ソードアート・オンライン~黒の剣士と絶剣~ リメイク版 作:舞翼
舞翼です!!
マジで申し訳ないっス……。約四カ月の投稿になりますね(^_^;)
ええ、申し訳ない。
それでは本編にいきましょう。
誤字脱字があったらごめんよ。
それではどうぞ。
第56層。 聖竜連合(Divine Dragons Alliance略称DDA)ギルド本部前。
俺たちは、ヒーフクリフとの会合の後、聖竜連合のギルド本部がある層までやってきた。
「もし、シュミット氏が狩りに出てたらどうする?」
今の時刻は午前二時。
昼食を終え、迷宮区攻略を行っている時間帯だ。
ユウキが、口許に指先を当てて答えた。
「たぶん、それはないんじゃないかな」
「なんでだ?」
両手を腰の後ろで組み、ステップを踏むようにブーツの踵を鳴らしながら、アスナとランが答えた。
「ヨルコさんの話を信じれば、シュミットさんも指輪売却反対派の一人で……つまり、カインズさんと同じ立場にいるわけよね。 シュミットさんは、謎の殺人者に狙われてると思ってるはず。 そんな状況で圏外に出ると思う?」
「だからこそ、安全を確保しようとすると思います。 宿屋に閉じこもるか、DDA本部に籠城するかですね。 なので、見知らぬ宿屋より、自身がいつも居る場所を選ぶはずです」
「なるほどな。 てことは、DDA本部に籠城してる可能性が非常に高いな」
そう話していたら、DDA本部の扉付近までやって来ていた。
「じゃあ、キリトはそのへんで待っててね。 ボクと姉ちゃんとアスナで行ってくるから。 ボクたちの門前払いはありえないしね」
「そうね。 その方が何かと取り入りやすそうだし」
「ですね」
上から、ユウキ、アスナ、ランである。
てか、この三人は策士すぎる。
「ああ、了解した」
ユウキたちは巨大な城門へ歩を進め、俺は手近な樹の幹に背中を預けた。
城門の前には、二人の重装槍戦士が仁王像のように立っていた。
「こんにちは。 血盟騎士団のアスナですけど」
「わたしは、アスナさんの補佐をしてるランといいます」
「ボクは、攻略組のユウキだよ」
三人がペコリと頭を下げた。
すると、門番をしていた一人の男が、軽い声を出した。
「あ、ども! ちゅーっす、お疲れさまっす! どーしたんすか、攻略組の高嶺の花がこんなトコまで」
駆け寄ってきた男に、三人は用件を伝えた。
てか、ユウキが高嶺の花だとは知らなかった。
「ちょっとお宅のメンバーに用があって寄らせてもらったの。 シュミットさんなんだけど、連絡できますか?」
「ちょっと、ご本人に確認しいことがありまして」
「いなかったら、また別の日に改めるけど」
三人がこう言うと、男たちが顔を見合わせた。
「あの人なら今頃、最前線の迷宮区じゃないっすか?」
「あ、でも、朝メシの時に『今日は頭痛がするから休む』みたいなこと言ってたかも。――もしかしたら、自分の部屋に居るかもしれないんで、呼んでみるッスね」
門番の一人がメッセージを送信し、僅か三十秒で返信が返ってきた。
文面を見た男は、困ったように眉を寄せた。
「今日は休みみたいっスけど……。 でも、まず用件を聞け、とか言っているんスけど」
アスナは少し考えててから、短く答えた。
「じゃあ、『指輪の件でお話が』、と伝えてください」
効果は覿面であった。
シュミットに指輪の話をすると、過剰反応を見せた。
ヨルコに会いたいと言ったので、俺たちはシュミットと共に、ヨルコが居る第57層マーテンの宿屋に足を運んだ。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
五人は第59層から第57層へと転移し、ヨルコが滞在している宿屋へと歩き出した。
数分で到着し、二階へ上がる。
ドアをノックしてから名乗り、返事が返ってきてからドアを引き開ける。
引き開けたドアの正面、部屋の中央に向かい合わせに置かれたソファーの片方に、ヨルコが腰をかけていた。
ヨルコは、俺たちと見ると立ち上がり、一礼した。
重い空気で口を閉ざしてしまっていたが、ユウキに俺の脇を小突かれ、口を開いた。
「ええと……まず、安全の為に確認しておくけど、二人とも武器は装備しないこと。 また、ウインドウを開かないことを守ってほしい。 不快だろうけど、よろしく頼む」
「……はい」
「分かってる」
二人は応じ、向い合せになるようにソファーに腰をかけた。
先に口を開いたのはヨルコだった。
「……久しぶり、シュミット」
「……ああ。 もう二度と会わないだろうと思っていたけどな」
シュミットも掠れた声で応じた。
俺はドアがしっかりとロックされたかを確認し、俺とユウキが東側に立ち、反対側にアスナとランが立つ。
南の窓は開け放たれ、春の風が吹き込んでカーテンを揺らしていた。
