東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新   作:薬売り

61 / 62
今回、それと次回、もしかしたらそのまた次も回想になります。


椿の香り III 『過去』

零「ただいま~」

芳香「ただいま~」

諏訪子「ヌワァッ!?か、帰ってくるの早くない!?アァァァァッ寝癖がぁ!!」

零「うむ、今回ははやく帰ってきた」

芳香「うむ」

義経「お、お邪魔します」

諏訪子「あ、新しい仲間だ。おー、男だ。珍しい」

 

それどう言うことだ。

丸を旅の仲間に加えた5年後、今回は早くに帰ってきた。

何故か、と言われれば、特に理由はない。

 

椿「あッ!!零さまーーーッ!!」

零「へぶらッ!?」

青蛾「うわぁ、痛そう」

 

俺は長生きしているため、ちょっとの帰省程度だが、椿にとっては久しぶりに会った。そういう感覚なのだろう。

俺を見るや否や、腹に飛び込んできた。痛いです。そして、青蛾の他人事な言葉に腹が立つ。

 

椿「お帰りなさいませ~」

零「た、ただいま……」

 

消えるような掠れた声で返事をし、椿を撫でた。

 

椿「えへへ……」

零「……」

 

鳩尾が痛い。その感情を全力で抑え込んで、ニコッと笑った。

思えば、出会った当初は人見知りだったな……遊んで信頼を得て今に至る程に。あの時は、よく一日でここまでなつかれたな。

旅再開の時はギャーギャー泣いてたな。

 

零「大きくなったな」

椿「ハイ!!」

 

チラッと前を見る。

 

諏訪子「なんで私を見るのさ!?」

 

諏訪子は越えたな、確実に。

 

神奈子「やあ、今回は早いな。新しい仲間も連れて」

零「あぁ、何となく帰ってきた。今回は長く居座るかもしれん」

青蛾「聞いてないけど」

 

呆れたように俺を見るな。

まぁ、俺がいつも無計画なのは今に始まったわけではない。そうだな、一年はここに居ようかな。去年は永琳のところに一年半居たし、そろそろ旅をしよう。

 

椿「零さま!!私、お料理練習しました!!」

零「なら、今日は椿の手料理だな」

椿「ハイ!」

諏訪子「この子、凄く上手になったんだから」

 

まるで我が子を自慢するように、えっへんと腰に手を置いて言った。

いや、諏訪子や神奈子にとって、今までの歴代巫女は娘同然なのだろう。

 

零「あーッと、椿?そろそろ離れてくれるか?身動きがとりづらくてな」

椿「じゃあ、頭を撫でて下さい。そしたら離れます」

 

あーもうかわいいなぁ!!反抗期が来ないでほしい!!

はぁ……反抗期が来た巫女は何人もいた。その度に落ち込んでしまうんだよなぁ。

これが、子を持つ父親の気持ちなのだろうか?

 

零「幾らでも撫でてやるさ」

椿「あーうー……」

 

頭に手を置いて撫でると、たまに諏訪子が言う『あーうー』と言う謎の言葉を発する。椿が真似してたら口癖になっちゃったやつだ。寧ろ、本人より言ってる。

 

諏訪子「ずるいなぁ…」

零「……諏訪子、こっち来い」

諏訪子「!」

 

察したようで、嬉しそうに近寄ってきた。

 

諏訪子「ほい!!」

零「よし…」

 

久々な気がする。諏訪子を撫でたのは。

諏訪子は気持ち良さそうに笑顔で顔を緩めた。青蛾がガン見してくるが、無視しておこう。

 

椿「それじゃあ、ごはん作ってきますね」

零「おう、期待してる」

 

離れるときに残念そうな顔をしていた。まだ反抗期は来ないはずだ。

 

神奈子「にしても、諏訪子は本当に零が好きだね」

諏訪子「まーね…夫になってほしいぐらいよ」

零「あー……えっとな…」

諏訪子「分かってる。零が一途だってことは」

神奈子「損だよな~、一夫多妻だよ?神の世界は。いや、人間も偉い奴は皆そうだ」

 

それが、俺は好かないんだ。女性は一つの方向を愛するのに、野郎はあらゆる方向を愛する。それが気に食わない。ただの欲張りなんだよ。

諏訪子や、青蛾は、自惚れでなければ、俺のことを好いている。が、俺は永琳と同じように愛せるか?と言われれば、無理だろう。

理解ができない。多くの女性は愛せない。

 

青蛾をチラッと見る。

いや、やはりできないな。俺は、永琳ただ一人。青蛾を好きと想うことは多分ないだろう。

ははは、ありえんありえん。俺が永琳以外の女性を好くなど、砂漠に落ちた米粒を見つけることと同じぐらい難しい。

 

神奈子「ま、お前の考えは理解できなくもないがな。珍しい奴だよ。全く……」

零「世間がおかしいのさ」

 

絶対、将来的には俺の考えが当たり前になるはずだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椿「出来ました!!どうぞ召し上がって下さい!!」

零「やべぇ、めっちゃ旨そう。いただきます」

美鈴「いただきます」

 

煮物、緑野菜の素揚げ、サンマの塩焼き、お吸い物、玄米と、庶民的なものなのに、見た目が高級な食べ物並みに旨そう。

煮物の人参を口の中に入れてよく噛む。すると、ほのかに温かく、中まで味が染み込んでいて、柔らかすぎずに味も食感も美味しい。

素揚げもパリパリして、塩はつけておらず素材そのものの旨味が伝わる。しかも、その伝わり方が衝撃的だ。塩もなにも付けてないのに、旨味が溢れるように分かる。どう調理したらこうなる?

他の献立も非の打ち所もない旨さだった。

永琳と一位二位を争うぞ。

 

義経「う、うまい!!」

零「ご馳走さま」

青蛾「はやッ!?」

零「旨かった、マジで旨かった」

椿「えへへ、ありがとうございます!」

 

諏訪子が自慢してきたのも納得がいった。

この成長具合は、育ててきた諏訪子からしたら、この上なく嬉しいのだろう。

 

零「こんなにもうまくなったなら、『あれ』を」

諏訪子「ッ!!」

神奈子「ッ!!」

二人「「本当(か)ッ!?」」

 

マジで好きだな。コイツら。

 

椿「あの、『あれ』とは?」

零「まぁまぁ、ちょっと台所に来てみな。あ、諏訪子、鰻ある?」

諏訪子「あるよ!」

 

椿と一緒に俺が開発した『鰻の蒲焼き』を教えることにした。

が、ここで椿が魚を捌くのが苦手と言うことが分かり、完成には少し時間がかかった。

時間がかかったことに、椿は酷く落ち込んでいた。

 

椿「うぅ……」

零「別に椿が下手な訳じゃない。ちょっとずつ、出来るようになろうぜ?」

椿「はい……」

零「さ、食いな。食ったら気分も上がるもんさ」

 

そう言われ、パクッと食べた椿。瞬間、驚いたようで、暗い気分どころではない。

すぐに笑顔になり、嬉しそうにまた一口、また一口と、箸は止まらずどんどん進む。

 

椿「零さま!!これ美味しいです!!」

零「だろ?」

 

こんな一時がずっと続けばいいのにな。

そんな遠い未来になりそうな夢を見ても意味はない、分かってはいるが……

ご馳走さまでしたと、笑顔な椿の頭を撫で、無理に笑顔になった。




零は砂漠に落ちた米粒を見つけることが出来たんですね。おめでとう!!(全力の皮肉)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。