暗部の一夏君   作:猫林13世

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フルボッコシーンはカットで……


クラス代表決定

 一夏にあっさりと負けたセシリアは、何が起こったのかを確認する為に一夏のピットを訪れ、そして詰問した。

 

「何なのですか、あれは! 貴方、自分で『強くない』と仰られたじゃありませんの! なのになんですか、あの強さは!」

 

「えっと……あれは闇鴉の特性を使っただけで、闇鴉本来の武装じゃないんですよ」

 

「……どういう事ですの?」

 

 

 理解が及ばなかったセシリアは、詰め寄っていた身体を離し、キョトンとした顔で一夏を見つめる。一夏は詰め寄られていた時より落ち着きを取り戻し、セシリアに闇鴉の特徴を教える事にした。教えたところで、普通の人間には対処出来ないのだからと。

 

「まず姿を消したのだけど、あれが闇鴉の特性『雲隠れ』」

 

「雲隠れ? どういう技ですの?」

 

「体験したオルコットさんなら分かると思うけど、ISのセンサーからも隠れ通す技なんだ。そしてブルー・ティアーズのSEを一気に削った技。あれは織斑千冬さんが使っていた暮桜の単一仕様能力『零落白夜』を真似た技。闇鴉の単一仕様能力である『影真似』で放った斬撃。本物の零落白夜じゃないからこっちのSEはそれ程減らないし、オルコットさんのSEも一撃では削りきれなかった」

 

「つまり、その機体だけの武装なら私には勝てなかったと?」

 

「どうだろう……雲隠れはれっきとした闇鴉の技だし、その特性は武装にも及ぶ。それは体験しましたよね? 放たれた弾丸が当たる直前まで見えなかったはずですし」

 

 

 一夏自身がカスタマイズしてそこまで能力を向上させたのであって、普通の技術者には放った弾丸まで隠せるような技術力は無い。だがセシリアは、一夏が更識所属だからという理由だけでそれを受け容れたのだった。

 

「これが更識の技術力ですの……ですが、貴方は『更識所属で一番弱い』と仰られましたよね? これがあれば勝てるのではなくて?」

 

「隠せるのはあくまでもISの反応だけですから。いくら気配を殺したところで生体反応までは隠せません。そして、更識所属の人間は生体反応さえあれば何処にいるか分かってしまいますから……」

 

「あののほほんとしてる方も?」

 

「あれでも本音は美紀や簪と同レベルの実力を有していますからね。この後戦えばそれが分かるはずですよ」

 

「貴方だけでも次元が違うと思いましたのに、どれだけ別次元なのですの、更識所属のIS操縦者は……」

 

 

 まだ三人と戦わなければいけないセシリアは、ガックリと肩を落として自分のピットへと戻って行った。気配が完全に無くなったのを確認して、一夏は全身に入れていた力を抜いてその場に座り込んだ。

 

『一夏さん、大丈夫ですか?』

 

「うん……まだ大丈夫。相手は篠ノ之さんじゃ無かったし、それほど怒気も無かったからね……」

 

『あまり無理はしないでくださいよ? 一夏さんがトラウマを抱えている事が相手にバレれば、そこに付け込まれるかもしれないんですから』

 

「分かってる。でも、あの人はそこまで悪い人じゃ無いと思う。自分自身を冷静に見る事が出来れば、あの人はまだ強くなると思うよ」

 

 

 相手の事を冷静に分析している一夏に、闇鴉は心の中で称賛を贈り、それ以上何も言わなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 クラス代表選出の為の模擬戦は、美紀が全勝でクラス代表に内定。元々一夏は生徒会に入る為に辞退する旨を伝えていた為、セシリア戦以降は不戦敗となった。

 

「姉さまたちがオルコットさんに勝ったからもう十分だって」

 

「私たちからすれば、一夏さんとも戦いたかったですけどね」

 

「勘弁しろ。美紀や本音、マドカと戦ったところで俺は勝てない」

 

 

 試合後のピットで美紀とマドカと談笑していた一夏の許に、刀奈と虚、そして簪と本音がやって来た。その背後には碧と、そして全敗を喫したセシリアの姿があった。

 

「何かあったのですか?」

 

「まずは美紀ちゃん、クラス代表内定おめでとう」

 

「ありがとうございます、刀奈お姉ちゃん」

 

「それから、一夏君には正式に生徒会役員として働いてもらう事になります」

 

「分かりました。それで、オルコットさんは何故この場に?」

 

 

 碧だけなら更識関係の話かもと思ったが、セシリアがいる事でそれはあり得ない。一夏たちは何故セシリアがこの場にいるのかが気になったのだ。

 

「オルコットさんは、皆さんに謝りたいそうです」

 

「更識一夏さんを侮辱した事、本当に申し訳ありませんでした。自分が驕っていたのを自覚しましたわ」

 

「でも、オルコットさんも十分強かったと思います。本音ちゃんなんて珍しく本気で戦ってましたし」

 

「だって負けたらいっちーに怒られるもん。それに、いっちーを侮辱した事はまだ許して無かったし」

 

「織斑姉妹の殺気に中てられて、オルコットさんは血の気が失せていたじゃないか。あれで許してやらなかったのか?」

 

「「「はい(うん)!」」」

 

「……はぁ。まぁ謝罪を受け入れ、今後は良好なクラスメイトの関係を築いていきましょう」

 

「よろしくお願いしますわ。それから、貴方の事を『一夏さん』とお呼びしても?」

 

「構いませんよ。こちらも『セシリア』と呼ばせてもらいます」

 

 

 多少のしこりはまだ残っているかもしれないが、更識一派とセシリアはこうして和解した。残る問題はセシリアと織斑姉妹の関係だが、これは一夏たちでもどうしようもないので、セシリア本人に任せるのだった。




やっぱり全敗のセシリア……そして一夏は生徒会入りです。

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