東方化物脳 ~100%の脳が幻想入り~ 不定期更新 作:薬売り
それでは、どうぞ。
零「…………」
もう彼女は動かない。
なんなんだ、この気持ちは。心臓を抉り取られたかのようだ。
?「全ては汝の所為なのだ」
零「……なに?」
初めて、敵が喋った。その声は、吐息混じりの声だった。
こいつが、青蛾を殺した。
アン「我が名は『アンダイン・ナルキッス』。汝を黄泉へと引きずりに来た」
零「また…か…」
アン「汝を想うあの女人も連れる事にした。よって、辛き別れなし」
零「………」
俺の為に死んだ?奴はそう言うことを言いたいのか。
アン「次は汝が死ぬ。然らずんば、女人の死は無駄であるぞ」
零「………」
無駄……
冷静に考えろ。青蛾の死は全てを失ったかのように、辛い。代わりに俺が死ねば良いとも思えてくる。が、しかし、俺は死なない、この目の前の屑を殺すまでは。
冷静さを……俺には今、冷静さが大切だ。
考察しよう。まず、この状況だ。
最初に、美鈴達が漢方を作っている。青蛾曰く、俺が急に倒れたから疲労を回復する漢方を作っている。
これが、状況その一。
次に、決して動かないと思われていた、奴が急に動いた。何か条件があってか?せざる終えなかった?それとも……?
これが、状況その二。
次に、青蛾を刺したアレ。アレはなんだ?俺は殺気は一流だが攻撃出来る力がないと判断した。自惚れじゃあないが、俺がそんな安易に判断は間違えない。
これが、状況その三。
最後に、この感情。それは青蛾が死んだから。彼女のことも好きなのかもしれない、そう気付いた瞬間に死ぬ。それが一番の要因。
これが、状況その四。
アン「何をしている?汝は生きると言うのか?あぁ、我を殺してから自害するか?構わぬ、殺せ。元より汝の死を望んでいたのだからな」
零「………」
追加。
彼は生前、目立ちたいと思っていた。しかし、今は自分を殺していいと言っている。まだ、彼は目立ったとは言えない。なら何故?
これが、状況その五。
零「そうか……そうだな」
アン「決心がついたか」
零「お前を殺す。それは絶対だ」
アン「あぁ、良いだろう」
零「言ったな?殺していいと」
零は、ニヤリと笑った。
零「なら……『現実世界のお前を殺す』」
アン「なッ!?」
零「フッ、全て分かったぜ。全てだ」
零はアンダインの周辺を廻りながら説明する。
状況から掴める真実、そして奴の能力を。
零「まず、俺が何故急に倒れたか……それは、『俺の妄想の世界に入ったから』だ。いや、これじゃあ語弊がある。俺の精神世界にお前が干渉して『俺の意識を引きずりこんだ』んだろ?」
アン「………」
アンダインは苦虫を噛んだような顔をしている。
零「だから、俺は青蛾と『妄想』みたいにイチャイチャしてたわけだ」
アン「何故……」
零「何故、気付いたか?美鈴達がこの場にいない理由がおかしい。漢方を作っていない?滅多に倒れない俺が倒れたなら、まず、原因であろうこの場所から遠避けようと、船に運ぶはずだ」
アンダインは黙って俯いている。
零「いつ、俺の精神世界に干渉してきたか。それは、この島に入った瞬間だろ?」
アン「ッ!!」
零「ビンゴ。あの記憶はやはりお前の、生前の記憶。干渉したことによりお前の記憶が見えてしまった。お前、目立ちたいらしいな、そんなやつが、殺しても構わないなんて、言わないな。妄想の中で殺したって、意味ねえもんな」
アン「殺さないでくれ」
ここに来て命乞いか。だが……
零「いいぜ?ただし、『あの人』とか言う奴の詳細を聞こうか?」
アン「分かった……あの人は………………」
零「ん?どうした?」
いきなり、アンダインが苦しみ始めた。そして……
零「消えた?」
跡形もなく、なにもなくなった。
目覚めると、見慣れた顔一つと船の天井。
帰ってきたらしい。
青蛾「零っ!?よかった……」
零「みんなは?」
青蛾「船に妖怪が来ないか見張ってるわ、紫と藍は貴方が倒れた原因を調べる為に核の部分を調査してる」
零「そうか……」
どうやら、現実らしい。
零「なあ、青蛾」
青蛾「何?」
零「ありがとう」
アンダインは台詞の前の名前の所に『アン』と表示します。