暗部の一夏君   作:猫林13世

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彼らも一般ではないかも……


一般高校生の夏休み

 一夏に指導を頼まれた千冬と千夏は、前回の失敗を繰り返さないように気を付けながら指導しようと決意していた。

 

「千夏、分かっているとは思うが、今回も一夏に怒られるようなことをすれば、確実に嫌われる」

 

「これ以上一夏のお姉ちゃん離れが進むと、わたしたちは耐えられないところまで来ているからな……」

 

 

 一夏としては、別にこの姉二人がいなくても何とかなるくらいの知恵と実力はつけているので、これ以上嫌う必要も無いのだが、姉二人から見れば、これ以上一夏に嫌われるのは耐えがたい苦痛でしかない。

 

「それで、今回は誰の指導をすればいいんだ?」

 

「一夏からもらったリストには、日下部、鷹月、アメリア、布仏妹、相川だな」

 

「五人中四人がわたしたちのクラスか」

 

「それだけ期待値が高いということだろう」

 

 

 他のクラスに比べて、一年一組は専用機持ちもだが担任教師も多い。しかも元日本代表の三人と、元候補生が授業を担当しているのだから、他のクラスより成長して当たり前ではある。

 だが、脱線が多い真耶と、自分たちを基準に考える織斑姉妹の授業では、成長する見込みは低かった、それを補っているのが、碧と一夏の二人だ。

 

「こいつらが成長すれば、亡国機業に下ったと言われているあのバカ箒を抹殺することが可能になるだろうな」

 

「そうだな。IS学園の警備をこいつらに任せて、わたしと千冬の二人で亡国機業ごとぶっ潰す事が出来るだろうし、一夏の周りの警護レベルも格段に上がるだろう」

 

「何故布仏妹が一夏の護衛なのか、私には分からないがな」

 

 

 本音は確かに実力者ではあるが、あの性格故護衛には向かない、というのが織斑姉妹の考えだ。実際に、再び海外に向かった一夏の護衛についたのは、本音ではなく今回も碧だ。

 

「四月一日はまぁ、候補生でもあるから仕方ないが、何故毎回小鳥遊なんだ?」

 

「アイツばっか一夏と海外旅行など、許せんな」

 

「仕事だと思いますけど?」

 

「何か用か、ナターシャ・ファイルス」

 

 

 音もなく現れたのに、織斑姉妹は驚くこともなく侵入者の名を呼んだ。

 

「一夏君から見張りを頼まれたので。くれぐれもやりすぎないように注意してくださいとの伝言も預かっていますので、お願いしますよ」

 

「どれだけ信用されていないんだ、私たちは……」

 

「確かにわたしも千冬も、前はやりすぎたと反省したが、それだけで何度も注意する必要はないだろうに……」

 

「成長する前に使い物にならなくされたら困るから、とも言っていましたね」

 

 

 再びナターシャから告げられた一夏の伝言に、織斑姉妹は膝から崩れ落ちたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中国の候補生は、今回招集されなかったので、鈴は久しぶりに悪友二人と遊んでいた。

 

「てか、あんたたち補習じゃなかったの?」

 

「昨日で終わったんだよ」

 

「てか、一夏は来れなかったのか?」

 

「更識の仕事で、昨日からフランスに行ってるわよ。一昨日までは日本での仕事で忙しそうだったけどね」

 

「ホント、忙しいやつだよな」

 

 

 五反田弾と御手洗数馬と三人で遊んでいる鈴は、事情を知らない人間から見れば男を引き連れる悪い女、にも見えなくはないが、鈴は別に女尊男卑を善としているわけではない。むしろ、努力しないで偉ぶっている女に嫌悪感を抱く方だ。

 

「一夏のヤツ、IS学園でどんな生活を送ってるんだ? やっぱりハーレムなのか?」

 

「ハーレムかどうかは知らないけど、人気者ではあるわね。一夏は嫌がってる感じだけど」

 

「そういえば、対人恐怖症と女性恐怖症のダブルなんだっけ? それでよく女子高に通ってるよな」

 

「世界で唯一の男性IS操縦者だからね。一夏んところの家が、男性でも遊べるVTSゲームを発表したから、そのうち他の男性操縦者も現れるかもしれないけど」

 

「ゲームと本物は違うだろ? そもそもあれは、リアル体験だけど実物じゃないって言ってなかったか?」

 

「女子はあれで特訓すれば適性が上がるんだけど?」

 

 

 実際、IS学園ではアリーナや訓練機の使用許可が取れなかった生徒が、VTSを使って訓練する様子がかなりの確率で見られる。そして、その訓練の結果はしっかりとテストに反映されているのだ。

 

「最初から適正ゼロの俺たちが練習しても、せいぜい一くらいにしかならないだろ」

 

「てか、何処のゲーセンも長蛇の列で、プレイまで二時間待ちとかが当たり前だからな……熱が冷めるまでプレイ出来ないだろ」

 

「そうねぇ……あたしは学園でいくらでも出来るけど、あんたら二人は学園に入れないものね……確実に不審者として警備の人に突き出されるだろうし」

 

「一夏の家にはないのか? 開発元なら、あってもおかしくなさそうなんだが」

 

「バカね。一夏の家って言えば、あの大企業・更識なのよ? あんたらみたいなヤツが遊びに行けるわけないでしょうが。それに、あたしも一応は敵国の候補生なんだから、更識の本拠地になんて入れないわよ」

 

「友達の家に遊びに行くだけなのに、なんでこんな悩まなければいけないんだか……」

 

「その家が、世界が羨む技術力を誇る更識企業だからよ」

 

 

 数馬の愚痴に的確なツッコミを入れて、鈴は弾の部屋で格ゲーにいそしむことにしたのだった。

 

「てか、あんたら弱すぎ。これはISの技術関係ないんだけど?」

 

「でも、実物を動かしてる鈴に、勝てるわけないだろ。特性とかどの機体にはどの武器が有効か、なんて俺達には分からないんだから」

 

「勉強すれば誰でも覚えられるでしょうが。少しはあたしを楽しませなさい」

 

「横暴だ……」

 

「昔から態度だけはデカいんだから」

 

 

 鈴の前で禁句を呟いた弾は、その後二時間は目を覚まさなかったのだった。




頭脳は一般よりだいぶ下だからなぁ……

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