ソードアート・オンライン~黒の剣士と絶剣~ リメイク版   作:舞翼

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早めに更新する事ができました。
では、本編をどうぞ。


第40話≪再会と笑顔≫

 病院を出た車は、数分で埼玉県所沢市の病院に到着した。 この総合病院の最上階に、木綿季たちが居るのだ。

 取り敢えず、車から降り、病院の玄関を潜り一階ナースステーションで受け付けを済ませてから、来客用のパスを貰い一階の右端にあるエレベーターに乗り込むと、加速度を殆んど感じさせないまま最上階に到着し、エレベーターの扉が滑らかに開いた。

 長い廊下を歩き、左端に曲がった所で、目的の場所へ到着した。――其処には、紺野木綿季様、紺野藍子様、結城明日奈様、と、ネームプレートに名前が彫られていた。 内部からは、楽しそうな話声も聞こえてくる。

 俺は扉をノックし、

 

「……桐ケ谷和人だけど、約束通り来たぞ」

 

『あ、和人。 今開けるね』

 

 そう言ったのは、木綿季だ。

 ドアが滑らかに開き、木綿季がひょこりと顔を出し、優しく微笑んだ。

 

「会えて嬉しいよ」

 

「ああ、俺もだ」

 

 そして俺は、木綿季に手を引かれ、病室内部へ入って行く。 前を見ると、妖精のような少女たちが微笑んでいた。――俺の幼馴染、紺野藍子。 親友(友達)である結城明日奈だ。

 俺は二人を見ながら、右手を上げた。

 

「よう、昨日ぶりだな」

 

「ええ、そうですね」

 

「待ってたよ、和人君」

 

 それから俺も用意された椅子に座り、現在に至るまでの話をする事にした。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「……和人君。 それって完全に脅しだからね」

 

「和人の無茶苦茶ぶりは、今に始まった事じゃないしね」

 

「そうですね。 SAOでは、振り回されっぱなしでしたし」

 

 菊岡とのやり取りの話を聞き、明日奈は溜息を吐き、 木綿季は苦笑、藍子は再び呆れが入っていた。 てか、三人とも失敬な。

 

「お、おう。 何かすまん……」

 

 ……やっぱり、この中の攻勢図じゃ、俺は一番下だ。 それでもいいや。っていう自分も居るんだけど。

 と、その時。 ドアが開き、新たな人物が部屋の中に入って来る。 その人物とは――紺野家両親と結城家の両親だ。……いや、何。 ここで桐ケ谷家の母親が来たら、混沌(カオス)になるんじゃね……。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

「誰かと思えば、和人君じゃない」

 

「確かにそうだ。 大きくなったね」

 

 そう言ったのは、紺野姉妹の両親である。 母親の名前は、紺野春香。 父親の名前は、紺野雄介だ。

 

「あら、明日奈の親友っていう子だったわよね」

 

「明日奈がこんな風に明るくなったのは、三人が一緒に居てくれたからと言ってたしな」

 

 此方の両親は、明日奈の父親である、結城彰三。 母親の結城京子だ。……つーか、両家の両親が揃うとか、コミュ症の俺には色んな意味でキツすぎる……。 とにかく、自己紹介をしないと失礼になってしまう。

 俺は椅子から立ち上がり、回れ右をしてから両家の両親を見た。 次いで、木綿季たちも立ち上がる。

 

「桐ケ谷和人です。 よろしくお願いします」

 

 ……固苦しい挨拶になった俺を見て、木綿季たちは『まったく、コミュ症なんだから』って呟いてたけど。 いやね、コレが俺の限界なんです……。

 

「ははは、固くなりすぎだよ。 桐ケ谷君」

 

 そう言って微笑んだのは、彰三氏だ。 結城彰三氏は、総合電機メーカー≪レクト≫の最高経営責任者らしい。

 彰三氏は、SAO事件で莫大な負債を抱え消滅しそうになった≪アーガス≫からSAOサーバーを引き継ぎ、維持をしてるらしい。 結果としては、SAOそのものは消滅してないって事だ。

 SAOのサーバーをコピーして、アルヴヘイム・オンラインってゲームを運営してるとは驚きだ。 SAO事件があったのに世間に出したって聞いた時は、『かなりの博打だなぁ』って思った。 でもまあ、ナーヴギアの後継機と開発したアミュスフィアは、ナーヴギアと違い、“被る”ではなくて、“付ける”の違いがある。

 微弱な電磁波も出る事はないし、内臓バッテリーも無い。 外から強制終了が可能ということ。 つまり、安全は保障されてるってわけだ。 何といっても、アルヴヘイム・オンラインのコンセプトは“妖精の世界”だそうだ。

 