窓もシステムに守られており、開いてても、誰かが侵入する事は不可能である。
ヨルコがポツリと呟く。
「シュミット、今は聖竜連合にいるんだってね。 すごいね、攻略組の中でもトップギルドだよね」
シュミットは、眉間に皺を寄せながら低く答えた。
「どういう意味だ。 不自然だ、とも言いたいのか」
「まさか。 ギルドが解散したあと、凄く頑張ったんだろうなって思っただけよ。 私やカインズはレベルアップに挫けて上に行くのを諦めたからね」
ヨルコは濃紺の髪を払い、微笑む。
シュミットと比較にならないが、ヨルコは着込んでいた。
厚手のワンピースに革の胴衣を重ね、更に紫色のベルベットの短衣を羽織って、肩にはショールまでかけている。 金属防具は無くとも、着込めばかなり防御力が加算させる。 ここまで防御力を上げるということは、やはり彼女も不安なのか、と思ってしまう。
シュミットが身を乗り出した。
「オレのことはどうでもいい! それより……聞きたいことはカインズのことだ。 なぜ今になってカインズが殺されるんだ!? あいつが……指輪を奪ったのか? GAのリーダーを殺したのは、あいつだったのか!?」
GAというのは、ギルド《黄金林檎》の略称だろう。
「そんなわけない。 私もカインズも、リーダーの事は心から尊敬してたわ。 指輪の売却に反対したのは、みんなで無駄遣いしちゃうよりも、ギルドの戦力として有効利用すべきだと思ったからよ。 ホントは、リーダーだってそうしたかったはずだわ」
「それは……オレだってそうだったさ。 忘れるな、オレも売却に反対したんだ。 大体……指輪を奪う動機があるのは、反対派だけじゃない。 売却派の、つまり、コルが欲しかった奴らの中にいたかもしれないじゃないか!」
シュミットは自身の膝を叩き、頭を抱え込む。
「なのに……グリムロックはどうしてカインズを……。 売却に反対した三人を全員殺す気なのか? お前やオレも狙われているのか!?」
演技、には見えなかった。
シュミットの横顔には、はっきりとした恐怖が刻まれているように思えた。
「まだ、グリムロックがカインズを殺したと決まったわけじゃないわ。 彼に槍を作ってもらった他のメンバーの仕業かもしれないし、もしかしたら……リーダーの復讐なのかもしれないじゃない? 圏内で人を殺すなんて、普通のプレイヤーにできるわけない」
「な…………」
ぱくぱくと口を動かし、シュミットは喘いだ。
シュミットは微笑むヨルコを見やり、言った。
「お前さっき、カインズが指輪を奪うわけがないって……」
すぐに答えず、ヨルコは立ち上がると、一歩右に動いた。
両の手を腰の後ろで握ると、俺たちの顔を見たまま、南の窓に向かってゆっくりと後ろに歩き出した。
「私、ゆうべ、寝ないで考えた。 結局のところ、グリセルダさんを殺したのは、ギルドメンバーの誰かであると同時に、メンバー全員でもあるのよ。 あの指輪がドロップした時投票なんかしないで、グリセルダさんに任せればよかったんだわ!!」
言葉が途切れると同時に、ヨルコの腰が南の窓枠に当たった。
腰かけながら、ヨルコは付け加える。
「ただ一人、グリムロックさんだけは、グリセルダさんに任せると言ったわ。 あの人だけが自分の欲を捨てて、ギルド全体のことを考えた。 だからグリムロックさんには、私欲を捨てられなかった私たち全員に復讐して、グリセルダさんの
この言葉によって部屋の中は沈黙に包まれた。
やがて、小さな金属音が鳴り響いた。 音の発生源は、シュミットのフルプレート・アーマーからだった。
「…………冗談じゃない。 冗談じゃないぞ。 今更……半年も経ってから、何を今更……。 お前はそれでいいのかよ!? こんな、わけも解らない方法で殺されていいのか!?」
全員の視線がヨルコに集まった。
その唇が何かを言おうとした時――。 ヨルコの体がぐらりと揺れた。
よろめくように、開け放たれた窓枠に手をつく。
紫色のチュニック。 その中央から、小さな黒い棒のようなものが突き出している。
あれは、
前後に揺れていたヨルコの体が、大きく窓の奥へと傾いた。
「「あっ……!」」
「ダメ……!」
アスナたちが悲鳴じみた声を漏らした。 同時に俺も飛び出していた。
手を伸ばし、ヨルコを引き上げようとするが――。
ショールの端に指先が掠っただけで、ヨルコは窓の外にへと落下した。 俺たちが見てる前で、ヨルコの体は青いエフェクトを纏って四散した。
一秒後、漆黒のダガーだけが甲高い音を立てて路上に転がった。
息が詰まり、俺はヨルコの消えた石畳から視線を外した。 勢いよく顔を上げ、外の街並みを見る。
宿屋から二ブロックほど離れた、同じ高さの建物の屋根。
ひっそりと立つ黒衣の人影――。
「ッチ、後は頼んだ!」
