暗部の一夏君   作:猫林13世

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妹対決……なのか?


マドカVSラウラ

 一年一組の教室では、一夏がまだ教室に来ていない事が話題になっていた。それと同時に、サラ・ウェルキンがギリシャ代表になった事も話題に上がっていた。

 

「一夏さんがまだ来ていないのと、サラのギリシャ代表決定と、何か繋がりがあるのかしら」

 

「お兄ちゃんは凄い人だからな。きっと関係あるのだろう」

 

「だから、お前が『お兄ちゃん』って呼んでいい相手じゃないと何度言えば分かるんだ!」

 

 

 ラウラとマドカの、ある意味いつも通りのやり取りを横目に、セシリアは一夏が教室に来ない理由を知っているであろう美紀に声を掛けた。

 

「美紀さん、一夏さんはやはり、サラの専用機関係で休むのですか?」

 

「サラ・ウェルキンさんの専用機は、我々更識企業が担当する事になりましたからね。一夏さんは色々と責任のある立場ですので、授業より優先しなければいけない事が出来たら休むということになっています」

 

「僕も手伝えればいいんだけど、僕は技術面は全くだからね。しかも子会社の社長ってだけだから、一夏程の権限ないし」

 

「それでも十分凄いと思いますけどね」

 

 

 同い年で、子会社とはいえ更識企業で社長職を任されているのだ。セシリアから見ればシャルロットも相当偉い部類になるだろう。

 

「でも、サラ先輩がギリシャ代表になったということは、セシリアが次期イギリス代表に内定したってことじゃないの?」

 

「一夏さんたちのお陰で、偏向射撃も三回に一回は成功するようになりましたし、後は精度と確率を高めていくだけですからね。サラも実力はありますから、競い合っているのも良かったですが、やはり一緒の大会に出たいですから私も頑張らなければいけませんわね」

 

「慢心せずに更に高みを目指すとは、やっぱりセッシーはいっちーの影響を受けてるんだね~」

 

「おはようございます、本音さん。もちろん、一夏さんに喧嘩を売った時の私を殴り飛ばしたいくらいですわ」

 

 

 入学早々一夏をバカにして危うく更識に存在を消されかけた記憶があるセシリアは、どれほどあの時の自分が愚かで図に乗っていたかを自覚している。

 

「ところで美紀ちゃん、いっちーは今日来ないの?」

 

「昨日刀奈お姉ちゃんから聞いたでしょ? 一夏さんは専用機の製造の為に授業は出れるときだけ出るようになるって」

 

「まぁ、いっちーが一番考えるのが早いし、他の技術者をIS学園に呼ぶわけにもいかなもんね~。いっちーは大変だ~」

 

 

 さすがの本音も、一夏が一人で専用機を造ると言う事をバラす事はしない。もしバラしてしまったら、余計に一夏の自由を奪う事だと自覚しているからであり、すなわち自分が一夏といられる時間が減ると言う事を考えているからである。

 

「私たちに指導してもらってるだけでも忙しそうでしたのに、専用機製造にも関わるなんて、やはり一夏さんはIS業界において重要な人なのですわね」

 

「いっちーは篠ノ之博士に次ぐ重要人物だからね~。だから護衛も大変なんだよ~」

 

「……その護衛のはずの本音が信用出来ないから、私も護衛になったんだけど?」

 

 

 美紀の冷たい視線が本音に突き刺さるが、本音はそれには動じず一夏の席を眺めていた。

 

「いっちーがいないって事は、授業が脱線したら大変だね」

 

「山田先生も、少しはマシになってきたけど、やっぱり年が近いって事が問題なのかもね」

 

「分かりやすいんですけど、相川さんたちの質問で脱線していきますものね……」

 

 

 たまにおかしな質問もするので、そこから脱線していくことが多い真耶の授業だが、基本的にはしっかりと説明されているので、生徒の間では好評なのだ。だから真耶も頑張って授業を進めようとしてるのだが、頑張れば頑張るほどから回るのだ。

 

「織斑先生たちがいれば、びしっとした空気になるんですけどね……」

 

「あの緊張感は逆に頭に入らなくなるんですよね……」

 

「少しでもお喋りすれば、即制裁って空気だもんね~」

 

 

 一夏がいればまた違う空気なのだが、基本的に織斑姉妹は授業妨害には制裁を加える感じなのだ。

 

「だいたい、後から出て来てお兄ちゃんの妹面をするんじゃない!」

 

「後から!? 私は生まれた時から兄さんの妹なんだよ! そっちこそ兄さんに馴れ馴れしくするなんて! なにが『お兄ちゃん』だ! たまたまISが暴走して兄さんに助けてもらって、それで甘えるようになるなんて、随分とチョロイんじゃないの?」

 

「お二人とも、何時まで喧嘩してるんですの?」

 

 

 ラウラとマドカの喧嘩にツッコミを入れたセシリアに、二人とも強い視線を向けた。

 

「お前だって、お兄ちゃんに負けてあっさり態度を変えたんだろ? だったら私の気持ちが分かるだろ」

 

「お前も兄さんに色目を使ってるのか!? てか、兄さんの魅力は凄いんだな……って、感心してる場合じゃなかった! 美紀、本音、この雌猫を退治するのを手伝ってください」

 

「お前たち、何時まで騒いでるんだ! もうとっくにHRの時間になってるぞ!」

 

「ね、姉さん!?」

 

「学校では織斑先生、もしくは千冬先生だ馬鹿者!」

 

 

 マドカとラウラは千冬の愛の出席簿アタックを喰らい、しょんぼりとしながら自分の席へと戻っていく。そして千冬は、当たり前のような顔で一夏の席に座り、千夏と喧嘩を始め真耶を困らせたのだった。




マドカは兎も角、ラウラは同い年のはずなんだけどな……

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