ソードアート・オンライン~黒の剣士と絶剣~ リメイク版   作:舞翼

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ども!!

舞翼です!!

マジで申し訳ないっス……。約四カ月の投稿になりますね(^_^;)
ええ、申し訳ない。

それでは本編にいきましょう。
誤字脱字があったらごめんよ。
それではどうぞ。


第18話≪第二の圏内事件≫

第56層。 聖竜連合(Divine Dragons Alliance略称DDA)ギルド本部前。

俺たちは、ヒーフクリフとの会合の後、聖竜連合のギルド本部がある層までやってきた。

 

「もし、シュミット氏が狩りに出てたらどうする?」

 

今の時刻は午前二時。

昼食を終え、迷宮区攻略を行っている時間帯だ。

ユウキが、口許に指先を当てて答えた。

 

「たぶん、それはないんじゃないかな」

 

「なんでだ?」

 

両手を腰の後ろで組み、ステップを踏むようにブーツの踵を鳴らしながら、アスナとランが答えた。

 

「ヨルコさんの話を信じれば、シュミットさんも指輪売却反対派の一人で……つまり、カインズさんと同じ立場にいるわけよね。 シュミットさんは、謎の殺人者に狙われてると思ってるはず。 そんな状況で圏外に出ると思う?」

 

「だからこそ、安全を確保しようとすると思います。 宿屋に閉じこもるか、DDA本部に籠城するかですね。 なので、見知らぬ宿屋より、自身がいつも居る場所を選ぶはずです」

 

「なるほどな。 てことは、DDA本部に籠城してる可能性が非常に高いな」

 

そう話していたら、DDA本部の扉付近までやって来ていた。

 

「じゃあ、キリトはそのへんで待っててね。 ボクと姉ちゃんとアスナで行ってくるから。 ボクたちの門前払いはありえないしね」

 

「そうね。 その方が何かと取り入りやすそうだし」

 

「ですね」

 

上から、ユウキ、アスナ、ランである。

てか、この三人は策士すぎる。

 

「ああ、了解した」

 

ユウキたちは巨大な城門へ歩を進め、俺は手近な樹の幹に背中を預けた。

城門の前には、二人の重装槍戦士が仁王像のように立っていた。

 

「こんにちは。 血盟騎士団のアスナですけど」

 

「わたしは、アスナさんの補佐をしてるランといいます」

 

「ボクは、攻略組のユウキだよ」

 

三人がペコリと頭を下げた。

すると、門番をしていた一人の男が、軽い声を出した。

 

「あ、ども! ちゅーっす、お疲れさまっす! どーしたんすか、攻略組の高嶺の花がこんなトコまで」

 

駆け寄ってきた男に、三人は用件を伝えた。

てか、ユウキが高嶺の花だとは知らなかった。

 

「ちょっとお宅のメンバーに用があって寄らせてもらったの。 シュミットさんなんだけど、連絡できますか?」

 

「ちょっと、ご本人に確認しいことがありまして」

 

「いなかったら、また別の日に改めるけど」

 

三人がこう言うと、男たちが顔を見合わせた。

 

「あの人なら今頃、最前線の迷宮区じゃないっすか?」

 

「あ、でも、朝メシの時に『今日は頭痛がするから休む』みたいなこと言ってたかも。――もしかしたら、自分の部屋に居るかもしれないんで、呼んでみるッスね」

 

門番の一人がメッセージを送信し、僅か三十秒で返信が返ってきた。

文面を見た男は、困ったように眉を寄せた。

 

「今日は休みみたいっスけど……。 でも、まず用件を聞け、とか言っているんスけど」

 

アスナは少し考えててから、短く答えた。

 

「じゃあ、『指輪の件でお話が』、と伝えてください」

 

効果は覿面であった。

シュミットに指輪の話をすると、過剰反応を見せた。

ヨルコに会いたいと言ったので、俺たちはシュミットと共に、ヨルコが居る第57層マーテンの宿屋に足を運んだ。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

