暗部の一夏君   作:猫林13世

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一夏の仕事の速さは、ある意味異常ですけどね


仕事の速さ

 専用機を製造するにあたって、一夏はとりあえずどういった機体にするかの考えを纏めることにした。サラはセシリアと同じく遠距離攻撃を得意とする操縦者であり、それなりに近距離攻撃も使えると聞いている。もちろん遠距離主体の機体にするからといって、近接武器が皆無では問題なので、当然近距離武器も搭載するつもりだ。

 問題はその武器をどうするかである。イギリスから移籍したからといって、イギリスで学んだ事を全て捨てる必要は当然ない。だがギリシャの闘い方は、中世をイメージしているのか近接戦が多いのだ。そこになじませるか、それとも自分の得意な戦い方をさせるか、そこはサラの意思を確認しなければ決断出来ない。もちろん、ギリシャ側も戦い方を強要する事は出来ないので、おそらくは遠距離主体の機体になるだろうと考えていた。

 

「……ところで、何でお前は人の姿なんだ?」

 

「碧さんや美紀さんは授業ですからね。今は私が一夏さんの護衛と言う事になってるんですよ。だから人の姿でひと時も離れないようにくっついているのです」

 

「作業し辛いから離れろ。だいたい、こんなにべったりとくっついてたら、いざという時に動きにくいだろうが」

 

 

 いくら護衛だからと言っても、美紀や碧、本音でさえもここまでべったり、と言う事は無かったのだ。まぁ元々が一夏の専用機で、待機状態の時はべったりなのだから、この距離間でも仕方ないのかもしれないが。

 

「仕方ありませんね……実は私、一夏さんから一定距離離れると力が出ない体質なんですよね……」

 

「取って付けたような理由でこの距離を正当化しようとするな。そもそも体質もなにも、お前は人間ではないだろうが」

 

「まぁ、私はISなので、体質とかないんですがね」

 

 

 一夏のツッコミを受けても、闇鴉はケラケラと笑いながら一夏との間隔を広げた。

 

「お前は何がしたいのか、相変わらず分からないな……」

 

「一夏さんは人間が考える事は理解出来るでしょうが、私のようにISが考える事はそんな簡単に理解出来ませんよ。心は覗けても、全てを理解する事は今のところ無理ですよ」

 

「待機状態の時は簡単に分かるんだがな……」

 

「この姿での私は、一夏さんでも私の考えは見抜けませんよ」

 

 

 自信満々に胸を張る闇鴉を見て、一夏はため息を吐いて視線を闇鴉から逸らした。

 

「ところで一夏さん。サラさんの専用機の名前ですが、今まで通り日本神話から取るのですか? それとも、ギリシャ代表ということで、あちらの神話から取るのですか?」

 

「まだそこまで考えてない。まぁ、サラ先輩がどんな機体を望むかによって、どういった能力を持たせるかが代わるから、決めるならそれ以降だな」

 

 

 イギリス政府からもらったサラのデータを眺めながら、一夏はとりあえず数パターンの機体の、簡単な説明書きを作り始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏から呼び出されて、サラは刀奈と一緒に一夏が主に使っている整備室へとやって来た。

 

「一夏君、サラちゃんを連れてきたわよ」

 

 

 刀奈が声を掛けると、中から闇鴉が扉を開け二人を招き入れた。

 

「お待ちしていました、刀奈さん。サラさんも楽にしてください」

 

「えっと……この人は?」

 

「あっ、お初にお目に掛かります。一夏さんの専用機の闇鴉と申します。以後お見知りおきを」

 

「人間の姿になれるとは聞いていたけど、まさかこんなに美人だとは思ってなかったわね」

 

 

 闇鴉との対面を済ませたサラは、部屋の奥にいる一夏に視線を向け、一夏もその視線を受け頷き、数枚の紙を持って近づいてきた。

 

「わざわざこちらに来てもらってありがとうございます」

 

「何か聞きたいことがあったんでしょ? 私の専用機の事についてなんだから、私が訪ねるのが当然だと思うわ」

 

「そう言ってもらえると助かります。まず、サラ先輩は近接重視と遠距離重視の機体、どっちが良いですか?」

 

 

 まずはと言う事で、一夏はどちらを重視するかを確認する事にした。

 

「イギリスでは遠距離を重視した戦い方をしてたけど、ギリシャでもそっちで問題ないのかしら?」

 

「闘い方について、国が口を挿むことは無いので、気にしないでください」

 

「じゃあ、遠距離主体でお願い」

 

 

 予想通りの答えに、一夏はとりあえず安心したように一息吐いた。

 

「一夏君、もう遠距離主体で考えてたんでしょ?」

 

「まぁ、サラ先輩のデータを貰ってるんで、おそらくは遠距離主体で造るんだろうなとは考えてました」

 

「更識君が設計を担当するの?」

 

 

 サラは一夏が全て造るなどとは考えていないので、一夏が設計を考えているということでかなり驚いている。

 

「まぁ、サラ先輩に近い位置にいる製造担当の人間は俺ですからね……先輩の希望などを出来るだけ反映させるために俺が担当してるんですよ」

 

「なるほど……更識君って勉強も出来て、ISの設計まで出来るなんてすごいわね。さすが次期当主ってことなのかしら?」

 

「そう言う事だと思って構いませんよ。それで、遠距離主体ということで、三パターンくらい考えてあるので、この中ならどれがいいか選んでください」

 

 

 一夏が書いた図面を見て、サラはそれぞれの専用機の性能などを吟味し、遠距離に重きを置きながらも近距離戦にも対応できるタイプの専用機を選んだ。

 

「では、このタイプを軸として、更にいろいろなパターンを考えておきますので、また意見を聞かせてください」

 

「分かったわ。それにしても、よく一日でこんなに考えられるわね」

 

「まぁ、授業免除されてるので、これくらいなら」

 

 

 苦笑いを浮かべながら答える一夏を、サラは可愛いと思ったのだった。




また仕事のし過ぎで怒られそうなくらい仕事してますね……

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