暗部の一夏君   作:猫林13世

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普通は避けたいものだ……


織斑姉妹とのデート?

 一夏たちが買い物を楽しんでいる頃、不機嫌な雰囲気を隠そうともしない二人と一緒に行動していた少女がいた。

 

「何故わたしたちが貴様の相手をしなければいけないんだ」

 

「お前などさっさと更生施設に送りつけてしまえば全てが丸く収まるというのに……」

 

「私はなにもしていないではないですか! 千冬さんや千夏さんだって分かってるでしょうが」

 

「まだいうか……お前がした事はIS学園で生活する全ての人間に危害を加える恐れがあったんだ。それを、一夏の温情で私たちと臨海学校が終わるまで行動を共にする事で許してもらえたんだぞ。一夏に感謝するならまだしも、何時まで逆恨みしてるつもりだ」

 

 

 箒に科せられた罰は、織斑姉妹との楽しいデートだ。だが日数の指定はされていないし、臨海学校の時に余計な事をされないように織斑姉妹がそこまでは行動を共にすると決めたのだった。

 

「だいたい、お前さえいなければ今頃、一夏やマドカと一緒に買い物に行けたというのに……」

 

「あぁ、一夏とマドカの水着姿……お姉ちゃんは見たいぞ」

 

「行けば良いじゃないですか。私は一人でも大丈夫です」

 

 

 箒の提案に、二人は一瞬一夏に頼まれた事を忘れかけたが、すぐに箒の危険性を思い出して首を左右に振った。

 

「本当ならそうしたいが、お前が余計な事をしないとも限らないからな」

 

「次余計な事をすれば、さすがの一夏でもお前を庇わないだろうからな。昔馴染みというだけで、一夏は随分甘い」

 

 

 一夏が箒を見捨てれば、今すぐにでも彼女は更生施設送りか、最悪警察のお世話になっているだろう。「篠ノ之束の妹」というだけではもう、庇いきれないくらい箒の言動行動は問題視されているのだ。

 

「一夏が甘い? 冗談は言わないでくださいよ千夏さん。幼馴染の私を無視して、わけのわからない連中ばかりと話してる一夏が甘いわけないでしょう」

 

「お前は一夏の幼馴染でも無ければ友人でも無い。それを理解出来ないお前の頭を叩きつぶしたいところなんだぞ。それを一夏が学園に迷惑がかかるからと言って抑えてるんだ。一夏がいなかったら、お前は既に生きて無かっただろうな」

 

「そもそも一夏がいなければ、私だってアイツに抗議する必要は無くなるんですが」

 

「お前のは抗議ではなく暴行だ。わたしだってお前を殺したい気分だが、一夏にダメだと言われてるから殺さないだけだ。束の妹だろうがお前の行動は問題だからな」

 

 

 奇行の目立つ束だが、それでも箒ほど凶暴な事はしない。そもそも他人の区別がつかない束にとって、周りに迷惑をかけるなどと言う概念が存在しないので、一夏に怒られない程度にふざけてただけなのだ。だが箒の場合は、一夏に自分を認めさせることが目的であり、その為には周りを排除しても構わないという思考の持ち主だと織斑姉妹は分析している。その所為で友達も出来ないし、その行動が一夏を遠ざけているのだと理解しない限り、一夏が箒に振り向くとも思っていない。

 

「貴様は本来なら臨海学校に同行させたくもないところだが、学校行事だからな。私と千夏がしっかり監視し、部屋も私たちと同部屋だ」

 

「一夏はどの部屋なんですか? 男一人で部屋を使わせる余裕があるんですか?」

 

「一夏は更識妹、布仏妹、四月一日と同部屋だ。あいつらは家族だから特例で認められる」

 

 

 血涙を流しながらいう千夏に、箒は一つの提案をする事にした。

 

「家族と言うなら、千冬さんと千夏さんも認められるのでは? 私の監視というなら、一夏もその任を務めるべきだと思いますが」

 

「確かにそうだが、一夏とお前を同じ部屋で生活させるわけにはいかない。お前が一夏を襲いかねないからな」

 

「性的なトラウマまで植え付けられたら堪らんからな」

 

 

 箒が常日頃「邪魔さえ入らなければ子供の一人や二人……」と言っている事を織斑姉妹も知っている。そんな箒と一夏を同じ部屋にしたら最後、一夏が襲われるのは必至だろう。そして箒が手加減するとも思えないので、魅力的な提案ではあったが断腸の想いで却下したのだった。

 

「しかしですね! いくら一夏とはいえ、女子三人と同部屋では、何をするか分かりませんよ」

 

「一夏は利口で優しい子だ。あの三人の事を大事に思ってるのは、わたしや千冬でも理解出来る」

 

「そもそも一夏とそこら辺の男子高校生を一緒にするな! 一夏はそう言った本すら持ってないんだぞ」

 

 

 興味が無いのではなく、興味を向けている暇が無いのだが、その辺りは織斑姉妹にとってどうでも良い事なのだ。一夏がそういった本を持っていない、その事実だけが必要なのだから。

 

「ですが、高校生にもなってそのような本に興味が無いなど、おかしいではありませんか! もしかしたら男色の気が……」

 

「「一夏を侮辱するな! このバカものが!!」」

 

「しかし、一夏はこれだけ女子に囲まれているのに、誰一人一夏に手を出された女子はいません。これは疑っても仕方ないとは思いませんか?」

 

 

 一夏は手を出さないのではなく、トラウマから一定の距離を保たないと付き合えない相手が多いだけであり、恋愛にも興味はあるだろうし、間違っても男色の趣味は持ち合わせていない。それは普段の一夏をちゃんと見ていれば分かる事で、分かっていないのは箒だけなのだ。

 

「お前は今後一夏の事を口にするな。不愉快だ」

 

「もし口にしかけたら、私たちが力ずくで止めるのでそのつもりで」

 

「で、ですが!」

 

「黙ってろ、小娘」

 

 

 千冬の殺気に中てられて、箒は渋々口を噤んだ。普通の女子高生では、今の殺気だけで気を失いそうだが、その辺りは箒ならではなのだろう。一応鍛えているだけあって、殺気だけでは気を失わないだけの胆力を持ち合わせていたのだった。




箒じゃ織斑姉妹から逃れなれない……

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