暗部の一夏君   作:猫林13世

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更識所属を参加させる為にルール変更……


学年別トーナメントのルール

 学年別トーナメント戦で優勝すれば、更識企業から専用機が贈られる。そんな噂が立ったが、すぐに消え去った。だが当事者の一人であるエイミィは少し驚いていたのだった。

 

「(まさかあんな噂が立つなんて……一夏君って随分注目されてるんだ……され過ぎなようにも思えるけど)」

 

 

 自分に専用機を造ってくれると約束してくれたのが保健室、まさか聞き耳を立てていた人物がいたのではないか、エイミィはずっと気になっていた。

 

「(だけど、一夏君の他にも、簪に美紀、本音だって気配には敏いはずだし……)」

 

 

 いったい何処から情報が漏れたのだろうと、エイミィは答えが分からない問いで頭を悩ませていたのだった。

 

「エイミィ、どうかしたの?」

 

「あっ、簪。あの噂って何処から出てきたのかなーって」

 

「噂? 専用機がどうこうってやつ?」

 

「うん。あの話が誰かに聞かれてた――なんて事は無いんだよね?」

 

「間違いないよ。私が気付かなくても美紀と一夏がいたから」

 

 

 気配察知においては、簪より美紀の方が上だ。IS学園に入って一夏と一緒にいる事が多い美紀だからではないが、ここ最近の気配を探る事に関する美紀の成長は著しいものがあるのだ。

 

「じゃあ単なる噂だったのかなぁ……それにしても、そろそろエントリー締め切りなのに、具体的な事を何も教えてもらって無いんだけど」

 

「多分私たちの所為かな……更識所属は参加しても良いのかどうかで揉めてるんじゃない?」

 

 

 一年だけでも、更識所属は五人いる。二年,三年にも更識所属は在籍しているので、それを含めてどうするかを検討しているのだろうと簪は考えていたのだった。

 

「あっ、かんちゃーん! いっちーが探してたよ」

 

「一夏が?」

 

「うん。カルカルも一緒なら丁度良かった。一緒に来て~」

 

「えっ、私も?」

 

 

 簪だけなら完全に更識の用事だと思えたのだが、エイミィも一緒だと違う可能性も出てくる。二人は揃って首を傾げたが、とりあえず一夏の待つ部屋へ――

 

「一夏は何処にいるの?」

 

「ほえ? どこだっけ……」

 

「「……」」

 

 

 簪は携帯を取りだして一夏に所在を確認し、それから移動したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一夏の部屋には現在、一夏、美紀、マドカ、刀奈、虚に加え、本音が呼びに行った簪とエイミィを含む八人が集まっている。エイミィだけ更識所属ではないが、いずれそうなるのでここにIS学園在籍の学生で、更識所属全員が集まっている事になる。

 

「一夏君、話って何?」

 

「学年別トーナメントの件ですよ、刀奈さん」

 

「それでしたら、我々更識所属は出場出来ない事になったのではないのですか?」

 

「職員室でもそのような噂が立っていたようですが、どうやら出られるようです。ただし、何故かペアマッチになり、更識所属の面々はそれぞれ更識所属では無いパートナーを見つけられるのなら参加OKだという事です」

 

「つまり、専用機持ち同士だろうが、更識所属じゃ無ければ大丈夫なの?」

 

 

 簪の疑問を、一夏は軽く頷いて肯定した。

 

「見つけられなくても、当日にルーレットでペアを決める事が出来るようだから、登録だけは出来るようだ。ただし、更識所属の面々しか残って無かった場合は、残念ながら参加不可となるらしい。エイミィはまだ正式に更識所属では無いから、ここにいるメンバーとペアを組んでも問題は無い」

 

「いっちーは参加するの?」

 

「俺は出ない。エイミィの専用機をどうするか更識企業で会議があるからな。当日は学園にいない可能性が高い」

 

「なんか、ゴメンね……私が無理なお願いしたばっかりに」

 

「エイミィだけが問題じゃないから気にするな……」

 

 

 一夏の頭の中には、この間見た前デュノア社社長一家の惨殺死体の映像が浮かんでいた。ISを殺人に使うような組織が存在していると認識した一夏は、尊に頼んでその組織のあぶり出しに動いている。その経過報告もあるので、一夏はトーナメント当日は高確率でIS学園にはいないだろう。

 

「私や虚ちゃんは学年が違うから別に探さなきゃだけど、エイミィちゃんは誰とペアを組むのかしら?」

 

「そうですね……私は中近距離ですから、遠距離が得意な人の方が良いと思うんですよね……美紀、私とペアを組んでくれる?」

 

「良いですよ。簪ちゃんとは違う人とペアを組むのも訓練になるでしょうしね」

 

「さすが候補生。私も美紀と違う遠距離の人を探さないと……セシリアさんなら大丈夫かな?」

 

「じゃあ私はリンリンにお願いしようかな~」

 

「わ、私は……誰とペアを組めばいいのでしょうか?」

 

 

 困った顔で一夏に問うマドカに、一夏は首を捻った。

 

「白式は完全近距離機体だからな……遠距離が得意な人が良いだろう。誰かいたかな……」

 

「シャルルンは?」

 

「シャルロット? そうだな、あの機体は中遠距離型だし、白式との相性も悪くは無いはずだな」

 

「シャルロットですか。兄さまが問題無いと判断されたのでしたら、私が文句を言う道理もありませんね。今すぐお願いして来ます!」

 

「じゃあ私もリンリンにお願いしに行こう」

 

「じゃあ私もセシリアさんにお願いしに行かなきゃ」

 

 

 それぞれのペア希望者の許へ向かった三人を見送りながら、一夏は苦笑いを浮かべながら視線を携帯へと向けた。

 

「一夏君、それって何を見てるの?」

 

「更識の資料だ。見ても良いが一生監視がつくぞ?」

 

「遠慮しとこっかな」

 

 

 笑顔で脅されたエイミィは、大人しく一夏の部屋を辞した。一夏が見ていたのが更識の資料などでは無く、デュノア前社長一家惨殺の資料だとは気付けなかったのだった。




一夏の貫録がヤバい感じに……

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