暗部の一夏君   作:猫林13世

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ちゃんと修正はしてあります


新カリキュラム

 自分が亡国機業の一員なのではないかと疑われている事などつゆ知らず、ダリルは今日も一夏の身辺を探っていたのだった。

 

「また貴女ですか、ダリル」

 

「よく会うわね、布仏。貴女もしかして私のストーカーなの?」

 

「馬鹿な事は言わないでください。私は一夏さんに用事があるからこの場所を訪れるだけで、貴女に興味はありませんよ」

 

「私だって、更識君に興味があるだけで、布仏になど興味ないわよ。そもそも、更識君にコンタクトを取るのが難しい私たち一般生徒は、こうして偶然でも装わなければ会えないのだから、彼がいるそばをうろついていてもしょうがないと思うのだけど? ましてや私は学年も違うんだし」

 

 

 ダリルの言う通り、一夏と学年の違う生徒は、一夏とコンタクトを取ること自体が難しいのだ。だが、ここまであからさまにうろついているのはダリル一人なのも確かなので、虚が疑うのも無理はないのだ。

 

「一夏さんにどのようなご用件でしょうか」

 

「男女の仲になりたいと言っても、貴女は信じないでしょう?」

 

「当たり前です。冷やかしならお帰りください」

 

 

 取り付く島もない対応で、虚はダリルから視線を逸らして生徒会室へと入っていく。一応態度には出さなかったが、ダリルはかなり頭にきていた。

 

「やはり布仏は嫌いな部類だわ。てか、どれだけ面倒なのか分かってないのかしら」

 

 

 虚の立場なら一夏に会うことは簡単だが、ダリルの立場だと話す事すら難しい。ましてや一度コンタクトを取って警戒心を抱かれているのなら尚更だ。

 

「仕方ないわね……別の方法でも考えようかしら」

 

 

 ダリルがそう呟いて生徒会室前から姿を消すと、隠れていた碧が物陰から姿を現した。

 

「一夏さんの事を狙っているのは間違いなさそうね。でも、目的がまだはっきりとしないのは厄介だわ……アメリカのスパイなのか、それとも亡国機業のスパイなのかがはっきりすれば、対応するのも楽になるのに……」

 

 

 例えばアメリカのスパイだった場合は、その証拠を突き付けてアメリカもろとも潰せばいいし、亡国機業のスパイならば、偽の情報を掴ませて一網打尽にすればいい。だがそのどちらともはっきりしない今の状況では、打つ手がないのだ。

 

「もう少し監視は続けた方がよさそうですね。万が一一夏さんを純粋に狙っていた場合でも、その事が早めに分かれば手の打ちようがありますし」

 

 

 かなり低い確率だと碧も思っているが、ただでさえ一夏は学園中から好意を向けられているのだ。自分たちだけで独占するつもりもないが、他者が介入してくるのを黙ってみていられるほどの余裕は、更識の面々にもないのだ。

 

「虚さんも疑ってるようだし、もう少し疑いの目を向けてボロを出さないか試してみようかしら」

 

 

 そんなつぶやきを残して、碧は再び姿を消したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 文化祭に向けて準備を進めている半面、二学期に入りより実践的な授業が採用されている。そのテストの段階で体験した静寐や香澄は、新カリキュラムを受けてもさほど疲れた様子は見られなかった。

 

「凄いね、鷹月さんや日下部さんは」

 

「これだけのメニューをこなしてもピンピンしてるもんね」

 

「四月一日さんや織斑さんは当然としても、本音までピンピンしてるのは納得できないけど」

 

 

 口々に賞賛されるのが恥ずかしい二人は、夏休みの間に受けたメニューの一部を教えることにした。

 

「私たちはテストケースとしてこのメニューを受けたことがあるからね」

 

「ちょっとした手違いで、この倍くらいはありましたけど」

 

「嘘っ!? この倍も動いてたの!? そりゃピンピンしてるか」

 

 

 正確にはそれ以上なのだが、それを言うと織斑姉妹に怒られる気がしていたので、静寐も香澄も余計な事は口にしなかった。

 

「何々、何の話~?」

 

「本音がピンピンしてるのが納得できないって話よ。どこにそんな体力があるのよ、あんた」

 

「一応更識所属だからね~。見えないところで努力してるのだ~!」

 

「本音はだらだらしてるだけじゃない。一夏さんに怒られても知らないからね」

 

 

 本音に続いて現れた美紀も、涼しい顔をしながらツッコミを入れた。

 

「やっぱり更識の訓練メニューって厳しいの? それも更識君が考えてるの?」

 

「いっちーは基本何も言わないよ~。その分、ISの整備を怠るとすごく怒るけど」

 

「一夏さんはISの声が聞こえますから、どんなコンディションなのかIS自身から聞けますからね。無茶してればすぐにバレてしまいますから」

 

「やっぱり更識君が整備してくれるんだ。羨ましいな~」

 

「鷹月さんや日下部さんも、更識君が整備を担当してくれてるの?」

 

 

 クラスメイトの面々は、香澄が専用機持ちになったことについて特に含みを持っている感じではない。上級生の中には面白く思ってない人もいるみたいだが、少なくとも一年生の中では納得されているようだ。

 

「私はまだメンテナンスしてもらうほど稼働させてませんが、静寐さんは一夏さんに整備してもらってるようですよ」

 

「そもそも学園にいて、この鶺鴒を弄れるのが一夏君だけだからね。わざわざ更識の技術者を呼ぶのも大変だって言ってたし」

 

「いっちーしか声を聞けないから、技術者が来ても時間かかるだけなんだけどね~」

 

「整備に関しては、一夏さん一人に任せた方が早いですからね」

 

 

 事実を知る本音と美紀も、不用意な発言はしないように周りに話を合わせた。もしバラしてしまっても怒られはしないだろうが、IS学園でバラしたらそのまま世界中に知れ渡ってしまう可能性があるので、一夏以外の面々も極力事実は言わずにいるのだった。加えて、今は監視されている疑いがあるので、より慎重に発言するよう、刀奈と碧から言われているので、不用意な発言は避けるように心掛けているので、ますます事実を言うわけにはいかない状況だったのだ。

 そんな話をしていると、向こうから一夏の声が聞こえてきた。どうやらカリキュラムの件で織斑姉妹と話しているようなので、クラスメイトは興味を惹かれたが聞こえないように更に距離を取ったのだった。




他の人は兎も角、本音もスゲェー……

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