ソードアート・オンライン~黒の剣士と絶剣~ リメイク版 作:舞翼
では、本編をどうぞ。
病院を出た車は、数分で埼玉県所沢市の病院に到着した。 この総合病院の最上階に、木綿季たちが居るのだ。
取り敢えず、車から降り、病院の玄関を潜り一階ナースステーションで受け付けを済ませてから、来客用のパスを貰い一階の右端にあるエレベーターに乗り込むと、加速度を殆んど感じさせないまま最上階に到着し、エレベーターの扉が滑らかに開いた。
長い廊下を歩き、左端に曲がった所で、目的の場所へ到着した。――其処には、紺野木綿季様、紺野藍子様、結城明日奈様、と、ネームプレートに名前が彫られていた。 内部からは、楽しそうな話声も聞こえてくる。
俺は扉をノックし、
「……桐ケ谷和人だけど、約束通り来たぞ」
『あ、和人。 今開けるね』
そう言ったのは、木綿季だ。
ドアが滑らかに開き、木綿季がひょこりと顔を出し、優しく微笑んだ。
「会えて嬉しいよ」
「ああ、俺もだ」
そして俺は、木綿季に手を引かれ、病室内部へ入って行く。 前を見ると、妖精のような少女たちが微笑んでいた。――俺の幼馴染、紺野藍子。
俺は二人を見ながら、右手を上げた。
「よう、昨日ぶりだな」
「ええ、そうですね」
「待ってたよ、和人君」
それから俺も用意された椅子に座り、現在に至るまでの話をする事にした。
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「……和人君。 それって完全に脅しだからね」
「和人の無茶苦茶ぶりは、今に始まった事じゃないしね」
「そうですね。 SAOでは、振り回されっぱなしでしたし」
菊岡とのやり取りの話を聞き、明日奈は溜息を吐き、 木綿季は苦笑、藍子は再び呆れが入っていた。 てか、三人とも失敬な。
「お、おう。 何かすまん……」
……やっぱり、この中の攻勢図じゃ、俺は一番下だ。 それでもいいや。っていう自分も居るんだけど。
と、その時。 ドアが開き、新たな人物が部屋の中に入って来る。 その人物とは――紺野家両親と結城家の両親だ。……いや、何。 ここで桐ケ谷家の母親が来たら、
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「誰かと思えば、和人君じゃない」
「確かにそうだ。 大きくなったね」
そう言ったのは、紺野姉妹の両親である。 母親の名前は、紺野春香。 父親の名前は、紺野雄介だ。
「あら、明日奈の親友っていう子だったわよね」
「明日奈がこんな風に明るくなったのは、三人が一緒に居てくれたからと言ってたしな」
此方の両親は、明日奈の父親である、結城彰三。 母親の結城京子だ。……つーか、両家の両親が揃うとか、コミュ症の俺には色んな意味でキツすぎる……。 とにかく、自己紹介をしないと失礼になってしまう。
俺は椅子から立ち上がり、回れ右をしてから両家の両親を見た。 次いで、木綿季たちも立ち上がる。
「桐ケ谷和人です。 よろしくお願いします」
……固苦しい挨拶になった俺を見て、木綿季たちは『まったく、コミュ症なんだから』って呟いてたけど。 いやね、コレが俺の限界なんです……。
「ははは、固くなりすぎだよ。 桐ケ谷君」
そう言って微笑んだのは、彰三氏だ。 結城彰三氏は、総合電機メーカー≪レクト≫の最高経営責任者らしい。
彰三氏は、SAO事件で莫大な負債を抱え消滅しそうになった≪アーガス≫からSAOサーバーを引き継ぎ、維持をしてるらしい。 結果としては、SAOそのものは消滅してないって事だ。
SAOのサーバーをコピーして、アルヴヘイム・オンラインってゲームを運営してるとは驚きだ。 SAO事件があったのに世間に出したって聞いた時は、『かなりの博打だなぁ』って思った。 でもまあ、ナーヴギアの後継機と開発したアミュスフィアは、ナーヴギアと違い、“被る”ではなくて、“付ける”の違いがある。
微弱な電磁波も出る事はないし、内臓バッテリーも無い。 外から強制終了が可能ということ。 つまり、安全は保障されてるってわけだ。 何といっても、アルヴヘイム・オンラインのコンセプトは“妖精の世界”だそうだ。
