東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新   作:薬売り

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サブタイトルでちょっとネタバレ。


椿の香り
椿の香り I 『九相図』


腐敗した臭い。

しかし、この臭いにも慣れた。私は今、腐っている。

犬や烏が私を食い散らかす。

やがて骨に成った私は、やっと見つけられ焼かれた。

私は……

アイツらを許さない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「懐かしいな」

青蛾「雰囲気が明るいわね……なにかあったのかしら?」

零「祭りはこの時期じゃあないしな」

 

蝦夷から出て、今は諏訪にいる。

本来、10年に1回は帰宅するのだが、何かと昨年は忙しくてアイツらに顔を合わせていなかった。

 

そして、久方ぶりに帰った第2の故郷は、異様に明るくて、一体何があったのか。

 

零「なあ、そこの」

 

適当に、老いが来ている商人に問うてみる。

 

商人「おお、神田様。お帰りなさいませ。どうなされた?」

零「妙に明るくてな。何だ?今年は豊作か?」

商人「いえいえ、そうではないのです」

 

はて、では何があってこう盛り上がっているのか。

 

零「では何故?」

商人「4代前の椿様が若くしてお亡くなりになられたでしょう?」

零「……あぁ」

 

『東風谷椿』、諏訪大社の巫女の4代前であり、僅か15歳で亡くなった少女。

死に方が残酷で、とても思い出したくはなかった。

 

零「椿が、どうした?」

商人「なんと、生き返ったのです!!」

零「ッ!?」

 

彼女は焼かれて灰になった。しかも、灰になったのだって、極僅か。骨しか残ってない様なものだ。

生き返ったにしろ、どうやって?

 

商人「まぁ、神社に行けば分かりますよ」

零「……分かった、ありがとう」

商人「いえいえ」

 

俺は振り返った。

顔を青くした仲間達。紫と藍は違うが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

零「おーい、ただいま」

 

戸を開けながら言う。

 

諏訪子「えええええ!?か、帰ってくるなら言ってよおおおッ!!」

零「毎回うるせぇ」

 

最早、恒例行事へと化した。

いつになったら彼女は慣れるのだろうか。正直めんどい。

 

神奈子「よう、久しぶり」

零「おう」

芳香「おーう」

 

ある程度挨拶らしい挨拶を済ませると、奥から犇々と誰かが来る。

いや、わかってはいる、先程聞いたから。しかし、果たしてどのようにしてこの世へ戻ったのかが、気になって仕方がない。

 

椿「あら、神田様。お帰りなさいませ」

零「あ、あぁ…」

 

冷や汗がたらりと頬を伝わり、とてもではないが、喜べない。

彼女は椿ではない。

しかし、彼女は椿である。

 

分からない。椿の反応があれば、違う反応も混ざっている。

違和感。一体どういうことなのか。

 

椿「まぁ、新しい旅のお供ですわね」

紫「初めまして、八雲紫です」

藍「同じく八雲藍です」

諏訪子「また女性……」

 

初めましてと笑顔を向ける椿。

やはり、おかしい。妙に彼女は落ち着いている。いきなりのお客なのに。

諏訪子ではないが、少なからず驚く筈だ。

 

椿「あら大変!!そう言えば、倉のお酒が少ないわ。すみません、少々お待ちください。唯今買いに行きますので」

青蛾「気を付けるのよ」

 

お気遣いありがとうございます。そう言って、彼女は出た。

そして、沈黙。

俺はその中で声を発した。

 

零「なぁ、椿って…」

諏訪子「死んだよ」

零「……そうだよな。じゃあ、彼女は?」

諏訪子「………」

 

分かるわけがない。

 

零「……本当に、倉に酒はないのか?」

諏訪子「え?……いや、たぶんあるはず」

 

では、何故彼女は買いに行ったのか。

彼女の言葉は、あまり信じてあげれない。

 

零「『視界ジャック』」

 

眼を閉じる。彼女は今、何を見ている?

 

『意外に早くいらっしゃったわ。どうしましょう?どう料理しましょう?』

 

野菜が並んでいる店を見ている。

……宴の料理に困っているのか?分からないが、そうなのだろう。

とすると、特におかしな所もない。

 

俺の早とちりか……?

 

零「ふぅ…」

諏訪子「その、どう?」

零「いや、料理がどうとかしか言ってなかった」

諏訪子「へ?」

 

拍子抜けた、と言うような声が出た。

だが、それを笑おうとは思わない。

 

神奈子「しかし、雰囲気が全く違う。とても椿とは…」

青蛾「確かに、椿はもっと明るい。目にも光がないし」

 

分からない。とても、理解出来ることではなかった。

 

紫「ねぇ、なんでそんな考え込んでるの?聖人が生き返るなんて、ない話じゃあないでしょ?」

 

紫が言いたいことはよく分かる。

が、無理なんだ、絶対に。何故なら……

 

零「彼女には『生き返る為の身体』がない」

紫「え?」

 

彼女の身体は、ほとんどが土としてある。

あんな残酷なことを、言っても良いだろうか?俺は悩むばかりである。


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