暗部の一夏君   作:猫林13世

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教師より立派に仕事出来そう……


解析依頼

 目を覚ました一夏は、目の前に三人の美女を確認して、小さく頭を振った。

 

「昨日のアレは夢じゃ無かったんだな、闇鴉」

 

「覚えていてくれましたか。朦朧としてたところでの自己紹介――とあえて言いますが、それだったので覚えておいででは無いと思ってました」

 

「刀奈さんと虚さんには挨拶したのか」

 

「ええ。ところで一夏さん、先ほどから保健室前に教師の気配が複数しているのですが」

 

 

 そういって闇鴉は保健室の扉を開き、盗み聞きをしていた不届き者たちを保健室へと引き込んだ。

 

「紫陽花さんに真耶さん……何してるんですか?」

 

「一応苗字で呼んでくれないかな、刀奈ちゃん……」

 

「更識君に用があって来たのですが、何やら入り難い雰囲気だったもので……」

 

「盗み聞きは感心しませんが、何かご用でしょうか、山田先生。五月七日先生」

 

 

 まだ起き上がるのに苦労している一夏に、虚が手を貸して置き上がらせる。そんな一夏の姿を見て、真耶と紫陽花は少し目を逸らした。

 

「? 何かありましたか」

 

「いえ、痛々しい姿を見て……」

 

「篠ノ之さんはお引っ越しという形で織斑姉妹のすぐそばの部屋に移動させ反省を促しています。織斑さんのルームメイトは鷹月さんに変更になりました」

 

「はぁ……それをわざわざ伝えに?」

 

 

 真耶の言葉に首を傾げながら、一夏は不思議そうに呟く。

 

「いえ……更識君って確か、整備が専門だと言っていましたよね? コアの解析とか出来たりしませんか?」

 

「動けないのでどうとも……ここに持って来ていただけるのでしたら、可能だとは思いますよ」

 

「一夏さん、あまり賛同出来ませんね。今は安静にしているべきかと」

 

「あの……こちらの美人さんはどなたですか?」

 

 

 ずっと気にはなっていたのだろう。紫陽花がおずおずと一夏に訊ねる。

 

「盗み聞きしていたのでは?」

 

「肝心な事は何も聞こえませんでしたし……」

 

「闇鴉、挨拶しろ」

 

「はい、一夏さん。はじめまして、山田真耶先生、五月七日先生。一夏さんの専用機の闇鴉と申します。以後お見知りおきを」

 

 

 闇鴉の挨拶を聞いた真耶と紫陽花は、一瞬ポカンと口を開けたが、先に白式が人の姿に成れる事を知っていた真耶はすぐに現実に復帰した。

 

「なんだ、更識君の専用機も人の姿に成れたんですね」

 

「ええ、昨日のあの事故以降に成れるようになったとか。それで、あの無人機のコアはこちらに持って来られるのでしょうか」

 

「はい、可能です。ですが持ってくるにあたり、私と五月七日先生だけでは安全が確保できないので、小鳥遊先生にも同伴願う形になりますが」

 

「碧さんでしたら問題ありませんよ。そもそも碧さんは俺がISの事に詳しいのを知っていますし」

 

「小鳥遊先輩も更識所属ですからね」

 

 

 そこで漸く現実に復帰した紫陽花が、一夏の言葉に反応した。とりあえずは放課後、という事で刀奈と虚は真耶と紫陽花を保健室から追いやり、自分たちも授業があるからと言って保健室を後にした。

 

「さて闇鴉、束さんがあの無人機を送りつけてきた理由は何だと思う?」

 

 

 人が完全に遠ざかったのを確認して、一夏は闇鴉に問う。問われた闇鴉も特に驚く事無く思案に入った。

 

「そうですね……ハッキングレベルが大した事無かったのを考えると、一夏さんに解決してもらいその実力を知らしめる、といったところでしょうか。唯一の誤算は篠ノ之箒の無駄に素早い動き、でしょうかね」

 

「アイツに知らしめるつもりだったんだろうが、その計画が俺に怪我を負わせる形になった、というわけか……今頃束さん、気にしてるんじゃないだろうか」

 

「血のつながりが無ければ、今頃篠ノ之箒は跡かたも無く蒸発してるでしょうね」

 

「あの人が血縁を気にするとは思えないが……今までも直接手を下そうと思えば出来たんだし、今回もしないか」

 

 

 一夏はとりあえず回復を優先する為に再びベッドに寝転ぶ。闇鴉も心得ているようで、一夏が身体を寝かせる手伝いをシッカリとこなす。

 

「何だか重病人みたいだな。実際は大した事無いのに」

 

「大した事ですよ。頭から流血したんですから」

 

「そうなのか? 気付いた時には傷は塞がってたし、大した事無いと思ってたが」

 

「殆どの人が顔面蒼白になるくらいの重傷だったんですよ」

 

「そうか……心配をかけちまったな……後で謝っておかないと」

 

 

 そう言われれば刀奈と虚にも謝って無かったな、と一夏は今更ながらにそんな事を思っていた。

 

「マドカが静寐と同じ部屋になったとか言ってたし、これで篠ノ之との繋がりがまた一つ減ったんだな」

 

「元々一夏さんとあの人には繋がりなんてありませんよ。もし関係があるとするならば、それは無関係です」

 

「あるのか無いのか分からないな、その表現は」

 

 

 苦笑いを浮かべながら、一夏はポケットから携帯を取り出し、元凶である束に連絡を入れようとした。

 

「まだ電話も止めておいた方が良いですよ。あの人の声は頭に響きますから」

 

「さすがに束さんも俺が怪我をしてると知ってれば大声は出さないと――」

 

『いっくん! 無事!? ちゃんと生きてるの!?』

 

「……五月蠅いですよ、束さん。頭に響くのでもう少し抑えてください」

 

 

 闇鴉の心配の通り、束は大声で一夏の無事を確認してきた。携帯を耳から離しながら束に無事を伝え、声のボリュームを下げるよう頼む一夏。

 

『ごめんごめん、あまりに心配過ぎて、束さんこのままIS学園に突っ込もうかと思ってたから』

 

「はぁ……それで、何故あのような事を?」

 

 

 束に直接説明を求めると、その答えは闇鴉の推測とほぼ同じだった。

 

『あの単細胞、本当に消し去ってやろうかと思ったくらいだよ』

 

「織斑姉妹が監視するようですので、とりあえずは大人しくなるかと」

 

『そう願いたいよ。じゃあいっくん、安静にしてるんだよ。あっ、それからあの無人機のコアはいっくんにプレゼントするよ。怪我を負わせちゃったお詫びにね。じゃあねー』

 

 

 通信が切れたのを確認して、一夏は携帯をポケットに戻し眠りに就くのだった。




とりあえずコアゲット……造れるけどね。

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