たちの事を知らなくても仕方ないもん。まぁ、そこの駄姉たちは知ってて当然なんだけど」

 

 

 マナカが織斑姉妹へ視線を向けると、二人は居心地の悪そうな表情を浮かべた。

 

「一つ確認したいんだが」

 

「何、お兄ちゃん?」

 

「君が今の亡国機業のトップなのか?」

 

「そうだよ。屑親の紹介で前のトップに会って、私とマドカは別々のグループに配属になったの。それで私はそのままトップのグループに所属になって、トップが死んじゃってからは私が実権を握ったの。だからお兄ちゃんを私の手元にと思ってオータムたちに命じたのに、失敗した挙句に記憶を失わせちゃって、憎むべきISの第一人者にまでしちゃったんだよね……だから潰そうとしてたのに」

 

「随分と俺の事を気に入ってるようだが、君は俺の事を何処で知ったんだ?」

 

 

 生まれてすぐ離れ離れになったと言っていたのに、マナカは何処で自分の事を知ったのかと、一夏は当然の事を疑問に思った。マドカも自分の事は知っていたので、亡国機業内で自分の事は知られているのかという疑問だ。

 

「そんなの簡単だよ。屑親が教えてくれてたんだよ」

 

「親が?」

 

「うん。化け物二人が怖くて連れてこれなかったけど、お前たちには優しい兄がいるってね」

 

「おいおい、化け物は酷くないか?」

 

「あっ? お前たちには話してないよ」

 

 

 千冬が口を挿むと、マナカは一夏相手の時とは比べ物にならないくらいの嫌悪感を示した。

 

「あの屑親がお前たちから逃げる為に私たちを連れ出したらしいけど、本当はお兄ちゃんも一緒に来るはずだったんだ! それをお前たちがお兄ちゃんを手放さなかったから、仕方なくお兄ちゃんはあの家で生活する事になったんだ!」

 

「……俺にはそれが本当か分からないですが、どうなんですか?」

 

 

 真実を知っているであろう織斑姉妹に視線を向けると、千冬も千夏も憤慨していた。

 

「私たちが一夏を手放さなかった? あいつらが一夏を置いて行ったんだろうが!」

 

「そもそも、マドカもマナカもろくに世話するつもりが無かったくせに、私たちを見下して二人を連れて行ったくせに!」

 

「それが真実であろうがなかろうが、私には関係ない。私はただ、お兄ちゃんと一緒にいたいだけ」

 

 

 マナカが更にスイッチを押すと、何もない空間から無人機が現れる。

 

「私はお兄ちゃんとお話ししてるんだから、貴女たちはこれと遊んでてください」

 

 

 マナカが短く無人機に命令を送ると、無人機たちは織斑姉妹目掛けて突撃する。

 

「さぁ、お兄ちゃん。全て破壊し尽した後の世界を、私と一緒に過ごそうよ」

 

「全て破壊するって、君は何をするつもりなんだ」

 

「決まってるよ。私からお兄ちゃんを奪い、そのお兄ちゃんから記憶を奪った世界を破壊し尽すだよ」

 

 

 笑顔で物騒な事を言うマナカに、一夏は表情を顰める。そのタイミングで、気絶していた箒が意識を取り戻したのだった。




なんか、究極のヤンデレっぽくなったな……

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