五人は第59層から第57層へと転移し、ヨルコが滞在している宿屋へと歩き出した。

数分で到着し、二階へ上がる。

ドアをノックしてから名乗り、返事が返ってきてからドアを引き開ける。

引き開けたドアの正面、部屋の中央に向かい合わせに置かれたソファーの片方に、ヨルコが腰をかけていた。

ヨルコは、俺たちと見ると立ち上がり、一礼した。

重い空気で口を閉ざしてしまっていたが、ユウキに俺の脇を小突かれ、口を開いた。

 

「ええと……まず、安全の為に確認しておくけど、二人とも武器は装備しないこと。 また、ウインドウを開かないことを守ってほしい。 不快だろうけど、よろしく頼む」

 

「……はい」

 

「分かってる」

 

二人は応じ、向い合せになるようにソファーに腰をかけた。

先に口を開いたのはヨルコだった。

 

「……久しぶり、シュミット」

 

「……ああ。 もう二度と会わないだろうと思っていたけどな」

 

シュミットも掠れた声で応じた。

俺はドアがしっかりとロックされたかを確認し、俺とユウキが東側に立ち、反対側にアスナとランが立つ。

南の窓は開け放たれ、春の風が吹き込んでカーテンを揺らしていた。

窓もシステムに守られており、開いてても、誰かが侵入する事は不可能である。

ヨルコがポツリと呟く。

 

「シュミット、今は聖竜連合にいるんだってね。 すごいね、攻略組の中でもトップギルドだよね」

 

シュミットは、眉間に皺を寄せながら低く答えた。

 

「どういう意味だ。 不自然だ、とも言いたいのか」

 

「まさか。 ギルドが解散したあと、凄く頑張ったんだろうなって思っただけよ。 私やカインズはレベルアップに挫けて上に行くのを諦めたからね」

 

ヨルコは濃紺の髪を払い、微笑む。

シュミットと比較にならないが、ヨルコは着込んでいた。

厚手のワンピースに革の胴衣を重ね、更に紫色のベルベットの短衣を羽織って、肩にはショールまでかけている。 金属防具は無くとも、着込めばかなり防御力が加算させる。 ここまで防御力を上げるということは、やはり彼女も不安なのか、と思ってしまう。

シュミットが身を乗り出した。

 

「オレのことはどうでもいい! それより……聞きたいことはカインズのことだ。 なぜ今になってカインズが殺されるんだ!? あいつが……指輪を奪ったのか? GAのリーダーを殺したのは、あいつだったのか!?」

 

GAというのは、ギルド《黄金林檎》の略称だろう。

 

「そんなわけない。 私もカインズも、リーダーの事は心から尊敬してたわ。 指輪の売却に反対したのは、みんなで無駄遣いしちゃうよりも、ギルドの戦力として有効利用すべきだと思ったからよ。 ホントは、リーダーだってそうしたかったはずだわ」

 

「それは……オレだってそうだったさ。 忘れるな、オレも売却に反対したんだ。 大体……指輪を奪う動機があるのは、反対派だけじゃない。 売却派の、つまり、コルが欲しかった奴らの中にいたかもしれないじゃないか!」

 

シュミットは自身の膝を叩き、頭を抱え込む。

 

「なのに……グリムロックはどうしてカインズを……。 売却に反対した三人を全員殺す気なのか? お前やオレも狙われているのか!?」

 

演技、には見えなかった。

シュミットの横顔には、はっきりとした恐怖が刻まれているように思えた。

 

「まだ、グリムロックがカインズを殺したと決まったわけじゃないわ。 彼に槍を作ってもらった他のメンバーの仕業かもしれないし、もしかしたら……リーダーの復讐なのかもしれないじゃない? 圏内で人を殺すなんて、普通のプレイヤーにできるわけない」

 

「な…………」

 

ぱくぱくと口を動かし、シュミットは喘いだ。

シュミットは微笑むヨルコを見やり、言った。

 

「お前さっき、カインズが指輪を奪うわけがないって……」

 

すぐに答えず、ヨルコは立ち上がると、一歩右に動いた。

両の手を腰の後ろで握ると、俺たちの顔を見たまま、南の窓に向かってゆっくりと後ろに歩き出した。

 

