暗部の一夏君   作:猫林13世

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この三人が来れば鉄壁だろ……


最強の三人

 箒に更識所属の面々を全てぶつけてくると考えていたスコールたちは、要人の警護についている三人の気配を掴み、ため息を吐いた。

 

「まさか更識の三人――しかも実力者をこっちにぶつけてくるとは……さすが一夏ね。私たちの上を行く考えだわ」

 

「感心してる場合かよ……これじゃあターゲットに狙撃した途端にオレたちが狩られるぜ?」

 

「大丈夫よ。狙撃なんてしなくても、あの場所を纏めて吹き飛ばせばいいんだから。こんなこともあろうかと、レインに爆発物を設置しておいてもらったのよ」

 

 

 そう言ってスコールは、携帯電話でレイン・ミューゼルことダリル・ケイシーに合図を送った。

 

「アイツにも監視が付いてるんだろ? よく爆発物なんてセット出来たよな」

 

「一見すると、ただのゴミにしか見えない改良型だもの。初見で爆発物だって見抜けるのは、そうそういないと思うわ」

 

 

 スコールが話し終えると、小規模ながら爆発が起こった。来賓を匿っている場所で爆発が起これば、さすがに移動せざるを得なくなるので、スコールはそこでターゲットを殺るつもりだったのだ。

 

「おいおい、小規模過ぎて動かねぇぞ?」

 

「大丈夫よ、あれで終わりじゃないから」

 

 

 立て続けに小規模な爆発が起こり、さすがにこの場にいるのは危険と判断したのか、刀奈と虚が要人を安全な場所へと誘導し始める。

 

「もう少し……今ね!」

 

「おうよ!」

 

 

 スコールの合図でオータムが特攻を仕掛けようとして――

 

「これくらいお見通しです。まったく、舐められたものですね」

 

「お前は……」

 

 

――オータムの前に影が割り込んできた。

 

「ダリル・ケイシーが貴女たち側の人間であると知っていて泳がせていたんです。これくらい想定の範囲内ですよ」

 

「小鳥遊碧……バカな、お前の気配はあいつらの側に……」

 

「あまり深い関係じゃないから、気配を偽るのは簡単でしたよ。あそこにいるのは私ではなく、私の服で身を固めた山田真耶です」

 

 

 碧と仲のいい相手なら、この作戦は使えなかった。碧と真耶では、身長が違い過ぎるし、胸の発育も若干違う。それでも変わり身が使えたのは、スコールもオータムも、碧の事をよく知らなかったからに他ならない。

 

「篠ノ之箒が暴れだす前に、貴女たちを捕らえれば終わりです。観念して大人しく投降しなさい」

 

「誰が! テメェ一人ならオレが相手してやる! スコール、今のうちにやつらを!」

 

「誰が私一人だと言いました?」

 

 

 碧が視線をオータムから逸らすと、その視線につられてオータムもそちらへ視線を向ける。その隙を突いて、碧はオータムに一撃喰らわせた。

 

「ッチ、舐めた真似しやがって! ゼッテーに血祭に上げてやる!」

 

「別に舐めた真似なんてしてないわよ。本当にそこにいるのだから……ね、織斑姉妹」

 

 

 碧が呼ぶと、物陰から気配が生まれ、現れたのは最強の双子だった。

 

「一夏から頼まれたから来てみれば、本当に大物が二人もいたな」

 

「こいつらを捕らえれば、わたしたちの株も上がると言うもの……覚悟するんだな」

 

「あらあら……これは詰んだわね」

 

 

 さすがのスコールも、第一回モンド・グロッソの覇者たちを相手に勝てるとは思っていなかった。

 

「オータム、ここは大人しく引くわよ。SHにも合図を送るわ」

 

「ッチ、さすがに分が悪いよな……おい、今日の所は大人しく帰ってやるぜ」

 

「それ、雑魚キャラのセリフじゃないの?」

 

「そんなツッコミ入れてる場合じゃねぇだろ」

 

 

 何処からか煙幕が起こり、スコールとオータムはその隙にこの場を脱出した。追いかけようとすれば追いつくが、深追いしてこちらがやられる可能性を考え、碧と織斑姉妹は二人を追う事はしなかった。

 

「あのバカは?」

 

「モニターを見る限り、ぼこぼこにされて逃げていったな」

 

「相変わらず口だけのヤツだな……」

 

「さて、わたしたちは周辺の警備に当たるから、一夏への報告はお前に任せるぞ」

 

「ダリル・ケイシーへの訊問の時は、私たちも呼べ」

 

 

 そう言い残して、織斑姉妹は周辺の警備へと飛び立っていった。

 

「尋問も何も、さすがにもう彼女も逃げてるでしょうね」

 

 

 今回の件で、完全にバレたと考えるだろうから、ダリル・ケイシーはIS学園から姿を消すだろうと碧は考えていた。もちろん一夏も同意見だったので、見張りをつけるべきではないかと提案していたのだが、それよりも警護に人員を割くべきだと言う事で、逃げるなら自由にしろ、というスタンスを取っていたのだった。

 

「さてと、一夏さんへの報告を済ませたら、私も周辺の警備に当たるとしますか」

 

『展開されただけで、あまり出番がありませんでした』

 

「まぁまぁ……出番がない方が平和の証拠なんだし、不貞腐れないの」

 

『久しぶりの出番だったんですよ? もう少し動きたかったです』

 

 

 木霊が不貞腐れたように呟くと、碧は苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「今回は戦わずに勝利したけど、毎回こう上手くいくとは限らないんだから。その時は思いっきり動きましょう」

 

『そうですね。今回はあくまで、あの羊頭狗肉という言葉がふさわしい連中を守るのが目的で、殲滅が目的じゃなかったですもんね』

 

「IS学園で殺人が行われたら、さすがに立場が危ういからね」

 

 

 要人を守ったのではなく、IS学園の立場と更識の立場を守ったと解釈する事で、一夏は更識所属の面々を納得させたのだ。だからあくまでも守ったのは自分たちの自由と言う事で、碧は要人がどうなろうと気にしなかっただろう。木霊はそんなことを考えながら、一夏が待つモニター室へと針路を変更したのだった。




さすがのスコールとオータムでも、織斑姉妹と碧相手は……

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