俺はアスナたちの制止の声を振り切って、通りを隔てた向かいの建物の屋根へと一気に跳んだ。
剣を抜き、黒衣の人影を追う。
もし、
だが、ここで奴を逃がせば、殺人犯を見逃すことになってしまう。
俺は、夕闇を切り裂いて跳び続ける。
不意に、暗殺者の右手がローブの懐に差し込まれた。 俺は息を詰め、剣を構える。
しかし、奴の右手には
「くそっ!」
俺は剣を持っていない左手で、ベルトに装備していたピックを三本同時に抜き、投擲する。 回避動作を取らせ、詠唱を遅らせることを狙ったのだ。
だが、奴はとても落ち着いていた。 三本のピックは、システム障壁に阻まれてしまった。
瞬間、奴の詠唱と同時に、街全体に大きな鐘の音が響いた。
これを狙っていたかのように、奴は転移結晶を使用し、何処かの街に転移してしまった。
「…………逃がしたか」
俺は宿に帰る途中で、ヨルコを刺した
「ダガーを投擲するだけでHPを全損させることが可能なのか……?」
いや、有り得ない。 もしかしたら、ヨルコの殺害も、何かのトリックがあるのかもしれない。
完璧な殺害に見せる為、漆黒のローブが現れた線も否めない。
宿屋の二階に上がり、ドアノブを回し部屋に入ると、放剣をしたアスナ、ユウキ、ランが俺の目の前に映った。
「えーと、どうしたんですか……。 俺、なにかしちゃいました……?」
「キ~リ~ト君、君には後でO☆SHI☆O☆KI☆が必要かもね」
「ふふ、キリトさん。 自身を大切にってあれだけ言いましたよね。 今の行動はなんですか?」
「キリト。 ボクのお説教もあるから、覚えといてね」
「……はは、お手柔らかにお願い致します」
俺は乾いた笑いしか出ない。
攻略組トッププレイヤーの迫力は、半端ないです……。
攻略組女性プレイヤーは、溜息を吐いてから剣を鞘に戻した。
「ところで、あの人は誰かわかったの?」
ユウキの問いに、俺は首を左右に振った。
「わからない。 転移結晶のテレポートで逃げられた。 顔も声も、女か男かもわからなかった」
俺の言葉を聞き、シュミットはソファーの上で大きな体を丸め、小刻みに震えていた。
「……違う」
「違うって……なにがですか?」
尋ねたランを見ることなく、シュミットは顔を伏せながら呻いた。
「違うんだ。 あれは……屋根にいた黒ローブは、GAのリーダーのものだ。 彼女は街に行く時、いつも地味なローブを羽織っていた。 あれは……さっきのあれは、彼女だ。 俺たち全員に復讐に来たんだ。 あれは、リーダーの幽霊だ」
四人は、顔を見合わせ笑った。
「いや、ありえないね。 ならいっそ、幽霊にボスを倒してもらえばいい。 死なないんだからな」
俺は笑ってから、左手に握っていたダガーをシュミットの目の前に放り投げた。
だが、シュミットは弾かれたように上体を
「ひっ…………」
「それはただのオブジェクトだよ。 SAOのサーバーに書き込まれた、プログラムコードだ。 あんたのストレージに入ったショートスピアと同じだよ。 信じられないなら、それを持っていって、好きなだけ調べればいい」
「い、いらない! 槍も返す!」
シュミットは絶叫し、メニューウインドウを開き震えた手でスピアをオブジェクト化し、払い落すように隣に転がす。
「あんたが幽霊を信じるのは構わないが、俺は信じないぞ。 この二度目の圏内事件は、トリックが隠されてる事は間違いない。 俺はそれを突き止めてみせる。 まあ、一人じゃ限界があるがな。 あ、ついでに、元黄金林檎メンバーの名前を教えてくれないか。 もしかしたら、調査で必要になるかも知れないしな」
シュミットは頷き、ライティングデスクに歩み寄り、備え付けの羊皮紙と羽ペンを取って、名前を書き上げる。
書き上がった羊皮紙を片手に俺の前に来ると、それを差し出した。
「じゃあ、俺たちは調査の続きをするな。――攻略が遅れるが、付き合ってくれないか?」
「元よりそのつもりよ」
「ええ、私も手伝いますよ」
「ボクも手伝うよ。 キリトにはボクがついていないとね」
俺は良き友人、幼馴染を持ったなと感謝した。
シュミットが口を開く。
「…………攻略組プレイヤーとして情けないが……オレはしばらくフィールドに出る気になれない。 ボス攻略のパーティは、オレ抜きで編成してくれ……。 それと、オレをDDA本部まで送って行ってくれ」
シュミットの言葉を嘲笑うことは、俺たちに出来なかった。
俺たちの誰かが極限状態に陥ったら、こうなる確率が高いのだから。
怯えきったシュミットを守るように、俺たちは周囲に視線を走らせながら、DDA本部までシュミットを送った。
圏内事件も中盤?に入ってきましたね。
これからも頑張って書くっス。
ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!