「私、ゆうべ、寝ないで考えた。 結局のところ、グリセルダさんを殺したのは、ギルドメンバーの誰かであると同時に、メンバー全員でもあるのよ。 あの指輪がドロップした時投票なんかしないで、グリセルダさんに任せればよかったんだわ!!」

 

言葉が途切れると同時に、ヨルコの腰が南の窓枠に当たった。

腰かけながら、ヨルコは付け加える。

 

「ただ一人、グリムロックさんだけは、グリセルダさんに任せると言ったわ。 あの人だけが自分の欲を捨てて、ギルド全体のことを考えた。 だからグリムロックさんには、私欲を捨てられなかった私たち全員に復讐して、グリセルダさんの(かたき)を討つ権利があるんだわ……」

 

この言葉によって部屋の中は沈黙に包まれた。

やがて、小さな金属音が鳴り響いた。 音の発生源は、シュミットのフルプレート・アーマーからだった。

 

「…………冗談じゃない。 冗談じゃないぞ。 今更……半年も経ってから、何を今更……。 お前はそれでいいのかよ!? こんな、わけも解らない方法で殺されていいのか!?」

 

全員の視線がヨルコに集まった。

その唇が何かを言おうとした時――。 ヨルコの体がぐらりと揺れた。

よろめくように、開け放たれた窓枠に手をつく。

紫色のチュニック。 その中央から、小さな黒い棒のようなものが突き出している。

あれは、投げ短剣(スローイングダガー)の柄だ。 その刀身は、ヨルコの背に埋まっている。 窓の向こうから飛来した投げ短剣(スローイングダガー)が、ヨルコの背を貫いたのだ。

前後に揺れていたヨルコの体が、大きく窓の奥へと傾いた。

 

「「あっ……!」」

 

「ダメ……!」

 

アスナたちが悲鳴じみた声を漏らした。 同時に俺も飛び出していた。

手を伸ばし、ヨルコを引き上げようとするが――。

ショールの端に指先が掠っただけで、ヨルコは窓の外にへと落下した。 俺たちが見てる前で、ヨルコの体は青いエフェクトを纏って四散した。

一秒後、漆黒のダガーだけが甲高い音を立てて路上に転がった。

息が詰まり、俺はヨルコの消えた石畳から視線を外した。 勢いよく顔を上げ、外の街並みを見る。

宿屋から二ブロックほど離れた、同じ高さの建物の屋根。

ひっそりと立つ黒衣の人影――。

 

「ッチ、後は頼んだ!」

 

俺はアスナたちの制止の声を振り切って、通りを隔てた向かいの建物の屋根へと一気に跳んだ。

剣を抜き、黒衣の人影を追う。

もし、投げ短剣(スローイングダガー)の攻撃を被弾すれば、俺も即死してしまうかもしれない。

だが、ここで奴を逃がせば、殺人犯を見逃すことになってしまう。

俺は、夕闇を切り裂いて跳び続ける。

不意に、暗殺者の右手がローブの懐に差し込まれた。 俺は息を詰め、剣を構える。

しかし、奴の右手には投げ短剣(スローイングダガー)ではなく転移結晶が握られていた。

 

「くそっ!」

 

俺は剣を持っていない左手で、ベルトに装備していたピックを三本同時に抜き、投擲する。 回避動作を取らせ、詠唱を遅らせることを狙ったのだ。

だが、奴はとても落ち着いていた。 三本のピックは、システム障壁に阻まれてしまった。

瞬間、奴の詠唱と同時に、街全体に大きな鐘の音が響いた。

これを狙っていたかのように、奴は転移結晶を使用し、何処かの街に転移してしまった。

 

「…………逃がしたか」

 

俺は宿に帰る途中で、ヨルコを刺した投げ短剣(スローイングダガー)を拾い上げ呟いた。

 

「ダガーを投擲するだけでHPを全損させることが可能なのか……?」

 