「(……つーことは、ナーヴギアのデータをアミュスフィアに移行させて、アルヴヘイム・オンラインの中で“ユイの心”をオブジェクト化をすれば、ユイに会えるって事だよな……)」

 

 《アルヴヘイム・オンライン》は《ソードアート・オンライン》コピーサーバーなのだ。 可能性は十分にある。……後は、レベルとか熟練度がとんでもないことになってる位か。……ニュービーが、ほぼ最強プレーヤーとかチートすぎだろ……。

 

「私からは、お礼を言わせて頂戴。 桐ケ谷君。――いえ、桐ケ谷君と紺野さんね。 明日奈を支えて(変えて)くれてありがとう」

 

 京子さんが言うには、結城家の両親は明日奈に期待し、彼女をエリートに育てる為人生のレールを敷いていた。 だが、明日奈がSAOに囚われ、自分たちが間違えてた事に気付いた。――そう、自分たちの理想像を明日奈に押し付けてるだけだと。 彰三氏と京子さんは反省し、そして明日奈の帰還を願い、今後の人生は明日奈の自由にさせると決めたそうだ。

 まあ、エリート共が明日奈のお見舞いに来た時色々あったそうだが、明日奈は涼しい顔で全て受け流したらしい。 流石、血盟騎士団副団長といった所だ。 かなり肝が据わってる。

 

「(……今となったから言えるけど、SAOの経験って凄ぇな……。 まあ、俺たちにも言える事だけど)」

 

 すると、明日奈は微笑み、

 

「お母さん、お父さん。 これからは自分で決められるし、一生の友達もできた。 SAOの経験も悪い事だけじゃなかったのよ」

 

「……そうか。 儂たちはもう何も言わない。 明日奈の人生だ」

 

「私たちの手から離れたのかもね。 もう、一人前の大人に見えるわ」

 

 明日奈は、頬を可愛らしく膨らませる。

 

「……それって、私が老けたって言いたいのかしら」

 

「違うわ。 精神が既に大人になってるといえばいいのかしら、そんな感じなのよ。 今の明日奈は、怖いものなんてないでしょ?」

 

 ……いや、京子さん。 明日奈はまだ怖いものはありますよ。 暗い所とかお化けとかですけど。

 すると、結城家の両親は頭を下げた。

 

「桐ケ谷君、紺野さん。 明日奈を救ってくれたありがとう」

 

「もし困った事があったら、遠慮なく相談してくれ」

 

 俺と紺野姉妹はあたふたする。 当然だ、かなり偉い人たちが、まだ未成年の俺たちに頭を下げているのだ。

 

「ちょ、頭を上げて下さい! 俺たちは友達に当然の事をしたまでです」

 

 時々、ぶつかりあった事もありましたけど。と付け加える。 でもまあ、それがあったからこそ、今があるともいえるんだよなぁ。

 

「そ、そうです。 だから、頭を上げて下さい」

 

「わ、私たちこそ、明日奈さんにはお世話になったんですよ」

 

 結城家は、『ありがとう』と言って、頭を上げてくれた。……つーか、今のでどっと疲れたんだが……。

 しかし、これだけで終わらかったんだなぁ……。 俺と明日奈がだけど。

 

「和人君、明日奈さん。 オレと妻からもお礼をさせてくれ」

 

「ええ、そうね。 あの世界から無事に帰って来れたのは、和人君と明日奈ちゃんの力があったからこそだと思っているわ」

 

 紺野家は、俺と明日奈と見ながら頭を下げた。……何故か知らんが、俺の精神がガリガリ削られていくんだが……。

 ともあれ、

 

 「あ、頭を下げないで下さい」

 

 ……正直、対応に困るんですよ、はい。

 明日奈も、『どうしよう……』って顔である。……まあ当然の反応だと思うぞ。

 

「いえ、私も助けられた立場です。 私もMMOの事は初心者の域だったんですから。 全ては、和人君のお陰です」

 

 おいこら、俺に押し付ける?なよ、明日奈さんや。 だってほら、紺野夫婦が俺だけを見るようになったじゃんか……。

 

「ま、まあ、木綿季たちと再会できたのも奇跡だったんですから、全ては天のお陰ですよ。 俺は何もしてないですよ、はい」

 

 そう言ったら、何とか頭を上げてくれた。 でもまあ、一万人の中から再会できるなんて奇跡に近いと思う。……運命、だったのかなぁ……。 いや、それはないか。

 

 ――閑話休題。

 

 紺野夫婦の話によると、罪悪感で押し潰されそうになっていたらしい。――なぜ、あの時、ナーヴギアとSAOのソフトと購入してしまったとか、もっとナーヴギアの特製を理解してればとか。 その他諸々である。

