暗部の一夏君   作:猫林13世

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新キャラ? なのだろうか……


エイミィの専用機

 IS学園内で発行されている新聞に、エイミィの専用機情報が掲載されていた。どう取材したのかは分からないが、新聞部の黛薫子が一夏から専用機の内容を聞きだし、そして今朝の新聞に掲載したのだ。

 

「これは……薫子ちゃんを問い詰める必要がありそうね」

 

「お嬢様、私もお供します」

 

「薫子ちゃん、虚ちゃんの事苦手だもんね」

 

 

 そんな話をしてる所に、薫子とエイミィ、そして少し疲れた顔をしている一夏がやってきた。

 

「かっちゃん、私の渾身の記事はどう?」

 

「そうね……聞きたい事が沢山あるから、今から部屋でお話ししましょうか? もちろん一夏君とエイミィちゃんも一緒に来てね」

 

「な、何でそんなに怒ってるのかなー? って! 何で布仏先輩まで怒ってるんですか!?」

 

 

 刀奈よりも背後の虚が気になってしまい声を上げる薫子。薫子の背後ではエイミィと一夏が苦笑いしている。

 

「怒られる原因に心当たりがあるんじゃないですか? 薫子先輩、専用機の試運転をしてるアリーナに忍び込んでたですから」

 

「あっ、こら! 黙ってるって約束したじゃない!」

 

「まだ口止め料貰ってませんから」

 

 

 しれっと言い放ったエイミィに、一夏は更なる苦笑いを浮かべた。

 

「そもそも初めから刀奈さんに教えるつもりだっただろ、エイミィは」

 

「あっ、バレてた?」

 

「口止め料を貰ったら同罪だったからな。更識所属になるエイミィがそんな浅はかな考えは持たないと思ってた」

 

「さて、何か言いたい事はあるかしら、薫子ちゃん」

 

「……じゃ、ジャーナリストを志す者として、スクープの匂いには敏感なんです」

 

「では、黛さんにはジャーナリズムとはどのようなものかをみっちり教え込んで差し上げますよ」

 

 

 刀奈の背後でゆらりと動いた影に、薫子は竦み上がる。普段は大人しい雰囲気の虚だが、彼女は更識所属の中で最も怒らせてはいけない人だと更識内でも思われているのだ。そして彼女の怒りトリガーの殆どは一夏に関係する事であり、一夏にストーカー紛いの行いをしていた薫子を許せるはずもなかった。

 

「さ、更識君! お助けを!」

 

「俺もどうやって忍び込んだのか知りたいですからね。侵入した時には気配を感じませんでしたし」

 

「一夏さんが作業に集中してたからですよ。私は普通に気付きました」

 

「私もです、一夏様」

 

 

 一夏の背後から二人の声が聞こえてきた。一人は既に見慣れている黒髪の美人、闇鴉。だがもう一人は、声も顔も知らない相手だった。

 

「一夏君、その人は?」

 

「ん? あぁ、刀奈さんたちは初対面でしたね。挨拶しろ」

 

「この度アメリア=カルラさんの専用機として造られましたスサノオと申します。以後お見知りおきを」

 

「最初から人の姿になれるんだ」

 

「私に使われているコアは、篠ノ之束博士が気まぐれでお造りになった自立進化型ですので。一夏様が保管している間に人間に対する好感度は最高にまで上がっていますし、この姿の方がインパクトを与えられると思いましたので」

 

 

 どうやらエイミィの専用機は悪戯好きのようだと、同類の刀奈はすぐに理解した。これからはスサノオとコンビを組んで悪戯を仕掛けるのも面白そうだと、彼女の頭の中では既に計画が練られていた。

 

「とりあえず黛さんは立ち入り禁止だったはずのアリーナに忍び込んだ事を詳しく聞かせてもらいますので」

 

「お助けー!」

 

 

 虚に引き摺られるように連れ去られた薫子を見送り、刀奈は慌てたように二人を追いかけた。

 

「待って! 私も訊問するー!」

 

「……生徒会長が廊下を走って良かったのでしょうか?」

 

「刀奈さんのあれは早足で誤魔化せるレベルだから大丈夫だろ」

 

 

 呆れた顔で問う闇鴉に、一夏は苦笑いを浮かべながら答えた。

 

「ところで一夏君、スサノオの待機状態ってどんななの?」

 

「実際になってもらえばいいだろ」

 

「そうだね。スサノオ、待機状態に移行」

 

 

 エイミィの声に反応して、スサノオはエイミィの腕に巻き付いた。

 

「腕時計なんだ。あれ? でもこの時計、時間があってないよ?」

 

『そこはご自身で調整してください。今の私には手がありませんし』

 

「? 私、腕時計の調整の仕方なんて知らないんだけど」

 

「俺がやるよ。貸して」

 

 

 腕からスサノオの待機状態である腕時計を外し、一夏に手渡すエイミィ。スサノオとの会話は一夏にも聞こえているようだった。

 

「ねぇねぇ一夏君。スサノオの武器ってどれも特徴があるって感じがしないんだけど」

 

「今のところはエイミィには使いこなせないからな。もう少しスサノオとの関係が発展したら実力を発揮出来るだろうさ、ほら」

 

 

 時間を合わせ終わった一夏からスサノオを受け取り、再び腕に着ける。そして今の話で気になったところを一夏に問いかける。

 

「それってつまり、スサノオには隠された強さがあるって事?」

 

「そうだな。だけど、それを発動させるにはまず、スサノオとの関係の進展と、衝撃に耐えられるだけの身体作りだな。少なくとも、マドカくらいには体力が欲しいかな」

 

「マドカちゃんって、結構体力あるよね? 少なくとも更識所属で最下位じゃないと思うけど」

 

「体力だけで言えば、簪や本音の方が下だな。ISがあれば別だが、IS無しだとあの二人は運動音痴だから」

 

「一夏君が言う運動音痴は世間一般とはズレてそうだしな……とりあえず朝の運動を毎日続けられるように頑張るよ」

 

 

 更識内での常識は、世間一般とズレている事が多い。その事はエイミィも理解していた。スサノオの隠された強さを発揮出来るように、より一層の努力をしようと誓ったのだった。




漢字にするの面倒だっただけで、前作のアイツとキャラは同じです。意外と人気だったんだと、この作品を始めて知りました……

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