暗部の一夏君   作:猫林13世

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ぶっちゃけ、キャノンボールってどんなのだっけ……記憶にないんですよね


襲撃直前

 いよいよ明日はキャノンボール・ファストというのに、一夏はあまり乗り気ではなかった。

 

「何か問題でもあるのですか?」

 

「あくまで可能性だが、来賓の中に亡国機業と繋がってる人間がいるかもしれないとか、標的になってる人がいるかもしれないとか、考えたらきりがないがな」

 

「ダリル・ケイシーの動きを見る限り、何かしそうな雰囲気はありますけど、気にし過ぎは一夏さんの体調に影響します。そう言う事は私たちに任せて、一夏さんはゆっくりと休んでください」

 

「そうはいってもな……美紀たちは参加するわけだし、監視は参加しない俺や刀奈さん、虚さんが受け持つしかないだろ?」

 

 

 大会運営もあるので、生徒会メンバーの内本音以外は大会には参加しない。元々乗り気ではなかった一夏だけでいいと言ったのだが、刀奈と虚もレベルが違うという理由で参加しなかった――出来なかったのだった。

 

「警備などを怠るつもりは無いが、人員が割けない以上、より一層の注意を払わなければいけないんだ。気にし過ぎ、と言う事は無いだろう」

 

「ですが、本番前日から気を張ってたら当日にヘロヘロになってしまいます。今は私たちが周りに気を張っておきますので、一夏さんはゆっくりと休んでください」

 

「そうしたいのは山々だが、まさか前日になってプログラムが組まれてないとか言われるとはな……何やってたんだよ」

 

 

 本来、キャノンボールのプログラムは真耶が担当するはずだったのだが、先ほどになって、一夏に泣きついてきたのだった。

 

「福音の解放やそれに伴う手続きなどで、織斑姉妹に駆り出されていたとか」

 

「……殆ど更識で処理したんだが、何を手伝う事があったんだ?」

 

「さぁ、そこまでは……」

 

 

 美紀と二人で首を傾げながら、一夏はプログラミングを急いだ。半分以上終わってなかったのだが、一夏にかかればこれくらい二時間もかからずに終わるだろう。

 結局二時間もかからずにプログラミングを済ませた一夏は、本番前まで仮眠をとることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 来賓リストを手に、スコールはターゲットがどの位置に座るかを確認していた。その横には、オータムと箒の姿も見られる。

 

「ターゲットは三人。私とオータムで確実に殺るから、SHは場の攪乱と更識の連中を引き付けてちょうだい」

 

「別に引きつけるのは構わないが、あいつらをやっつけてもいいんだろ?」

 

「死亡フラグを建てるのは構わねぇが、本当に死ぬんじゃねぇぞ? 今回の襲撃が本番じゃねぇんだから」

 

「分かっている。本番は一年生の修学旅行だろ」

 

「恐らくだけど、その場には篠ノ之束も姿を見せるんじゃないかと思うのよね。その時に篠ノ之束か一夏、どちらかを確保出来れば、私たちの願いが叶うのも間違いないわよ」

 

 

 IS学園の側で今回の目的と、次回の目的を確認した三人は、それぞれ頷きあい、そして準備に入った。

 

「そう言えば、潜入しているレイン・ミューゼルって人は、何時合流するんだ?」

 

「次回の修学旅行の際に合流する予定になっているわ。もちろん、監視されてるでしょうから慎重にね」

 

「あの更識とかいう連中の内、レインを疑ってるのが結構いるからな」

 

 

 上げられてくる報告の中に、明らかに疑われていると言う事も含まれているので、なるべく慎重に動くように指示は出してあるが、それでも監視の目は鋭くなっていく一方なのだ。ここで箒にその正体を教えたとして、彼女の事だからすぐに激昂してその名前を言ってしまうかもしれない。だからスコールとオータムは箒にレイン・ミューゼル=ダリル・ケイシーと言う事は教えていないのだった。

 

「とりあえず今は、目の前のターゲットに集中しましょう」

 

「了解した」

 

 

 スコールの言葉に頷き、言葉で同意を示した箒が、攪乱の為にIS学園内へと忍び込み、スコールとオータムは標的が逃げる際に通るであろう場所が見える位置に移動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大会運営本部で、一夏と刀奈は来賓のチェックを行っていた。疑わしい人間は五人、そのうち一人は体調不良とかで代理を立てた。

 

「残るは、この四人ですね」

 

「万が一亡国機業が襲ってくるとして、ターゲットとなりうる人間が四人もいるっていうのはどうなのよ」

 

「表の顔は兎も角、裏では極悪非道の限りを尽くしていますからね……マドカから聞かされた亡国機業の派閥を考えると、狙われそうなのはこの四人ですからね……仕方ありませんよ」

 

 

 箒が所属していると思われる、独立派が狙うとしたら、過激派のパトロンとなりうる人間であると一夏は考え、その可能性がある人間が四人も来ているのだ。気が休まる時など、一瞬も無い。

 

「とりあえず、虚さんに周囲を警戒してもらってますけど、碧さんが審判として参加してるのが痛いですね」

 

「織斑姉妹より、碧さんの方が尊敬されてるからね……織斑姉妹の奇行が知られ始めてきたのが原因だから、後で注意しておいたら?」

 

「注意くらいで収まるのなら、とっくに……」

 

「? どうかしたの?」

 

 

 急に言葉を切り、辺りを素早く見回す一夏を見て、刀奈も警戒心を強める。

 

「今一瞬、篠ノ之の気配がしたような気がしまして……気のせいかもですが」

 

「小刻みに震えてるけど、それは寒いから? それとも、篠ノ之さんの気配がするから?」

 

 

 刀奈が質問をしたのと同時に、一夏の携帯が鳴った。

 

『一夏さん、上空にサイレント・ゼフィルスと思しきISを発見しました!』

 

「刀奈さん、避難警告! 大会は一時中止です」

 

「分かった!」

 

 

 刀奈に短く指揮を飛ばして、一夏は簪たち更識所属の面々に電話を掛ける。

 

『どうしたの?』

 

「大会は一時中止。警戒態勢に入れ。亡国機業だ」

 

 

 一夏の言葉に、電話越しに簪が息を呑んだ。こういう場面を想定していたとはいえ、実際にそうなるとは思ってなかったのだろう。




原作も読んだし、アニメも似たはずなのに……なんでだろう?

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