「(……つーことは、ナーヴギアのデータをアミュスフィアに移行させて、アルヴヘイム・オンラインの中で“ユイの心”をオブジェクト化をすれば、ユイに会えるって事だよな……)」
《アルヴヘイム・オンライン》は《ソードアート・オンライン》コピーサーバーなのだ。 可能性は十分にある。……後は、レベルとか熟練度がとんでもないことになってる位か。……ニュービーが、ほぼ最強プレーヤーとかチートすぎだろ……。
「私からは、お礼を言わせて頂戴。 桐ケ谷君。――いえ、桐ケ谷君と紺野さんね。 明日奈を
京子さんが言うには、結城家の両親は明日奈に期待し、彼女をエリートに育てる為人生のレールを敷いていた。 だが、明日奈がSAOに囚われ、自分たちが間違えてた事に気付いた。――そう、自分たちの理想像を明日奈に押し付けてるだけだと。 彰三氏と京子さんは反省し、そして明日奈の帰還を願い、今後の人生は明日奈の自由にさせると決めたそうだ。
まあ、エリート共が明日奈のお見舞いに来た時色々あったそうだが、明日奈は涼しい顔で全て受け流したらしい。 流石、血盟騎士団副団長といった所だ。 かなり肝が据わってる。
「(……今となったから言えるけど、SAOの経験って凄ぇな……。 まあ、俺たちにも言える事だけど)」
すると、明日奈は微笑み、
「お母さん、お父さん。 これからは自分で決められるし、一生の友達もできた。 SAOの経験も悪い事だけじゃなかったのよ」
「……そうか。 儂たちはもう何も言わない。 明日奈の人生だ」
「私たちの手から離れたのかもね。 もう、一人前の大人に見えるわ」
明日奈は、頬を可愛らしく膨らませる。
「……それって、私が老けたって言いたいのかしら」
「違うわ。 精神が既に大人になってるといえばいいのかしら、そんな感じなのよ。 今の明日奈は、怖いものなんてないでしょ?」
……いや、京子さん。 明日奈はまだ怖いものはありますよ。 暗い所とかお化けとかですけど。
すると、結城家の両親は頭を下げた。
「桐ケ谷君、紺野さん。 明日奈を救ってくれたありがとう」
「もし困った事があったら、遠慮なく相談してくれ」
俺と紺野姉妹はあたふたする。 当然だ、かなり偉い人たちが、まだ未成年の俺たちに頭を下げているのだ。
「ちょ、頭を上げて下さい! 俺たちは友達に当然の事をしたまでです」
時々、ぶつかりあった事もありましたけど。と付け加える。 でもまあ、それがあったからこそ、今があるともいえるんだよなぁ。
「そ、そうです。 だから、頭を上げて下さい」
「わ、私たちこそ、明日奈さんにはお世話になったんですよ」
結城家は、『ありがとう』と言って、頭を上げてくれた。……つーか、今のでどっと疲れたんだが……。
しかし、これだけで終わらかったんだなぁ……。 俺と明日奈がだけど。
「和人君、明日奈さん。 オレと妻からもお礼をさせてくれ」
「ええ、そうね。 あの世界から無事に帰って来れたのは、和人君と明日奈ちゃんの力があったからこそだと思っているわ」
紺野家は、俺と明日奈と見ながら頭を下げた。……何故か知らんが、俺の精神がガリガリ削られていくんだが……。
ともあれ、
「あ、頭を下げないで下さい」
……正直、対応に困るんですよ、はい。
明日奈も、『どうしよう……』って顔である。……まあ当然の反応だと思うぞ。
「いえ、私も助けられた立場です。 私もMMOの事は初心者の域だったんですから。 全ては、和人君のお陰です」
おいこら、俺に押し付ける?なよ、明日奈さんや。 だってほら、紺野夫婦が俺だけを見るようになったじゃんか……。
「ま、まあ、木綿季たちと再会できたのも奇跡だったんですから、全ては天のお陰ですよ。 俺は何もしてないですよ、はい」
そう言ったら、何とか頭を上げてくれた。 でもまあ、一万人の中から再会できるなんて奇跡に近いと思う。……運命、だったのかなぁ……。 いや、それはないか。
――閑話休題。
紺野夫婦の話によると、罪悪感で押し潰されそうになっていたらしい。――なぜ、あの時、ナーヴギアとSAOのソフトと購入してしまったとか、もっとナーヴギアの特製を理解してればとか。 その他諸々である。