いや、有り得ない。 もしかしたら、ヨルコの殺害も、何かのトリックがあるのかもしれない。

完璧な殺害に見せる為、漆黒のローブが現れた線も否めない。

宿屋の二階に上がり、ドアノブを回し部屋に入ると、放剣をしたアスナ、ユウキ、ランが俺の目の前に映った。

 

「えーと、どうしたんですか……。 俺、なにかしちゃいました……?」

 

「キ~リ~ト君、君には後でO☆SHI☆O☆KI☆が必要かもね」

 

「ふふ、キリトさん。 自身を大切にってあれだけ言いましたよね。 今の行動はなんですか?」

 

「キリト。 ボクのお説教もあるから、覚えといてね」

 

「……はは、お手柔らかにお願い致します」

 

俺は乾いた笑いしか出ない。

攻略組トッププレイヤーの迫力は、半端ないです……。

攻略組女性プレイヤーは、溜息を吐いてから剣を鞘に戻した。

 

「ところで、あの人は誰かわかったの?」

 

ユウキの問いに、俺は首を左右に振った。

 

「わからない。 転移結晶のテレポートで逃げられた。 顔も声も、女か男かもわからなかった」

 

俺の言葉を聞き、シュミットはソファーの上で大きな体を丸め、小刻みに震えていた。

 

「……違う」

 

「違うって……なにがですか?」

 

尋ねたランを見ることなく、シュミットは顔を伏せながら呻いた。

 

「違うんだ。 あれは……屋根にいた黒ローブは、GAのリーダーのものだ。 彼女は街に行く時、いつも地味なローブを羽織っていた。 あれは……さっきのあれは、彼女だ。 俺たち全員に復讐に来たんだ。 あれは、リーダーの幽霊だ」

 

四人は、顔を見合わせ笑った。

 

「いや、ありえないね。 ならいっそ、幽霊にボスを倒してもらえばいい。 死なないんだからな」

 

俺は笑ってから、左手に握っていたダガーをシュミットの目の前に放り投げた。

だが、シュミットは弾かれたように上体を()()らせた。

 

「ひっ…………」

 

「それはただのオブジェクトだよ。 SAOのサーバーに書き込まれた、プログラムコードだ。 あんたのストレージに入ったショートスピアと同じだよ。 信じられないなら、それを持っていって、好きなだけ調べればいい」

 

「い、いらない! 槍も返す!」

 

シュミットは絶叫し、メニューウインドウを開き震えた手でスピアをオブジェクト化し、払い落すように隣に転がす。

 

「あんたが幽霊を信じるのは構わないが、俺は信じないぞ。 この二度目の圏内事件は、トリックが隠されてる事は間違いない。 俺はそれを突き止めてみせる。 まあ、一人じゃ限界があるがな。 あ、ついでに、元黄金林檎メンバーの名前を教えてくれないか。 もしかしたら、調査で必要になるかも知れないしな」

 

シュミットは頷き、ライティングデスクに歩み寄り、備え付けの羊皮紙と羽ペンを取って、名前を書き上げる。

書き上がった羊皮紙を片手に俺の前に来ると、それを差し出した。

 

「じゃあ、俺たちは調査の続きをするな。――攻略が遅れるが、付き合ってくれないか?」

 

「元よりそのつもりよ」

 

「ええ、私も手伝いますよ」

 

「ボクも手伝うよ。 キリトにはボクがついていないとね」

 

俺は良き友人、幼馴染を持ったなと感謝した。

シュミットが口を開く。

 

「…………攻略組プレイヤーとして情けないが……オレはしばらくフィールドに出る気になれない。 ボス攻略のパーティは、オレ抜きで編成してくれ……。 それと、オレをDDA本部まで送って行ってくれ」

 

シュミットの言葉を嘲笑うことは、俺たちに出来なかった。

俺たちの誰かが極限状態に陥ったら、こうなる確率が高いのだから。

怯えきったシュミットを守るように、俺たちは周囲に視線を走らせながら、DDA本部までシュミットを送った。




圏内事件も中盤?に入ってきましたね。
これからも頑張って書くっス。

ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!

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