東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
零「ただいま~」
芳香「ただいま~」
諏訪子「ヌワァッ!?か、帰ってくるの早くない!?アァァァァッ寝癖がぁ!!」
零「うむ、今回ははやく帰ってきた」
芳香「うむ」
義経「お、お邪魔します」
諏訪子「あ、新しい仲間だ。おー、男だ。珍しい」
それどう言うことだ。
丸を旅の仲間に加えた5年後、今回は早くに帰ってきた。
何故か、と言われれば、特に理由はない。
椿「あッ!!零さまーーーッ!!」
零「へぶらッ!?」
青蛾「うわぁ、痛そう」
俺は長生きしているため、ちょっとの帰省程度だが、椿にとっては久しぶりに会った。そういう感覚なのだろう。
俺を見るや否や、腹に飛び込んできた。痛いです。そして、青蛾の他人事な言葉に腹が立つ。
椿「お帰りなさいませ~」
零「た、ただいま……」
消えるような掠れた声で返事をし、椿を撫でた。
椿「えへへ……」
零「……」
鳩尾が痛い。その感情を全力で抑え込んで、ニコッと笑った。
思えば、出会った当初は人見知りだったな……遊んで信頼を得て今に至る程に。あの時は、よく一日でここまでなつかれたな。
旅再開の時はギャーギャー泣いてたな。
零「大きくなったな」
椿「ハイ!!」
チラッと前を見る。
諏訪子「なんで私を見るのさ!?」
諏訪子は越えたな、確実に。
神奈子「やあ、今回は早いな。新しい仲間も連れて」
零「あぁ、何となく帰ってきた。今回は長く居座るかもしれん」
青蛾「聞いてないけど」
呆れたように俺を見るな。
まぁ、俺がいつも無計画なのは今に始まったわけではない。そうだな、一年はここに居ようかな。去年は永琳のところに一年半居たし、そろそろ旅をしよう。
椿「零さま!!私、お料理練習しました!!」
零「なら、今日は椿の手料理だな」
椿「ハイ!」
諏訪子「この子、凄く上手になったんだから」
まるで我が子を自慢するように、えっへんと腰に手を置いて言った。
いや、諏訪子や神奈子にとって、今までの歴代巫女は娘同然なのだろう。
零「あーッと、椿?そろそろ離れてくれるか?身動きがとりづらくてな」
椿「じゃあ、頭を撫でて下さい。そしたら離れます」
あーもうかわいいなぁ!!反抗期が来ないでほしい!!
はぁ……反抗期が来た巫女は何人もいた。その度に落ち込んでしまうんだよなぁ。
これが、子を持つ父親の気持ちなのだろうか?
零「幾らでも撫でてやるさ」
椿「あーうー……」
頭に手を置いて撫でると、たまに諏訪子が言う『あーうー』と言う謎の言葉を発する。椿が真似してたら口癖になっちゃったやつだ。寧ろ、本人より言ってる。
諏訪子「ずるいなぁ…」
零「……諏訪子、こっち来い」
諏訪子「!」
察したようで、嬉しそうに近寄ってきた。
諏訪子「ほい!!」
零「よし…」
久々な気がする。諏訪子を撫でたのは。
諏訪子は気持ち良さそうに笑顔で顔を緩めた。青蛾がガン見してくるが、無視しておこう。
椿「それじゃあ、ごはん作ってきますね」
零「おう、期待してる」
離れるときに残念そうな顔をしていた。まだ反抗期は来ないはずだ。
神奈子「にしても、諏訪子は本当に零が好きだね」
諏訪子「まーね…夫になってほしいぐらいよ」
零「あー……えっとな…」
諏訪子「分かってる。零が一途だってことは」
神奈子「損だよな~、一夫多妻だよ?神の世界は。いや、人間も偉い奴は皆そうだ」
それが、俺は好かないんだ。女性は一つの方向を愛するのに、野郎はあらゆる方向を愛する。それが気に食わない。ただの欲張りなんだよ。
諏訪子や、青蛾は、自惚れでなければ、俺のことを好いている。が、俺は永琳と同じように愛せるか?と言われれば、無理だろう。
理解ができない。多くの女性は愛せない。
青蛾をチラッと見る。
いや、やはりできないな。俺は、永琳ただ一人。青蛾を好きと想うことは多分ないだろう。
ははは、ありえんありえん。俺が永琳以外の女性を好くなど、砂漠に落ちた米粒を見つけることと同じぐらい難しい。
神奈子「ま、お前の考えは理解できなくもないがな。珍しい奴だよ。全く……」
零「世間がおかしいのさ」
絶対、将来的には俺の考えが当たり前になるはずだ。
椿「出来ました!!どうぞ召し上がって下さい!!」
零「やべぇ、めっちゃ旨そう。いただきます」
美鈴「いただきます」
煮物、緑野菜の素揚げ、サンマの塩焼き、お吸い物、玄米と、庶民的なものなのに、見た目が高級な食べ物並みに旨そう。
煮物の人参を口の中に入れてよく噛む。すると、ほのかに温かく、中まで味が染み込んでいて、柔らかすぎずに味も食感も美味しい。
素揚げもパリパリして、塩はつけておらず素材そのものの旨味が伝わる。しかも、その伝わり方が衝撃的だ。塩もなにも付けてないのに、旨味が溢れるように分かる。どう調理したらこうなる?
他の献立も非の打ち所もない旨さだった。
永琳と一位二位を争うぞ。
義経「う、うまい!!」
零「ご馳走さま」
青蛾「はやッ!?」
零「旨かった、マジで旨かった」
椿「えへへ、ありがとうございます!」
諏訪子が自慢してきたのも納得がいった。
この成長具合は、育ててきた諏訪子からしたら、この上なく嬉しいのだろう。
零「こんなにもうまくなったなら、『あれ』を」
諏訪子「ッ!!」
神奈子「ッ!!」
二人「「本当(か)ッ!?」」
マジで好きだな。コイツら。
椿「あの、『あれ』とは?」
零「まぁまぁ、ちょっと台所に来てみな。あ、諏訪子、鰻ある?」
諏訪子「あるよ!」
椿と一緒に俺が開発した『鰻の蒲焼き』を教えることにした。
が、ここで椿が魚を捌くのが苦手と言うことが分かり、完成には少し時間がかかった。
時間がかかったことに、椿は酷く落ち込んでいた。
椿「うぅ……」
零「別に椿が下手な訳じゃない。ちょっとずつ、出来るようになろうぜ?」
椿「はい……」
零「さ、食いな。食ったら気分も上がるもんさ」
そう言われ、パクッと食べた椿。瞬間、驚いたようで、暗い気分どころではない。
すぐに笑顔になり、嬉しそうにまた一口、また一口と、箸は止まらずどんどん進む。
椿「零さま!!これ美味しいです!!」
零「だろ?」
こんな一時がずっと続けばいいのにな。
そんな遠い未来になりそうな夢を見ても意味はない、分かってはいるが……
ご馳走さまでしたと、笑顔な椿の頭を撫で、無理に笑顔になった。
零は砂漠に落ちた米粒を見つけることが出来たんですね。おめでとう!!(全力の皮肉)