暗部の一夏君   作:猫林13世

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IS戦闘ではありません……


スコールVS箒

 箒を撃退してすぐ、一夏は携帯を取り出しどこかへ連絡を取っていた。その相手が誰であるか分からない美紀と碧は、とりあえず黙ってその会話を聞くことにした。

 

「どうせ覗いてたんですよね? 追跡は可能ですか?」

 

 

 一夏の口ぶりから、二人は電話の相手が篠ノ之束であると理解した。宇宙規模のストーカーである彼女ならば、逃げた篠ノ之箒を追跡するくらい可能だろう。

 

「……そうですか。分かりました、ありがとうございます」

 

 

 表情から察するに、追跡は出来なかったようだと理解した二人は、一夏に近づき慰める事にした。

 

「そう肩を落とす必要はないですよ、一夏さん。とりあえず敵戦力の一端を知ることが出来たんですから」

 

「そうですよ。それに、篠ノ之箒が完全に敵勢力に加わっていると分かっただけでも、十分な収穫だと思いますよ」

 

「別に落ち込んでませんよ。それに、篠ノ之箒が敵勢力に加わっている事は、ほぼ確定していましたしね。とりあえず闇鴉を通じて得たデータをVTSに反映して、専用機持ちたちに仮想篠ノ之箒相手に対戦してもらいましょう。更識所属の面々なら、ある程度苦戦こそすれ負ける事は無いでしょうし」

 

 

 かくいう一夏も、想像以上に成長していた箒に苦戦したのだが、それでも負ける事は無かった。碧と美紀のフォローがあったと言う事も多分にあるのだが、一対一でも負ける事は無かっただろうと考えている。技術は成長してても精神面はそのままだったので、そこから崩せると一夏は確信していたのだ。

 

「普通にしてれば、あいつも候補生にと話があったかもしれないのにな」

 

「あの性格では無理だと思いますよ。ソロは刀奈ちゃんがいますし、ペアだと誰も組んでくれないでしょうし」

 

「違いないですね……アイツが刀奈さんに勝てるとは思えませんし、そもそもあの固まった考え方をどうにかしないと、普通のISは動かせませんからね」

 

 

 サイレント・ゼフィルスのデータを眺めながら、一夏は対箒の算段を立てていた。サイレント・ゼフィルスに触れさえすれば、彼女の心を開放する事は可能だろうと一夏は考えている。サイレント・ゼフィルスの心さえ開ければ、その時点で箒が彼女を動かせなくなるだろうと読んでいる一夏は、どうすれば近づけるかを必死に考えるのであった。

 

「煽ってもあの威力だからな……流しても隙は小さいし……かといってわざと攻撃を喰らうのも問題だ……」

 

「一夏さん、とりあえず部屋に戻りませんか? 刀奈お姉ちゃんたちも心配してますし」

 

「そうですね。いつまでも二人をその恰好で中庭に留まらせるわけにもいきませんし」

 

 

 コスプレ衣装のままの二人を見て、一夏は部屋に戻ることを承諾する。二人は既に羞恥心より警戒心が上回っているので恥ずかしくないのだが、後々思い出して恥ずかしがることがありそうだから、一夏はなるべく早く部屋に戻ることにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本拠地へ戻ってきた箒を出迎えたのは、スコールだった。滅多に感情を見せないスコールだが、今は少し怒っているように箒には思えたのだった。

 

「何か用か」

 

「貴女、単独でどこに行っていたのかしら?」

 

「貴女には関係ない。ちょっとした野暮用だ」

 

「一夏のところに行っていたんじゃなくて?」

 

 

 ズバリ言い当てられ、箒はキッと鋭い視線をスコールへと向けた。

 

「だったらどうしたというのだ」

 

「貴女の所為で計画が練り直しになるかもしれないのよ? 少しは悪いと思わないのかしら?」

 

「私は私の考えがあってこの組織にいるだけだ。最低限の命令には従うが、それ以上貴女に従う義理は無い」

 

「勝手に対象に接触するのは、最低限の命令にも従えてない証拠ではないかしらね?」

 

 

 苛立ちを隠せなくなってきているスコールに、箒は悪びれもせずに言い放つ。

 

「幼馴染に会いに行くだけだろ。それが命令違反になるとは思わないがな。そもそも一夏に会うな、などと命じられた覚えはないし、例え命じられていても、私はそれを承諾した覚えはない」

 

「貴女、まだ一夏の幼馴染だと思い込んでるの? あの子は貴女なんて何とも思ってないって散々言われてるはずよね? まだそれを受け入れてないのかしら?」

 

「一夏はシャイなだけで、本音では私の側にいたいと思っているんだ。それを周りがとやかく言う資格は無いだろうが!」

 

「だから、それが妄言だって言ってるのよ。とにかく、命令違反を犯したんだから、貴女は三日間の謹慎。これは決定事項だから、騒いでも無駄だからね」

 

 

 謹慎を言い渡された箒は、納得できないとばかりにスコールに喰ってかかる。

 

「横暴だ! 私はただ幼馴染の誕生日を祝いに行っただけで、それが命令違反になるとは思えん!」

 

「その相手が作戦のターゲットで、時間を掛けて接触すべき相手なら話は別でしょうが。そもそも、今回の件で接触が難しくなってのは明らかなんだから、いい加減自分の非を認めなさい。どんな思惑を持っていようが別に良いけど、ここにいる以上はその自己中心的な考え方は止める事ね」

 

 

 そう言ってスコールは箒を部屋に引っ張り込み、そのまま部屋の外側から鍵を掛けた。

 

「おい!」

 

「食事は気にしなくていいわよ。三日位食べなくても死なないから。水だけはそこに置いてあるから」

 

「そう言う事ではない! 私を解放しろ!」

 

「おバカさんは少し反省してなさい。貴女の所為で作戦の練り直しなんだから」

 

 

 そう扉越しに言い放ち、スコールは箒の部屋から遠ざかっていったのだった。




集団行動の出来ない箒……

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