暗部の一夏君   作:猫林13世

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どうやって進めていくか……


マドカの情報

 刀奈たちが寮で誕生日の事を話し合っている頃、一夏は更識本家にやってきていた。初めて訪れたマドカは、あまりの広さにきょろきょろと辺りを見回している。

 

「お待ちしておりました、一夏様。尊様がお待ちです」

 

「ありがとうございます」

 

 

 案内役として現れた侍女に、一夏が一礼して尊の部屋まで案内してもらってる間も、マドカは落ち着きなく辺りを見回していた。

 

「そんなに珍しいものは無いぞ?」

 

 

 あまりにもきょろきょろしていたので、一夏がそう声を掛けると、マドカは慌てて一夏に言い訳を始める。

 

「いえ、ここが兄さまが生活していた場所なのだなと思うと、なんだか感慨深くてですね……決して物珍しいとかこんなに広い屋敷があるのかとか思ってたわけじゃありませんよ」

 

「そうか」

 

 

 言い訳をしたつもりが、ついつい本音が零れてしまったマドカだったが、一夏はその事を指摘する事は無かった。本人が気づいていないのだから、わざわざ教える必要も無いと考えたのかは定かではない。

 

「失礼いたします。ご当主様、ならびにその妹君をお連れいたしました」

 

『入りなさい』

 

 

 屋敷の深部まで来れば、誰かに聞かれている恐れはないので、侍女は「一夏」ではなく「ご当主」と呼んだ。尊もその事を理解しているので、特に指摘することなく入室の許可を出した。

 

「わざわざ申し訳ありません、ご当主」

 

「気にしないでください。そして、表向きは貴方が当主なのですから、あまり畏まられると居心地が悪いんですけど」

 

「表ではそうかもしれませんが、ここは裏ですから。それで、そちらが元亡国機業に所属していた、ご当主様の妹君ですか」

 

「何か知ってるかと思いまして連れてきました」

 

 

 尊に視線を向けられ、マドカは小さく目礼をする。その後で一夏が振り返り、マドカに視線を固定した。

 

「マドカ、覚えている範囲で構わない。亡国機業について教えてくれないか?」

 

「私も詳しい訳ではありませんが、現在亡国機業には大きく分けて三つの派閥があります」

 

 

 そこで区切り、マドカは一夏の目を見た。一夏はマドカの目を見返し、小さく頷いて続きを促した。

 

「一つ目の派閥は、リーダーが率いる派閥です。この派閥は改革と謳いながら破壊と強奪をすることを目的とした派閥です。二つ目は前リーダーの意思を引き継いだ穏健派。悪事を働いている国や組織を壊滅させ、虐げられていた人間を助け出すことを目的とした派閥です。そして三つ目ですが、この派閥に私は所属していました」

 

「その派閥の目的は?」

 

「亡国機業からの脱退・独立を目指す派閥です」

 

 

 マドカの言葉に、一夏と尊は意外感を露わにした。今までの説明を聞く限り、一夏を襲ってきた派閥は三番目だと言う事が分かる。だがその派閥の目的は脱退・独立だ。一夏を襲う意味が分からないのだ。

 

「マドカが所属していたと言う事は、あのオータムも一緒と言う事だろ? 何故その派閥が俺を狙う」

 

「この派閥を率いているのは、スコールという幹部の一人です。スコールは兄さまに固執している節が見られました。また、篠ノ之束を拉致するよう私に命じたのもスコールです」

 

「そのスコールという幹部の情報は?」

 

「詳しい事は……ですが、少なくとも私やオータムよりはIS技術は高く、戦闘においても、無類の才能を発揮するでしょう」

 

「俺に固執してるとの事だが、その理由は?」

 

「分かりません。ですが、兄さまの事を知っているような口ぶりをしてたことから、織斑夫妻と面識があったのかもしれません」

 

 

 両親、という単語を使わなかったのは、マドカも認めたくないという現れだろう。一夏はその事を指摘することなく、少し考えを纏める為に瞼を閉じた。

 

「これは私の勝手な考えですが、篠ノ之箒を拉致した目的は、姉さまたちと篠ノ之束博士の裏をかくためだと思います」

 

「それはあり得るだろうな。マドカが抜けた穴を、篠ノ之で埋められるとは思えないし、育てたとしても精々候補生レベルに届くかどうかだろうしな。戦力として期待したいのなら、静寐か香澄を攫った方がよっぽど戦力になっただろう。まぁ、その二人が率先して亡国機業に力を貸すとは思えないが」

 

「篠ノ之箒は洗脳されていない可能性の方が高いと兄さまは考えているのですか?」

 

「アイツを洗脳しても、戦闘の幅が狭まるだけだろうし、そんなことしなくても、アイツは簡単に言いくるめられるだろう。正当な評価がされていないと思い込んでいたアイツなら、その事を理由に亡国機業に与する事もあるだろう」

 

「ですが兄さま、篠ノ之箒はISから嫌われているはずでは」

 

「更識の手が加えられているISからは、軒並み嫌われていたな。だが、それ以外ならまだ動かせない事も無かっただろうし、考え方を改めた可能性も捨てきれない」

 

 

 箒が自分の力と向き合って、それなりに努力した可能性を考えて、一夏はそう答えたのだが、マドカはその可能性は無いのではないかと思っていた。直接の面識は大して無いが、話を聞く限りの箒像は、限りなく最低に近い評価なのだから。

 

「独立を目指す派閥の人数は?」

 

「不明です。正確な人数を把握しているのは、リーダーであるスコールだけでしょう」

 

「つまり、亡国機業内でも、どれだけの反乱分子がいるのか把握していないと?」

 

「そのようです。亡国機業のリーダーも疑心暗鬼になっていると聞きました。信用しているのは側近だけだとも」

 

 

 マドカからもたらされた情報を元に、一夏は対亡国機業の作戦を考え始めたのだった。




実際の目的はなんなのだろう……原作を途中までしか読んでないので、その辺りは知りませんし、原作で明かされてるのかも不明……

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