だが、木綿季と藍子が常にトッププレイヤーと行動し、最前線で戦っている事を聞いて、自分たちが落ち込んでる場合じゃないと。 今、自分たちにできる事をやって、帰還した時に笑顔で迎えられるようにと。 そう思いながら行動をしてたらしい。
「……私たちはこれで失礼するよ。 和人君たちは、積もる話もあるだろう」
「そうね。 そうしましょう」
「皆さん、明日奈をお願いしますね」
「……そうだ。 後、これを」
彰三氏が傍らの鞄から取り出したのは、四つのアミュスフィアとアルヴヘイム・オンラインのパッケージだ。
俺たち四人は、彰三氏からそれを受け取る。『あんな事があった後だが、お礼の品だと思って受け取ってくれ』という事らしい。
おそらく俺たちは、SAOというゲームに囚われたのに、アルヴヘイム・オンラインに確実にログインするだろう。 てか、“妖精の世界”ってもの気になるし。
それから、紺野家と結城家は、病室から退席した。
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紺野家と結城家が退席し、俺たちは元の席に座っていた。
「んで、木綿季たちは、彰三氏から貰ったアミュスフィアは使うのか?」
「そりゃもちろん! “妖精の世界”っていうのも気になるしね」
木綿季がそう言ってから、明日奈がパッケージを見ながら口を開く。
「“妖精の世界”っていうからほのぼの系だと思ったけど、これはかなりハードだね」
ドスキル制、プレイヤースキル重視、PK推奨。 《レベル》が存在せず、各種スキルが反復使用で上昇するだけで、ヒットポイントは大して上がらないそうだ。 戦闘もプレイヤーの運動能力依存で、
「妖精なので《飛べる》らしいですよ」
藍子が言うには、フライト・エンジンとやらを搭載してて、慣れるとコントローラ無しで自由に飛び回れるらしい。 中々、冒険心に駆られるゲームでもある。
俺もパッケージの説明書を見やる。
「妖精にも、沢山種族があるんだな」
妖精の種類は、九種だ。 種族によって得意、不得意もあるらしい。
「(ふむ。
なぜか知らないが、木綿季たちに一斉に見られる。
「なるほどなるほど。 和人は
「そうだね。 黒いし」
「魔法効果とか、その他諸々も見ないで
木綿季、明日奈、藍子の順である。
てか、何で解った。 こいつらエスパーか!?」
「「「和人(さん)(君)が解りやすいん(だよ)(です)」」」
「……さいですか」
ちなみに、明日奈と藍子は
ともあれ、……あの時間がやってきてしまった。
「それじゃあ、和人君。 その場で正座」
「私たちが、何を言いたいか解りますよね?」
「……はい、解ります」
渋々、その場で正座をする俺。 木綿季は安全地帯で苦笑だ。
そして、殺気に似たものを醸し出し、俺を見やる明日奈と藍子。……いや、何。 マジで怖い……。 本当怖い……。 俺、死ぬんじゃね。
「……和人君。 貴方はいつも無茶をしすぎです」
「……私たちに、どれだけ心配をさせるんですか?」
「……い、いや、あの時はあの方法しかなかっただろ? あ、あの判断は間違ってなかったはずだろ」
あそこで茅場を倒さなければ、犠牲者が増えていた事は否めない。 だから、俺の行動は正しいはすなんだが……。
「そ、それはそうだけど。……それはそれ、これはこれなの!」
「そ、そうです。 和人さんは、いつも心配をかけすぎなんです!」
「……お、お二人さん。 何か、矛盾してる気がするんだが……。 まあでも、俺の行動でいつも心配させてたのは事実だしなぁ」
俺たちは面会時間が終わるまで積もる話をした。 やはり、四人で集まって話をしてると、時が経過するのが早い。
面会時間が終了し、エレベーターで一階まで下り、ナースステーションに来客用のパスを返し、俺は駐車場へ向かった。 その途中で、再び病院の最上階を見やったのだった――。
翠さんはに4人気を遣って、面会が終わるまで買い物とかその他諸々をしてました。
てか、和人君。結城家と紺野家両親と邂逅しましたね(笑)
ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!
追記。
和人君はこの後、お説教を受けました(笑)