暗部の一夏君   作:猫林13世

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ども、猫林13世です。IS二作目、やっぱり自分は更識が好き! と言う事で今回もメインは彼女たちになりそうです。まぁ、今回は前回彼女になれなかった人にもチャンスが……
前作をお読みで無い方にも分かるように説明はしていきますし、須佐乃男では無いISを考えていますのでお楽しみに。


事の始まり

 白騎士事件。それは世界を造り変えたある物のお披露目会的な事だった。造った本人は楽しければ良いという、何とも無責任な理由で造り、それに協力した友人も、まさかこれほど大々的に女尊男卑の世界に創り変えられるとは思っていなかった。

 だがその友人は、その翌日に大切な家族を一人失った。その家族の名は織斑一夏。織斑家の長男であり、彼女――織斑千冬の愛してやまない弟だった。そしてもう一人の姉も、彼の事を溺愛していた。

 

「千冬! 千冬が無責任に束の計画を手伝ったから、一夏が攫われちゃったんじゃない!」

 

「すまない、千夏。だがお前が断ったから私に持ちかけてきたんだぞ」

 

「だって危ない計画だったし、束の計画に付き合ってろくな事無かったじゃないの」

 

 

 織斑家に響き渡る二人の女性の声。いや、まだ高校生の少女に『女性』は当てはまらないかもしれない。だが見た目も声も十分に大人びている少女二人。織斑千冬と織斑千夏。名前からも分かるように、彼女たちは双子だ。

 この二人と一緒に過ごしてきた大切な弟、一夏は何者かに攫われ、未だに消息が分からずにいる。諸悪の根源である篠ノ之束は現在行方不明。つまり千夏は彼女を問い詰める事が出来ないのだ。

 

「とにかく一夏を探さないと。あの子は優しいし可愛いから殺されたりはしないと思うけど……」

 

「それもそうだな。だが一夏の心配と同時に、私たちの生活の心配も並行してしておかないとマズイかもしれんぞ」

 

「……千冬もわたしも家事一切が出来ないものね」

 

 

 幼い弟に家事を任せる事に始めは抵抗があった二人だったが、一卵性双生児であるが故に、似て欲しくないところまで似てしまっているのだ。そう、家事が苦手だというところが……

 

「とりあえず、日本のとある暗部組織に捜索を依頼してある」

 

「どうやってそんな連中とコンタクトを取ったのよ」

 

「お前も知ってるだろ。同級生の小鳥遊だ。アイツはとある暗部組織の一員で、一夏とも面識があったからな」

 

「なるほど。でも、見つけ出せたとして、報酬は? わたしも千冬もそんなにお金持ってないし」

 

「………それは考えてなかった!?」

 

「ほんと、肝心なところが抜けてるんだから……」

 

 

 普通に捜索願を出せば良かっただけなのに、千冬はその事に気がつけなかった。千夏は盛大にため息を吐いて、小鳥遊に電話をする為に携帯を取り出す。

 

「それで、その小鳥遊さんの番号は?」

 

「知らん。こちらのを教えただけで、向こうのは聞いてないからな」

 

「……我が姉ながら、何でそんな事も出来ないのか不思議よ」

 

「姉と言っても、たかだか数十分だけの差だ。千夏と私にそれほどの差は無いだろ」

 

「それでも、貴女は織斑家の長女で、わたしは次女なの。それくらい知ってるでしょ!」

 

 

 言い争う中、千冬の携帯に着信を告げるメロディーが流れる。表示された番号は諸悪の根源の物だった。

 

『やっほーちーちゃん、なっちゃん! 束さんは今最高に気分が良いよー』

 

「束! 貴女の所為で一夏が攫われちゃったじゃないのよ!」

 

『何それ!? 束さんはそんな事知らないんだけど?』

 

「ISを欲した何処かの阿呆が、我らの天使、一夏を攫ったんだ!」

 

『いっくんが攫われた……? 束さんはいっくんに酷い事をしたかった訳じゃ無いのに……』

 

「だからわたしは反対したのよ! ろくな結果にならないからって!」

 

『とにかく、束さんもいっくんの行方を探してみるよ! こんなことなら、いっくんにGPSでも付けておけば良かったよ……』

 

「このストーカーめ!」

 

『可愛い弟を心配するのは、姉として当然だよ』

 

「「束は一夏の姉じゃない!」」

 

 

 千冬と千夏の声が揃ったタイミングで、千冬の携帯にキャッチが入った。番号は知らない物だった。

 

「スマン、束。お前と阿呆なやり取りをしてる場合じゃないんだ。一夏の事、頼んだぞ」

 

『はいは~い! 束さんの力、思い知らせてあげるよ』

 

 

 束との通信を切ったあと、千冬は掛って来た電話に出る。

 

「誰だ?」

 

『あっ、織斑さん? 私、小鳥遊ですけど』

 

「見つかったのか!?」

 

『え、ええまぁ……一応は織斑一夏君を保護する事に成功しました』

 

「そうか……良かった……ん? おい、お前今、『一応』と言ったか?」

 

 

 安堵したのも束の間、小鳥遊の言葉に引っかかりを覚えた千冬は、声のトーンを落として問いかける。

 

『一夏君を攫ったのはとある犯罪組織でして、貴女たちの事を聞き出そうとしてかなり酷い拷問を行ったようなのよ。もちろん粛清は出来るように捕えてあるから、貴女と千夏さんで好きにして構わないわ』

 

「感謝する。それで、一夏の容体は?」

 

『……残念だけど、記憶の殆どを失ってしまっていて、今はお嬢様たちと一緒に遊んでいるわ』

 

「記憶を……何処まで覚えてる! 私たちの事は覚えているのか!?」

 

 

 携帯に怒鳴りつける千冬。その姿を見て、千夏は顔面を蒼白にしている。

 

『……一夏君が覚えていたのは、自分の名前だけ。あとは何も覚えてなかったわ』

 

「それじゃあ、一夏は私や千夏の事も……」

 

『残念だけど……それから、一夏君の事は暫く私たちが――更識が護ります。だから少し時間が経ってから一夏君に会いに来てあげて。今は彼、精神的に凄く不安定だから』

 

「そうか……手間を掛けたな」

 

『ううん、クラスメイトでしょ。それに、私も一夏君の事は知ってたし』

 

 

 そう言って依頼した相手――小鳥遊碧は電話を切った。切られた千冬は、暫く呆然とした後、妹の千夏に今聞いた事を伝えたのだった……




とりあえず前作ヒロイン、小鳥遊碧を登場。今回は千冬たちとは同級生です。そのうち美紀や香澄なんかも出したいな……ヒロイン候補として。
ちなみに、アンチまではいきませんが、箒とセシリアとシャルロットは前作と似た扱いになるかと……ようは問題児ですけど。ハブにはしませんけども、この三人のファンの人には、あまり精神衛生上よろしくない展開になるかもしれませんので、お先にご了承ください。

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