暗部の一夏君   作:猫林13世

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殆ど人外レベル……


更識所属のレベル

 朝から作業しようと考えていた一夏だったが、一時限目は教室にいてくれと千冬と千夏に頼まれたので、HRの時間に整備室から教室へとやってきた。

 

「あれ? 今日は授業に出るの?」

 

「織斑姉妹に頼まれたんだ。てか、俺が教室に来ちゃいけないのか、静寐」

 

「ここ数日一夏君はいなかったじゃない? だから、専用機が完成するまで授業に出ないのかと思ってたわよ」

 

「俺もそのつもりだったんだが、今日の一時限目は教室にいろと言われたんだ」

 

 

 相変わらずの上からな物言いではあったが、そこを指摘しても何も変わらないと理解しているので、一夏も余計な波風は立てずに大人しく教室へ来たのだった。

 

「はい、席に着いてください」

 

 

 時間になり、真耶が教壇に立つと、一夏と静寐も大人しく自分の席へと腰を下ろす。

 

「今日はこの時間と一時限目を使って、修学旅行の部屋割りとグループ分けをしたいと思います」

 

「部屋割り? そんなのは先生方がお決めになればよろしいのではないでしょうか?」

 

「ある程度は生徒の自主性に任せる、と織斑先生が仰られましたので」

 

「また仕事を投げたな……」

 

 

 その本人たちは、今日は顔を出していない。来れば怒られると分かっているようで、今は職員室で大人しくしているのだろう。

 

「ちなみに、俺はさすがに個室ですよね?」

 

「更識君も相部屋だそうです」

 

「……学園内ならどうとでも言い訳できるが、さすがに外でそれはマズいのではないでしょうか? 倫理的にもですが、学園の評判も落ちると思いますが」

 

「更識君の事を説明したら、ホテル側も納得してくれたようですよ」

 

「………」

 

 

 説明した側も問題だが、それで納得するホテル側にも問題があるようだ、と一夏は痛む頭を抑えながら首を垂れた。

 

「じゃあ兄さまと同部屋になるのは、私と本音、それと美紀で決まりですね」

 

「あっー織斑さんずるーい! 私たちだって更識君と同じ部屋で寝たーい」

 

「もっと言えば、更識君と同じベッドで寝たい」

 

「分かる!」

 

 

 妄想が加速し、授業中だと言う事を忘れて盛り上がる女子たち。真耶がオロオロと慌て始める中、一夏はゆっくりと席を立ち教室から出て行こうとする。

 

「さ、更識君? 何処に行くんですか?」

 

「くだらない事で時間を無駄にしたくないので。俺の部屋はマドカが言ったメンバーで結構ですので」

 

「で、でも……希望者も多いですし、ここは公平に――」

 

「マドカは血縁者で美紀と本音は俺の護衛です。文句はありませんよね?」

 

「は、はいぃ……」

 

 

 千冬や千夏に睨まれた時以上の恐怖を感じ、真耶は一夏の言葉に同意を示す。クラスメイト達は文句を言いたそうだったが、一夏が一睨みしただけで不満を言う勇気は無くなってしまったのだった。

 

「では山田先生。俺はこれで。もし織斑姉妹が何か言い出したら、俺のところに来るように言っておいてくださいね」

 

「わ、分かりました!」

 

 

 織斑姉妹以上に一夏を怒らせてはならないと身を持って実感した真耶は、一夏に敬礼を送り見送った。一夏が遠ざかったのを確認してから、真耶は教壇でホッと息を吐いた。

 

「マヤヤ、あっさりと説得されないでよー」

 

「せっかく更識君とお近づきになれるチャンスだったのに」

 

「あ、あの目で見られたら誰だって大人しく言う事を聞きますって……あの目は人を殺せますよ……」

 

 

 真耶の言葉に、本音とマドカが何度も頷いて同意する。マドカは血縁者と言う事もあり、一夏が怒ればどれほど怖いのか知っているし、本音は何回か怒られそうになったことがあり、こちらも一夏は怒らせてはいけないと身を持って知っているのだ。

 

「そもそも、一夏君と同じ部屋で生活するって事は、それだけ敵に襲われる可能性が高くなるって事よ? みんなはその事を考えてたのかしら?」

 

「私や静寐さんは一応更識製の専用機を持っているので、まだ自分の身は守れますが、亡国機業が攻め入ってきた時の事を考えていましたか? 敵の一人は凶暴で凶悪な篠ノ之さんなんですよ? 生身で対抗出来るとお考えだったのでしょうか?」

 

 

 鶺鴒を持つ静寐と、久延毘古を持つ香澄の追加説明で、自分たちの考えの無さを実感したクラスメイト達は、大人しく自分たちだけで部屋割りをすることにしたのだった。

 

「あ、ありがとうございました。鷹月さん、日下部さん」

 

「何故山田先生がお礼を? 私と香澄さんは当然の事を言っただけです」

 

「むしろ、私や静寐さんでも亡国機業相手には力不足だと言われているのですから、専用機を持たない皆さんが一夏さんと同室になったら、一夏さんの足を引っ張るどころでは済まなかったでしょうね」

 

「二人とも襲われる事を前提で話してますが、そうならない可能性だって……」

 

「限りなくゼロですね。私が視た限りの未来では、何パターンもの未来で襲われています」

 

「何だか視える未来の数が増えてない? この前までは二つくらいじゃなかったっけ?」

 

「久延毘古の性能が上がったのと、私自身が処理出来る情報量が増えたのが理由ですね」

 

「ますます香澄さんに勝てなくなりそうね」

 

「情報は処理出来ても、ISでの動きは静寐さんの方が上じゃないですか」

 

 

 忘れがちだが、この二人も更識所属になれるだけの実力があるのだ。ハイレベルな会話内容に、真耶は考えるのを止めて大人しく部屋割りが終わるのを待つ事にしたのだった。




未来予知は反則だな……

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