 だが、木綿季と藍子が常にトッププレイヤーと行動し、最前線で戦っている事を聞いて、自分たちが落ち込んでる場合じゃないと。 今、自分たちにできる事をやって、帰還した時に笑顔で迎えられるようにと。 そう思いながら行動をしてたらしい。

 

「……私たちはこれで失礼するよ。 和人君たちは、積もる話もあるだろう」

 

「そうね。 そうしましょう」

 

「皆さん、明日奈をお願いしますね」

 

「……そうだ。 後、これを」

 

 彰三氏が傍らの鞄から取り出したのは、四つのアミュスフィアとアルヴヘイム・オンラインのパッケージだ。

 俺たち四人は、彰三氏からそれを受け取る。『あんな事があった後だが、お礼の品だと思って受け取ってくれ』という事らしい。

 おそらく俺たちは、SAOというゲームに囚われたのに、アルヴヘイム・オンラインに確実にログインするだろう。 てか、“妖精の世界”ってもの気になるし。

 それから、紺野家と結城家は、病室から退席した。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

 紺野家と結城家が退席し、俺たちは元の席に座っていた。

 

「んで、木綿季たちは、彰三氏から貰ったアミュスフィアは使うのか?」

 

「そりゃもちろん! “妖精の世界”っていうのも気になるしね」

 

 木綿季がそう言ってから、明日奈がパッケージを見ながら口を開く。

 

「“妖精の世界”っていうからほのぼの系だと思ったけど、これはかなりハードだね」

 

 ドスキル制、プレイヤースキル重視、PK推奨。 《レベル》が存在せず、各種スキルが反復使用で上昇するだけで、ヒットポイントは大して上がらないそうだ。 戦闘もプレイヤーの運動能力依存で、剣技(ソードスキル)なし、魔法ありのSAOって所だ。

 

「妖精なので《飛べる》らしいですよ」

 

 藍子が言うには、フライト・エンジンとやらを搭載してて、慣れるとコントローラ無しで自由に飛び回れるらしい。 中々、冒険心に駆られるゲームでもある。

 俺もパッケージの説明書を見やる。

 

「妖精にも、沢山種族があるんだな」

 

 妖精の種類は、九種だ。 種族によって得意、不得意もあるらしい。

 

「(ふむ。 影妖精族(スプリガン)がいいかもな。 一番黒いし。 よし、これで決定と)」

 

 なぜか知らないが、木綿季たちに一斉に見られる。

 

「なるほどなるほど。 和人は影妖精族(スプリガン)なんだね」

 

「そうだね。 黒いし」

 

「魔法効果とか、その他諸々も見ないで影妖精族(スプリガン)に決めるとか、さすが和人さんです」

 

 木綿季、明日奈、藍子の順である。

 てか、何で解った。 こいつらエスパーか!?」

 

「「「和人(さん)(君)が解りやすいん(だよ)(です)」」」

 

「……さいですか」

 

 ちなみに、明日奈と藍子は水妖精族(ウンディーネ)。 木綿季は闇妖精族(インプ)らしい。

 ともあれ、……あの時間がやってきてしまった。

 

「それじゃあ、和人君。 その場で正座」

 

「私たちが、何を言いたいか解りますよね?」

 

「……はい、解ります」

 

 渋々、その場で正座をする俺。 木綿季は安全地帯で苦笑だ。

 そして、殺気に似たものを醸し出し、俺を見やる明日奈と藍子。……いや、何。 マジで怖い……。 本当怖い……。 俺、死ぬんじゃね。

 

「……和人君。 貴方はいつも無茶をしすぎです」

 

「……私たちに、どれだけ心配をさせるんですか?」

 

「……い、いや、あの時はあの方法しかなかっただろ? あ、あの判断は間違ってなかったはずだろ」

 

 あそこで茅場を倒さなければ、犠牲者が増えていた事は否めない。 だから、俺の行動は正しいはすなんだが……。

 

「そ、それはそうだけど。……それはそれ、これはこれなの!」

 

「そ、そうです。 和人さんは、いつも心配をかけすぎなんです!」

 

「……お、お二人さん。 何か、矛盾してる気がするんだが……。 まあでも、俺の行動でいつも心配させてたのは事実だしなぁ」

 

 俺たちは面会時間が終わるまで積もる話をした。 やはり、四人で集まって話をしてると、時が経過するのが早い。

 面会時間が終了し、エレベーターで一階まで下り、ナースステーションに来客用のパスを返し、俺は駐車場へ向かった。 その途中で、再び病院の最上階を見やったのだった――。




翠さんはに4人気を遣って、面会が終わるまで買い物とかその他諸々をしてました。
てか、和人君。結城家と紺野家両親と邂逅しましたね(笑)

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!

追記。
和人君はこの後、お説教を受けました(笑)

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